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第1章 異世界での目覚め
3 体は17歳、頭脳は31歳
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ガラス玉のような透明な砂利。
鋼のように鈍く輝く石畳。
金細工が特徴的な幾つかの白い建造物。
神社の境内のような、けれども、何かが違う景色が眼前に広がり、少し遠くに目を遣れば杉やブナによく似た木々がそびえ立っていた。
そして、更にその奥は深い森のようになっており、そこには────
「……は?」
天まで続くような巨大な木が生えていた。
その巨木の周囲には見たこともない植物が生い茂り、それらの植物は瞬く間に成長し、花を咲かせ、種を飛ばし、枯れていった。
そして、綿毛のような、雪のようなよくわからない物体が大量にキラキラと光りながら宙に浮いている。
それが扉を開けた先にあった光景。椿井が目にしたものだった。
「……」
そんな景色を見て、しばらくの間、呆然としていた椿井だったが。
「……異世界転移」
ポツリとそんな言葉を口にした。
異世界転移。それは学生の頃からネット小説を読んでいる椿井にとっては慣れ親しんだモノだった。
「……」
だが、椿井にとって異世界物はあくまでフィクション。娯楽として楽しむものであって転生や転移は現実に起こりうる現象ではないと思っていたため。
「……ここは、長野の山奥とかか?」
31歳の良識ある社会人の椿井は、本当にギリギリのところではあったが自分が異世界に降り立ったのではなく国内の山奥にいるのではないかと推測した。
「えーっと、なんて言ったっけな……。たしか、奥社だったか?」
そしてここを長野だと仮定した椿井は定職に就く前、20代前半の頃に工事のバイトで一週間ほど長野に滞在した際に知った観光地に似てるような気がすると考え。
「……目が覚めたら長野か。ネット番組の企画じゃないんだし、普通に意味がわからないな」
椿井は現状を、自分が意識を失っている間に何者かに長野に連れてこられた。という風に捉えて思考を進めていった。
「ここが俺の思ってる通りの場所なら、たぶん2、30㎞も歩けば善光寺があるはず。あの辺りなら短期バイトをしてた工事現場に近かったから多少は土地勘もあるし向かってる途中で人に会えたら状況を説明して助けて貰うのも手だな」
そして、30㎞の道を歩くことを躊躇することがないくらいには体力に自信のある椿井は思い立ったその勢いのまま外に出ようとしたが。
「……」
先ほどまで真っ暗だった室内が扉を開けたことで日の光に照らされてよく見えるようになっていることに気づき。
「少し中を調べてから出るか」
外に出る前に今いる部屋の中に自分の持ち物や使える道具があるかどうかを調べるために椿井は出口に背を向けた。
「……」
そして部屋の中を調べようと歩き始めた椿井が最初に視線を向けたのは扉の近くにあった姿見だった。
ただ、鏡を今の椿井は全く必要としておらず、椿井は鏡に映った自分の姿を軽く確認した後、そのまま鏡の前を素通りしようとしたのだが……。
「……は?」
その体が鏡の前でピタリと止まった。
「…………」
そして、まるで幽霊でも見たかのように冷や汗を流しながら椿井は再び鏡に視線を向け。
「────」
絶句した。
「……なんだ、これ」
そこに映っているのは紛れもない自分自身、椿井翼だった。それは絶対に間違いのないことだと椿井は断言できた。
「……俺は椿井翼。31歳、だ」
そう、それは間違っていない。椿井翼という人間は31歳だ。椿井の記憶の中にはつい最近、31歳の誕生日を迎えた記憶もある。
だが、その正確な情報と目に映る情報には相違があった。
若い頃に日光を浴びすぎたせいか31歳の椿井の肌には所々にシミができていて綺麗な肌であるとは言えなかった。
しかし、鏡に映る椿井の肌は健康的でありながらシミ一つない綺麗な肌で、剃っても剃っても生えてくるヒゲは存在すらしていなかった。
その他にも髪に少しだけ混じり始めた白髪はなく、20代の頃に筋肉を付けすぎて固太りのようになっていた体が適度な筋肉量になり、手足がスラリとしていた。
そして、いつの頃からか童顔だね、と誰にも言われなくなっていた顔が童顔に戻っており。
というか。
「これ、童顔じゃなくて、若いんだよ……!! どう見ても高校生の時の顔だよ……!! 体だよ……!!」
絶叫した。
椿井は絶叫した。
見知らぬ部屋で目覚めても。不安に押しつぶされそうになっても。ここ異世界かも? と思っても。良識ある31歳成人男性の椿井翼は絶叫しなかったが、流石にこれは絶叫した。
「何で俺、若返ってるんだ……!?」
