1 / 11
第1章 異世界での目覚め
1 少し未来のお話
しおりを挟む
曇天の中、轟音が響く。まるで世界の終わりを告げる角笛の音のように。
「はぁっ……! はぁっ……!」
廃墟の中、1人の少年が力の限り走っていた。
頭から血を流し、その血に濡れた片目が開くことはなく、けれども、もう一つの目で前を見つめて真っ直ぐに。
彼はこの先に行きたかった、行かなければならなかった。
「……っ!」
だが、彼の行動を妨害する存在がそこにいた。
「くそっ……! 時間が無いってのに……!」
少年の目の前に音もなく2体の巨大な生物が顕れた。
それは体躯の至る所が赤く発光する巨大生物。
否、それらは生物と言い切ることが難しい存在であった。どのような生態系にも属していないであろう異形であり、無機物のような特性も備えていたからだ。
けれども、それらが少年に向ける殺意は本物で。
だから、それらは生物というよりも怪物と語るのが相応しい存在であった。
そんな怪物達は彼が前に進む事を阻止しようとしていた。
その命を奪うことで。
「……!」
怪物の1体から放たれた数多の黒い杭が少年に降り注ぐ。
そこに一切の容赦は無く、少年がいた場所には爆煙のような土煙が舞った。
逃げ場のない攻撃。普通の人間であれば、飛んできた杭の幾つかに身体を貫かれ、即死しているであろう。
「……!」
だが、少年は傷を負うことなく、土煙の中から勢いよく飛び出してきた。
開いている片目を青く輝かせながら。
「……っ!」
そして、そのまま再び前へ進もうとした少年だったが、少年が無事であることを認識した怪物達が口のような部分を大きく開き、そこから赤い光線が放たれた。
凄まじい熱量を持ったその赤い光線は少年を一瞬で呑み込み、そこには何も残らない筈だった。
少なくとも怪物達はそう認識してた。
だが。
「……はぁっ……! はぁっ……!」
そこには白く輝く刀を構えた少年が塵になることなく残っていた。
「……っ」
しかし今度は無傷とはいかず少年の体がグラリと揺れ、体勢を崩しそうになると。
「ツヴァイ……!」
「ツヴァイさん……! 大丈夫ですか……!?」
何処からか声が聞こえた。
それは空から聞こえる声だった。
白き槍を構えた銀髪の少女と、白い剣を持つ赤髪の少女が空を駆けていた。
2人の背に翼はなかったが、その姿は戦乙女のように凜々しく、美しかった。
「────俺のことは気にするな! それよりも2人だけでも先に!」
そんな2人の声を聞き、何とか倒れることなく踏ん張った少年は空を見上げ、2人に先に行くようにと声を上げたが……。
「そうは言っても……!」
「こちらも中々……!」
2人は大量の翼竜のようなモンスターを相手に苦戦しており、彼女たちもまた先に進めていなかった。
「……」
……2人とも技の精彩を欠いている。やっぱり、普段の半分も力が出せていないか。
だが、それも仕方ないのだ。連戦に次ぐ連戦で全員が疲弊している。こうやって生きて戦っていられること自体が奇跡に等しいのだ。
……だけど……!
その奇跡を越えるような奇跡を起こさなければ、この先に進めない。誰も救えない。そう思って少年が行く手を阻む2体の巨大な怪物を睨んだ、その時。
遙か遠くで、何かが、小さく光った。
「……! 第二射が来る……!」
その何かがどういうモノなのかを知っている少年が声の限りに叫んだ。
そして、その少年の叫びを聞いた2人の少女は即座にモンスターとの戦闘を切り上げ、それぞれの武器を掲げた。
「────雷よ、切り裂け。地上の綺羅星を守るために……!」
槍の少女が望みを唄い。
「────白き光よ、我がもとに。数多の願いを奇跡で照らす、そのために……!」
剣の少女が祈りを謳った。
「……っ……!」
……間に合うか……!?
