唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~

専攻有理

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第3章 カイカの森の白狐

23 なぜなにシロキツネ様

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「それは……ありがたい話だ」
 愚痴を聞いてくれたお礼にわかる範囲のことなら何でも質問に答えてあげる。とシロキツネ様に言われたツヴァイは、シロキツネ様の気が変わらないうちに早く質問をしようと考え、すぐに口を開いた。
「それじゃあ遠慮なく質問させてもらう。シロキツネ様、俺は車にねられて気がついたらこの世界にいたんだけど、なぜそうなったのか、その理由を教えて欲しい」
「わかりません」
 そして、初手でつまずいた。
「……わからないのか?」
「うん。うちは開かずの館の守護を命じられただけで、キミが中にいた理由なんて何も知らないよ」
「そうなのか……。あ、じゃあ、シロキツネ様に開かずの館を守るように言ったのは誰なんだ? そいつから俺のことを聞いてたりは?」
「うちに館の守護を命じたのは、うちの育ての親みたいな存在だね。ただ、あの人はとっくの昔にこの世を去ってるし、キミのことは何も教えてくれなかった。もしキミがどういう子供かってことを聞いてたなら、こんなに一喜一憂してないよ」
「……それもそうか。後、子供って言われて思い出したからついでに聞きたいんだけど、俺、本当は31歳のおっさんなのにこの世界に来た時から子供の頃の身体に戻っているんだけど、これもシロキツネ様は……」
「ノータッチ。人間を若返らすとかうちのスペシャルな力でも無理です。まあ、17歳に戻れてラッキーぐらいに思っておくといいんじゃないかな」
「……」
 そんな気楽に考えていいことなのかこれ、と自分が若返ったことをあっさり流されたツヴァイは釈然としない気持ちを抱いたが。
 ……ん?
 シロキツネ様の発言の中に自分の知らない情報があったことに気づき、ツヴァイは再び口を開いた。
「17歳……。シロキツネ様は俺の身体の正確な年齢がわかるのか?」
「うん、そのぐらいのことならわかるよー。スペシャルな目を持ってますから」
「凄いな……。もしかしてそのスペシャルな目なら俺が転生者か転移者のどっちかぐらいはわかったりするんだろうか?」
「……え、なに? 転生者か転移者? うちにはその言葉の意味がわからないんだけど」
「えっと、なんて言えばいいかな。俺は一度死んで生まれ変わったのか、何らかの力によってこの別世界に来ただけなのか、それが知りたいんだ」
「あー……そういうこと。うん、言葉の意味は何となくわかったけど、それを知ってどうするの? どっちにしてもキミが此処にいる事実は変わらないよね?」
「まあ、それはそうなんだけどさ。ただ、転移ならもしかしたら元の世界に戻れる可能性があるだろ? 死んでないんだから。けど、転生だったら……」
「……一度死んでいるんだから、元の生活には戻れない、と」
「……ああ。この先のことを考えるためにも、可能なら知っておきたいんだ」
 どうだろうか? とツヴァイが自分の状態を把握したい理由を語るとシロキツネ様は姿勢を直し。
「うん、わかった。そういうことなら、────視てあげるよ」
 そう言って宝石と同じ輝きを放つ水色の瞳をより一層輝かせ、ツヴァイをじっと見つめた。
「……」
「……」
 そして、それから暫くの間、ツヴァイとシロキツネ様は黙って見つめ合っていたが。
「んー……、今すぐはちょっと無理っぽいかな」
 その言葉と共にシロキツネ様がツヴァイから視線を外し、乾燥した目をうるおわせるためにパチパチと何度もまばたきをした。
「今すぐは……ってことは、いずれわかりそうなのか?」
「そうだね。分析に少し時間が掛かる感じだけど、2、3日以内にはわかりそうかな。わかったら教えるねー」
「……ああ、頼む」
 ありがとう。と自分の状態を調べてくれたシロキツネ様に感謝の言葉を述べた後、ツヴァイはちょっとだけ先延ばしにはなったが、自分の状態がわかりそうになったことで安堵と。
「……」
 少しの不安を抱いた。
「……」
 ……転移ならこの世界で生活しながら元の世界に戻るための方法を探し、最終的には元の世界に戻るというゴールを目指せばいい。
 けれども。
 ……転生だった場合、俺はこの世界で生活をして、それから……、それから……。
「……」
 何をすればいいんだ。と、自分が転生したのか転移したのかがわかりそうになったことで、もしゴールが見えない転生だった場合、街の住人になることや決闘という今抱えている問題をクリアした、自分はどうすればいいのかとツヴァイは今更ながら不安になり。
「あ、そうだ。役割ロールだ……! なあ、シロキツネ様。俺にこの世界での役割ってないのかな」
 ツヴァイは無い方が気楽と考えていた魔王を倒すなどの役割ロールが自分にあったりしないのだろうかとすがるようにシロキツネ様に尋ねたが、シロキツネ様はそんなツヴァイの質問に驚くような、いぶかしむような、複雑な表情を浮かべた。
「役割……? 開かずの館から出てきたばかりの今のキミに役割があるわけがないでしょ。役割なんてものは最初からあるんじゃなくて、後で与えられたり作ってくモノなんだから。けど、急にどうしたの。キミはそんなこともわからない子じゃないんじゃない?」
 そして、ツヴァイの僅かな異変を感じ取ったシロキツネ様が心配そうな声を出すと、その声に反応してツヴァイは半ば反射的に呼吸を整え、他者を心配させない社会人大人の顔になった。
「……はは、ごめん。これからどうするかって考えたら、何かちょっと不安になってしまったみたいだ。17の身体とはいえ、中身は子供じゃなくてもういい歳のおっさんなのにな」
「……」
 大人が情けないな、と頬を掻きながら笑うツヴァイの顔を見てから、シロキツネ様はゆっくりと目を瞑った。
 そして────
 
