唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理

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第3章 カイカの森の白狐

22 シロキツネ様の謝罪

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「……俺に悪いことをした……?」
 この世界の神様みたいな存在であるシロキツネ様に謝罪されたツヴァイは疑問の声を漏らした。
 ……俺、シロキツネ様には何もされてないよな?
 そして、少なくともシロキツネ様本人から危害を加えられた記憶のないツヴァイは、シロキツネ様がこの世界に勇者をぼうとしたら手違いで俺を喚んでしまったとかそういう事だろうかとネット小説的なことを想像したが。
「うん。キミを試すためとはいえ直接助けなかったのは流石に悪かったなー、イジワルが過ぎたなーってキミが街に行ってから悶々としちゃって、単純に謝るより、パーッともてなした方がうちもスッキリするから料理とか作ったんだよ」
「……」
 そのシロキツネ様の発言的に自分が考えていたような理由ではなさそうだったので、ツヴァイはもう一度考え直すことにした。
 ……今の話を聞く限り、俺が街に行く前に何かあったってことだよな。……試すためとはいえ助けなかった。……ってことは、間接的には助けてくれたってことだよな。
「……あ。……もしかして、この刀はシロキツネ様が……?」
 そしてツヴァイは偶然とは思えないタイミングで木の上から草むらの中に落ちてきたモノの事を思い出し、畳の上に置いておいた日本刀を手に持ってシロキツネ様に見せると、シロキツネ様は小さく頷いた。
「そうだね。あの状況で武器を手に入れたキミがどう動くのかを見たくて、うちがそれを草むらに落としたの。あ、それは返さなくて良いからね。キミが護身用に持ってて。モンスター相手には結構使えるだろうし」
「あの時、木の上にいたのか……って、ちょっと待ってくれ。俺を試したとか言ってたよな。もしかして、あのゴブリン達はシロキツネ様が用意したモンスターなのか……?」
「あー……それは違うんだけど普段ならすぐに駆除するところを、キミを試すために使えると思って放置してたの。……その結果、街の子を巻き込んじゃった。万一のことが無いように仕込みはしてたから、あのモンスター達がキミやあの子を傷つけることはできなかっただろうけど、あの子にも悪いことをしちゃったのは事実だね」
「……」
 近いうちにあの子も神待遇でもてなそうって思ってるんだよね。と呟くシロキツネ様の表情から罪悪感を読み取ったツヴァイは心の中で安堵の息を零した。
 もし、シロキツネ様がゴブリン達に指示を出し、リアを苦しませていたのなら、人の命を軽く見る悪神の類いとして認識しなければならなかったがシロキツネ様はそういう存在ではなさそうだ。というようなことをツヴァイが考えていると。 
「ほんと、今日のうちはダメダメだったなー……。感情の動きが全体的にひどかった。特にあんなことで腹を立てたのがねー……。あの時のうち、まるで自分の欲しいものが手に入らなかった時の子供みたいだった。いくらキミがだったからといっても、あれはよくなかった」
 反省しないとね。と、シロキツネ様が自省の言葉を呟いた。
 ……俺が軟弱?
 そして、その発言を聞く限りシロキツネ様が自分に思うところがあるようだったので、ツヴァイはその理由を尋ねるために口を開いた。
「えっと、それは、すまない……? 確かに俺はこの世界で皆が使える魔法を使えないようだし軟弱と言われても仕方ないかもしれないが……シロキツネ様は俺が何か凄い力を持ってると思ってたのか?」
「うん? ああ、違うよ、違う。別にキミが魔法を使えないことや特殊な力を持っていなかったことを残念に思ったわけじゃないよ。ただ、心の在り方が軟弱かもって思っちゃったの」
「……心の在り方」
 そうだよ、と言って頷いたシロキツネ様は座布団の上でモゾモゾと動いて体勢を変えてから、ツヴァイを軟弱だと言った理由を語り始めた。
「うちには遠い昔に課せられた使命が幾つかあるんだけど、その中の1つに開かずの館が開くその時まで守護し続けろ。というのがあってその使命を果たすためにうちは長い時をこの森で過ごしてきた。そしてある日、ついに館が開く予兆をうちは感じ取った。その瞬間、うちは本当にワクワクしたんだよ。うちが守り続けてきた存在はどんなヤツなのか、ようやくこの目でその姿が見られる。ってね」
「…………」
 ……これは、おそらく……。
 そしてまだシロキツネ様の話の途中ではあったが、自分のことをじっと見つめながら愚痴るように語るシロキツネ様の様子を見て、話の続きを大体推測できたツヴァイだったが。
「……」
 下手に話を止めることはせずにシロキツネ様にはイライラを全部吐き出して貰おうと考え黙って聞き続けた。
「それでやしろからちょっと離れた木の上でその時を待っていたんだけど、モンスターが森に入ってきたことを感知したから、さっき言った仕込みをするために一度その場を離れたの。で、戻ってきたら────1人の子供が開かずの館の中から顔を出していたんだよね。それでうちは、この子がいったい何を思い、この世界で何をしようとするのかなって興奮しながら見てたら────その子、急に大声で助けてくれって叫んだの。しかも人じゃなくて、神様や意味のわからない存在を頼ろうとしてるんだもの。もうびっくりしちゃって木から落ちそうになっちゃった」
『えーと、神様、女神様、謎の存在、後は親切なナビロボとか誰かいませんかー。ちょっとだけで良いんで説明をお願いしたいんですがー』
「……」
 心当たりしかないその他力本願全開の叫びを思い出しながらツヴァイは一応、念のためにとシロキツネ様に向かって声を出した。
「……確認の必要はたぶん無いけど、一応確認させて欲しい。シロキツネ様が守ってきた開かずの館の中にいた子供って……俺のことだよな?」
「うん、そうだね。何だったのあの他力本願なヘルプは。社や森を調べ尽くしても成果がなくて……みたいな状況ならまだわかるけど、初手でアレは百年の恋も冷めるレベルだよ?」
「……返す言葉もない」
 異世界に来たばかりだったし若返ったりと意味不明な現象を前に気が動転していたのは間違いなかったが、冷静に考えるとあれは流石に少し格好悪かったな。と、ツヴァイが顔を伏せて反省しているとジト目になっていたシロキツネ様の目がハッと見開かれた。
「ってまた責めちゃってた……! ごめん、ごめんね。これ、本当にキミは悪くないんだよ。うちが勝手に期待して、勝手にガッカリしただけのことだから。……んー、まだ尾を引いてるのかー。ちょっとよくないなー、うち」
 久しぶりに感情が動いたせいか自分をうまくコントロールできてないかも。と呟いたシロキツネ様は立ち上がって座布団の周りをグルグル回ったり、耳の辺りを後ろ脚で掻いたりして、少しスッキリした顔になってから、再び座布団の上に座った。
「よし、もう大丈夫。気持ちも今度こそ完全に落ち着いたから、何か聞きたいことがあったら何でも聞いて。うちの愚痴に付き合ってくれたお礼ってことで、うちが話せることなら何でも話すから」
「……聞きたいこと?」
 そして、シロキツネ様は。
「そう。開かずの館から出たばかりのキミには、わからないことが色々あるんじゃない? このシロキツネ様が何でも答えてあげるよ。────うちがわかる範囲のことならね」
 この世界のことも、自分の状態も、わからないことだらけのツヴァイに救いの手を差し伸べた。
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