嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま

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逃げよう

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 俺は一人で宿の部屋に戻ってきた。

 ベネットがいない部屋は、静まり返っているが落ち着かない。

 きっと、あいつのことだから、並の騎士に酷い目にあわされることはいだろう。あの場にいた小隊長クラスの騎士程度なら、何人いてもベネットに傷を負わせることはできないはず。

 だが、騎士団長が出てきたなら話は別だ。この国を守る十一の騎士団それぞれの団長で、イセカイ王に力を授かって、人智を超越した戦闘力を持っているらしい。

 真偽のほどは定かではないが、その剣閃は一撃で山を砕き、海を割るとも言われている。

 いくらベネットが強くても、まだ騎士団長クラスには勝てないだろう。どうにかして助け出さなくては……。

 ベネットが騎士団に連れていかれ、どれだけ時間が経っただろうか。良い手立ても思いつかずに、苛立ちだけが募っていく。

 ベッドに横になり、ぼんやり買い物袋を眺めていると、ドアの隙間からシュルシュルと糸状の物が入り込んできた。

 その糸状の物は一か所に集まると、みるみるうちに人型になり、美しいベネットの姿になった。

「お前……、無事だったのか?」

「うん、この通り」

 彼女は穏やかに微笑むと、体を見せつけるように両腕を開いた。確かに、傷などはどこにもない。

「よく逃げられたな。魔力を封じる魔道具を嵌められていたのに」

「騎士団に連れていかれたアレは、菌糸で作った偽物だよ。騎士団の気配を感じたから、偽物を作って本体は気配を消して潜んでいたんだ。偽物は牢に入れられているけど、きちんと調べられたらすぐにばれるだろうから、今すぐこの街から逃げよう」

 ベネットは真面目な顔で俺の手を引くが、白い肌のすべてが露わになっており、目のやりどころに困る。

「ちょ、待て待て、お前、素っ裸じゃないか」

「あの黒い服は、偽物に着せているから……」

「あ……、そうか」

 ベネットは、困ったように眉を下げてはいるものの、堂々とした立ち姿だ。きっと羞恥心とか無いんだろうなぁ。こっちが恥ずかしくなってきたじゃないか。

「買い物している時に、騎士団が迫ていたのを感知していたから、買い物が終わってから黒い服に着替えたんだよ。ウィルに買ってもらった服を、一着でも無駄にしたくなかったんだもん」

 だもんって……。可愛いが、裸で外を歩かせるわけにもいかんよな。俺は買った服が入っている袋を、ベネットに差し出した。

「とりあえず、買ってきた服を着てくれ」

 ベネット意味ありげに笑みを浮かべると、ベッドに座っている俺の膝の上に座って、体を擦り付けてきた。

「でもさ、このまま服を着てもいいの?」

 ベネットの美しい体を見て、反応してしまった俺の一部分に、ベネットは手を伸ばして柔らかく握った。

「お、おいっ、早く逃げないといけないんだろ?」

「大丈夫だよ、ウィルって早いから」

「一応言っておくけど、それ、誉め言葉じゃないからな」

「そうなの? どっちでもいいや、早く頂戴」

 早く逃げなければと思いながらも、ベネットの可愛いおねだりに負けてしまうのだった。



 * * *



 またも、年甲斐もなくハッスルしてしまったが、思ったより疲労感は少ない。それはさておき、騎士団に気付かれる前に街を離れなければ。

 荷物をまとめると、二人で宿をこっそり抜け出しすと、街に人の気配はなかった。夜遅くなったのが、逆に良かったのかもしれない。そのまま闇夜に紛れて、誰にも会わずに街の外に出られた。

 月は雲に隠れ、世界はほとんど影だけでできている。それでも、ときおり雲間から一筋の月光が差し込み、軽やかに歩くベネットの髪を淡く照らした。

 金色の長い髪が夜気に揺れ、光を受けて妖しく輝く。その一瞬の美しさに、胸の奥がぎゅっと掴まれるような感覚が走り、思わず息を吞んだ。

「なぁ、これからどうする?」

「人間のいない山奥にでも行って、二人っきりでスローライフしない? 私はウィルさえいればどこでも幸せになれるから」

 無邪気に笑うベネットに、胸の奥が温かくなった。

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。俺もベネットと一緒ならどこでも楽しめそうだ」

 歩きながら笑い合っていると、突然近くの地面に、赤く輝く魔法陣が浮かびあがった。

「あれは転移魔法陣!?」

 超上級魔法で、使用できるのは最上位の魔術師のみだ。当然それを使用し移動してくるとなれば、最上位の実力者ということになる。ベネットを討伐するために、騎士団長クラスの実力者が動いたってのか? 

 俺とベネットが緊張して身構えていると、魔法陣の赤い光の中に人影が見えてきた。

 魔法陣が消えた後に立っていたのは、20代前半と思われる金髪の若い男だった。
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