「これから何をするか。そんなの────生きればいいんだよ」

 シロキツネ様は、ツヴァイに、当たり前の道を指し示した。
「……生きる?」
「そう。まずは生きるために生きるんだね。それが何よりも重要。目指すものを見つけたり悩んだりするのは、ずっと後でいいんだよ」
「……」
 そして、そのシロキツネ様の言葉を聞いたツヴァイは、しばらくの間、身体17歳相応の表情を浮かべたままうつむいていたが。
「……生きるために、生きる。……そうか。の俺はそれでいいのか」
 そう呟いた後、ツヴァイは静かに顔を上げた。
「……ありがとう、シロキツネ様。何か色んな事が吹っ切れて、気持ちがだいぶ楽になったよ」
 そして、憑き物が落ちたような顔でツヴァイが笑みを浮かべると、シロキツネ様は満足げに頷いた。
「それは何より。まあ、慣れない環境で一日中動き回った疲れも出たんだと思うよー。今日はもう休むんだね。色々落ち着くまでキミが出てきた館を寝床にしていいから」
「え、それは渡りに船で本当に助かるけど……、いいのか?」
 もちろん、と力強く言い切ったシロキツネ様は軽く伸びをした後、座布団から立ち上がり廊下に向かって歩き出した。
「それじゃあ、ここで生活するための道具の使い方やモンスター避けの施錠の仕方を教えるから付いてきて」
「あ、ああ、わかった」
 そして、スタスタと歩いて行くシロキツネ様の後をツヴァイは慌てて追いかけ、2人は開かずの館と呼ばれていた建物に向かった。
 
 それから約30分後。シロキツネ様にこのやしろでの生活方法を色々と教えて貰ったツヴァイは元開かずの館の中で布団に入って、目を瞑り、────あっという間に眠りについた。

 こうして、ツヴァイの異世界生活の1日目がようやく終わったのだった。
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