そして、少年が白く輝く刀を大地に深々と突き刺した。
その瞬間。
世界が光に包まれた。
これは、異界の地で1人目覚めるその者が辿り着く、1つの可能性。
彼がこの未来に辿り着くのか、別の未来に向かって進んで行くのか、それはまだ誰にもわからない。
「はぁっ……! はぁっ……!」
廃墟の中、1人の少年が力の限り走っていた。
頭から血を流し、その血に濡れた片目が開くことはなく、けれども、もう一つの目で前を見つめて真っ直ぐに。
彼はこの先に行きたかった、行かなければならなかった。
「……っ!」
だが、彼の行動を妨害する存在がそこにいた。
「くそっ……! 時間が無いってのに……!」
少年の目の前に音もなく2体の巨大な生物が顕れた。
それは体躯の至る所が赤く発光する巨大生物。
否、それらは生物と言い切ることが難しい存在であった。どのような生態系にも属していないであろう異形であり、無機物のような特性も備えていたからだ。
けれども、それらが少年に向ける殺意は本物で。
だから、それらは生物というよりも怪物と語るのが相応しい存在であった。
そんな怪物達は彼が前に進む事を阻止しようとしていた。
その命を奪うことで。
「……!」
怪物の1体から放たれた数多の黒い杭が少年に降り注ぐ。
そこに一切の容赦は無く、少年がいた場所には爆煙のような土煙が舞った。
逃げ場のない攻撃。普通の人間であれば、飛んできた杭の幾つかに身体を貫かれ、即死しているであろう。
「……!」
だが、少年は傷を負うことなく、土煙の中から勢いよく飛び出してきた。
開いている片目を青く輝かせながら。
「……っ!」
そして、そのまま再び前へ進もうとした少年だったが、少年が無事であることを認識した怪物達が口のような部分を大きく開き、そこから赤い光線が放たれた。
凄まじい熱量を持ったその赤い光線は少年を一瞬で呑み込み、そこには何も残らない筈だった。
少なくとも怪物達はそう認識してた。
だが。
「……はぁっ……! はぁっ……!」
そこには白く輝く刀を構えた少年が塵になることなく残っていた。
「……っ」
しかし今度は無傷とはいかず少年の体がグラリと揺れ、体勢を崩しそうになると。
「ツヴァイ……!」
「ツヴァイさん……! 大丈夫ですか……!?」
何処からか声が聞こえた。
それは空から聞こえる声だった。
白き槍を構えた銀髪の少女と、白い剣を持つ赤髪の少女が空を駆けていた。
2人の背に翼はなかったが、その姿は戦乙女のように凜々しく、美しかった。
「────俺のことは気にするな! それよりも2人だけでも先に!」
そんな2人の声を聞き、何とか倒れることなく踏ん張った少年は空を見上げ、2人に先に行くようにと声を上げたが……。
「そうは言っても……!」
「こちらも中々……!」
2人は大量の翼竜のようなモンスターを相手に苦戦しており、彼女たちもまた先に進めていなかった。
「……」
……2人とも技の精彩を欠いている。やっぱり、普段の半分も力が出せていないか。
だが、それも仕方ないのだ。連戦に次ぐ連戦で全員が疲弊している。こうやって生きて戦っていられること自体が奇跡に等しいのだ。
……だけど……!
その奇跡を越えるような奇跡を起こさなければ、この先に進めない。誰も救えない。そう思って少年が行く手を阻む2体の巨大な怪物を睨んだ、その時。
遙か遠くで、何かが、小さく光った。
「……! 第二射が来る……!」
その何かがどういうモノなのかを知っている少年が声の限りに叫んだ。
そして、その少年の叫びを聞いた2人の少女は即座にモンスターとの戦闘を切り上げ、それぞれの武器を掲げた。
「────雷よ、切り裂け。地上の綺羅星を守るために……!」
槍の少女が望みを唄い。
「────白き光よ、我がもとに。数多の願いを奇跡で照らす、そのために……!」
剣の少女が祈りを謳った。
「……っ……!」
……間に合うか……!?
そして、少年が白く輝く刀を大地に深々と突き刺した。
その瞬間。
世界が光に包まれた。
これは、異界の地で1人目覚めるその者が辿り着く、1つの可能性。
彼がこの未来に辿り着くのか、別の未来に向かって進んで行くのか、それはまだ誰にもわからない。
0
あなたにおすすめの小説
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる
けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ
俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる
だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる