嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま

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年長者

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 ウィルとベネットの様子。ウィルの視点。



 俺とベネットは、森の奥の一軒家で、気ままなスローライフを送っていた。

 昼下がり、いつものようにベネットと励んでいると、寝室の空気が突然震えた。

「んっ!?」

 ベネットが短く声を上げたのと同時に、赤い転移魔法陣が展開した。まばゆい光が室内を満たしたかと思うと、金髪の美少年アルスが優雅な笑みを浮かべて立っていた。

「やあ、邪魔しちゃったかな? そのまま続けてくれて構わないよ」

 アルスは、抱き合っている俺たちを見ながら、悪びれた様子もない。

「できるかっ!」

 俺は慌ててベネットから身を離して、散乱した服を掴み、乱暴に着込んだ。ベネットは不満そうにアルスをジト目で見ていたが、俺がベッドから降りると、渋々服を着てベットから降りてきた。

 リビングに場所を移すと、アルスはソファに腰掛け、ティーカップを手に取った。カップには紅茶が注がれており、湯気が上がっている。柔らかい香りが室内に広がった。

 また不思議な力でティーセットを出したのか? 手品師も真っ青だな。

「で、今日は何の用なんだ?」

 アルスは一口茶を啜ると、涼しげな瞳を俺に向けた。

「ウィルさんを殺そうとしていた赤髪の子、リーナが牢を脱走した。君たちへの復讐心に燃えているだろうから、きっとここに来るね」
 
 俺は鼻を鳴らして笑い飛ばした。

「来たところで返り討ちにしてやるよ。ベネットはさらに強くなっているし、俺だって少しは強くなったからな!」

 アルスは笑みを湛えたまま目を細めた。

「破壊された牢を超鑑定したところ、面白いことが分かってね」

「面白いこと?」

「ああ、僕が昔封印したはずの、Sランクモンスターの魔力が残っていたんだ」

 背中にゾクリと悪寒が走った。Sランクモンスター、つまりベネットと同格のモンスターだということだ。

「封印したはずって、どういうことだ?」

「『黒炎妃ヴェザルナ』ってやつなんだけど、数日前、劣化した封印から抜け出たみたいなんだ。いつでも倒せるから放っておいたら、リーナの負の感情に惹かれたみたいだね。状況から考えると、おそらくリーナは取り込まれたんだろう。その力を使って、ウィルさんとベネットさんに復讐する気だろうね」

 ベネットと同じ強さのモンスターと、あの赤髪リーダー格がここに来る? そんなの嫌すぎる!

「なら、あんたが退治してくれよ!」

 しかし、アルスはにっこり笑って、楽しそうに口を動かした。

「断るよ。だって僕、これでも王様だよ? なんでそんな危険なことをしなきゃいけないんだい?」

 イラっとしてつい顔が引きつるが、俺のそんな反応さえアルスは楽しんでいるようだ。

「よくもまぁ、ぬけぬけと……。あれだけ圧倒的な力を持っているんだから、あんた一人でどうとでもできるんだろ? 悪人全部を、あんたの力で刈り取ってしまえばいいんじゃないのか?」

 アルスは目を細めて息を吐き、カップをソーサーに置いた。その動作はどこか遠い過去を思い出すかのようだった。

「昔はそう思っていた時期もあったよ。確かにこの世界には魔力という力があって、鍛えれば個人が軍隊並みの力を持つことだってできる。僕もこの統一国家の王になった直後は、仲間たちとこの国の悪人を根こそぎ捕まえようとして、たくさんの罪人を捕らえたし、ときには命を奪うこともあった」

 アルスの青い瞳に、一瞬だけ深い影が宿った。

「だけど、それではダメなんだ。悪人といっても、みんなが悪事を働くことを望んでいるわけじゃない。生きるために、大切な人を守るために、人それぞれ事情があるんだ」

「悪事に手を染めてしまう人を、生まないような社会にしなければ、どれだけ悪人を刈り取ってもすぐに悪事に手を染める人は出てしまうんだよ」

 ……なんか急に深い話になったな。

 俺は呆気にとられるが、すぐに我に返ってアルスに縋る。

「でもリーナは放っておいたらダメだろ!? 俺みたいな善良な一般市民が殺されるかもしれないんだぞ!?」

 ところが、アルスは心底愉快そうに、喉を鳴らして笑った。

「でも、ウィルさんって、国家に内緒でブラッディマッシュを飼育してる悪人だし、悪人同士が潰し合う分には、王としては放置でいいかなって」

「ベネットのことは公認じゃなかったのかよっ!?」

「大災害の元凶を、国家が認めるわけないでしょ? だからさぁ、頑張って黒炎妃ヴェザルナ倒してね!」

「むぅぅ」

 アルスは俺の困惑を眺めて、にやにやとしている。

「今のベネットさんと、ウィルさんへの憎しみを糧に育ったヴェザルナってどっちが強いのかな? 興味深いよね。勝ってさらに力が増大した方と、僕が戦うのも面白そうだ」
 
 その言葉は、純粋な興味と好奇心に満ちており、俺たちの命運をまるでゲームのように扱っているかのように思えた。

「だー! それが国王の言うことか? 俺達はスローライフしたいだけなんだよ! 頼むから何とかしてくれよ! 年長者の頼みを聞いてくれよ!」

 俺は語気を強めて懇願したが、アルスはフッと軽く笑った。

「……年長者って。僕はこんな見た目だけど、転生する前の48年と、転生してからの55年でウィルさんよりもずっと年上なんだけど」

「はっ? 何を言って……」

「と、いうわけだから、年長者からのお願い。ヴェザルナを倒しちゃってくれる?」

 アルスはそれだけ言うと、赤い光を放つ転移魔法陣を展開し、笑顔で手を振りながら姿を消してしまった。

 俺が唖然としていると、ベネットは指先で俺の頬を押した。

「この家を中心に、半径5km以内には私の菌糸を張り巡らしているから、危険な奴が近づいてきたらすぐに分かるよ」

「そうなのか……?」

「だから、さっきの続きしよーよ」

 さすがベネットだ。さっきのアルスの話にも、全く動じていない。俺はベネットに抵抗する間もなく、ベッドへと引きずり込まれた。

 そのまま、肉食系女子であるベネットに、ガッツリ体液を搾り取られるのだった。
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