椿井翼は若返った。その理由を椿井はこれから懸命に探し始めるが、彼が真実に辿り着くのは、だいぶ先の話となる。
鋼のように鈍く輝く石畳。
金細工が特徴的な幾つかの白い建造物。
神社の境内のような、けれども、何かが違う景色が眼前に広がり、少し遠くに目を遣れば杉やブナによく似た木々がそびえ立っていた。
そして、更にその奥は深い森のようになっており、そこには────
「……は?」
天まで続くような巨大な木が生えていた。
その巨木の周囲には見たこともない植物が生い茂り、それらの植物は瞬く間に成長し、花を咲かせ、種を飛ばし、枯れていった。
そして、綿毛のような、雪のようなよくわからない物体が大量にキラキラと光りながら宙に浮いている。
それが扉を開けた先にあった光景。椿井が目にしたものだった。
「……」
そんな景色を見て、しばらくの間、呆然としていた椿井だったが。
「……異世界転移」
ポツリとそんな言葉を口にした。
異世界転移。それは学生の頃からネット小説を読んでいる椿井にとっては慣れ親しんだモノだった。
「……」
だが、椿井にとって異世界物はあくまでフィクション。娯楽として楽しむものであって転生や転移は現実に起こりうる現象ではないと思っていたため。
「……ここは、長野の山奥とかか?」
31歳の良識ある社会人の椿井は、本当にギリギリのところではあったが自分が異世界に降り立ったのではなく国内の山奥にいるのではないかと推測した。
「えーっと、なんて言ったっけな……。たしか、奥社だったか?」
そしてここを長野だと仮定した椿井は定職に就く前、20代前半の頃に工事のバイトで一週間ほど長野に滞在した際に知った観光地に似てるような気がすると考え。
「……目が覚めたら長野か。ネット番組の企画じゃないんだし、普通に意味がわからないな」
椿井は現状を、自分が意識を失っている間に何者かに長野に連れてこられた。という風に捉えて思考を進めていった。
「ここが俺の思ってる通りの場所なら、たぶん2、30㎞も歩けば善光寺があるはず。あの辺りなら短期バイトをしてた工事現場に近かったから多少は土地勘もあるし向かってる途中で人に会えたら状況を説明して助けて貰うのも手だな」
そして、30㎞の道を歩くことを躊躇することがないくらいには体力に自信のある椿井は思い立ったその勢いのまま外に出ようとしたが。
「……」
先ほどまで真っ暗だった室内が扉を開けたことで日の光に照らされてよく見えるようになっていることに気づき。
「少し中を調べてから出るか」
外に出る前に今いる部屋の中に自分の持ち物や使える道具があるかどうかを調べるために椿井は出口に背を向けた。
「……」
そして部屋の中を調べようと歩き始めた椿井が最初に視線を向けたのは扉の近くにあった姿見だった。
ただ、鏡を今の椿井は全く必要としておらず、椿井は鏡に映った自分の姿を軽く確認した後、そのまま鏡の前を素通りしようとしたのだが……。
「……は?」
その体が鏡の前でピタリと止まった。
「…………」
そして、まるで幽霊でも見たかのように冷や汗を流しながら椿井は再び鏡に視線を向け。
「────」
絶句した。
「……なんだ、これ」
そこに映っているのは紛れもない自分自身、椿井翼だった。それは絶対に間違いのないことだと椿井は断言できた。
「……俺は椿井翼。31歳、だ」
そう、それは間違っていない。椿井翼という人間は31歳だ。椿井の記憶の中にはつい最近、31歳の誕生日を迎えた記憶もある。
だが、その正確な情報と目に映る情報には相違があった。
若い頃に日光を浴びすぎたせいか31歳の椿井の肌には所々にシミができていて綺麗な肌であるとは言えなかった。
しかし、鏡に映る椿井の肌は健康的でありながらシミ一つない綺麗な肌で、剃っても剃っても生えてくるヒゲは存在すらしていなかった。
その他にも髪に少しだけ混じり始めた白髪はなく、20代の頃に筋肉を付けすぎて固太りのようになっていた体が適度な筋肉量になり、手足がスラリとしていた。
そして、いつの頃からか童顔だね、と誰にも言われなくなっていた顔が童顔に戻っており。
というか。
「これ、童顔じゃなくて、若いんだよ……!! どう見ても高校生の時の顔だよ……!! 体だよ……!!」
絶叫した。
椿井は絶叫した。
見知らぬ部屋で目覚めても。不安に押しつぶされそうになっても。ここ異世界かも? と思っても。良識ある31歳成人男性の椿井翼は絶叫しなかったが、流石にこれは絶叫した。
「何で俺、若返ってるんだ……!?」
椿井翼は若返った。その理由を椿井はこれから懸命に探し始めるが、彼が真実に辿り着くのは、だいぶ先の話となる。
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