嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま

文字の大きさ
12 / 20

スローライフ  挿絵有

しおりを挟む
 あいつ、あれだけの深手を負って、まだ立ち上がれるのか?

 ベネットは忌々し気にアルスを睨んでいるが、もう彼女には攻撃するだけの力は残っていない。

 アルスが如何に規格外の強さを持っていたとしても、あれだけ痛んでいれば、俺でも止めを刺せるだろうか? 俺は拳を握り、呼吸を整え構えた。

 そのとき、地面に二つの赤い転移魔法陣が浮かび上がった。

 新手か!?

 転移してきたのは長い金髪にウエーブのかかった美少女と、ストレートの銀髪を腰まで垂らした美少女だった。二人とも、強大な魔力を内包しているのが感じられる。転移魔法陣で移動してきたことも併せて考えると、最上位の魔術士に違いない。

 くそ、何とかしてベネットだけでも逃がす方法は……。

 俺がベネットを抱き上げ、後ずさりをしていると、アルスは現れた美少女に声を掛けた。

「なんだ、マリーとシーナも来たのか」

 そして、アルスは全身にある傷を全く気にしていない様子で、俺に笑いかけた。

「二人とも僕の妻だよ。金髪の子がマリーで、銀髪の子がシーナ。どちらもベネットさんに負けないほどの美人だろ?」

 マリーは目を吊り上げ、怒気をはらんだ足取りでアルスのもとへ歩み寄った。

「来たのか、じゃないでしょ!? 一人で勝手に出撃して! あなたは王としての自覚が足りないのよ!」
 
 シーナも呆れ顔でアルスを見ている。

「そんなにボロボロになって……、ずいぶんと楽しめたみたいね?」

 杖を一振りすると、アルスの傷は消え去り、服も新品同様になった。

「いやぁ、ちょっと舐めプが過ぎたかな? ベネットさんの強さは想像以上だった。今回は僕の負けを認めるよ。それと、ベネットさんにも治癒魔法をかけてあげて」

 あまりに意外なアルスの言動に、思わず「は?」と声が漏れた。

「別に君たちの仲を裂きに来たんじゃないんだ。騎士団から報告を受けたブラッディマッシュが、脅威かどうかを見極めに来ただけなんだよ」

 マリーがアルスに突っ込む。

「単にアルスが強いモンスターと、戦いたかっただけでしょ?」

「まぁ、それも少しはあるね。でも、僕の超鑑定によると、二人は深く愛し合っていることと、今のところベネットさんは人類の敵にならないことが分かったから、良しとしようじゃないか」

 愛し合ってるとか、大きな声で言うな……。ベネットは嬉しそうに顔をほころばせて、俺の顔を眺めている。

「ウィルさん、これからもベネットさんを大切にね」

「言われなくてもそうするさ」

 アルスは、軽く笑うとベネットに向く。

「ベネットさん、気が向いたら人類を滅ぼすために暴れてもいいからね? その時は僕が全力で相手するよ」

 ベネットは嫌そうに顔をしかめてアルスを見る。シーナは持っていた杖でアルスの頭をはたいた。

「期待を込めて物騒なことを言うな! ポンコツ王!」

 アルスはコホンと咳払いをして、俺に向き直った。

「そうそう、鑑定したときにウィルさんの記憶を見させてもらったけど、ブラッディマッシュの存在を騎士団に密告した赤い髪の子は、かなりの悪さをしていたようだね。彼女には罪を償ってもらうように騎士団に伝えておくよ」

 一度に多くのことが起こりすぎて、あっけにとられていた俺は「はぁ……」と気の抜けた返事しかできなかった。

「じゃあ、僕たちはこれで失礼させてもらうよ」

 アルスは満足そうに笑って、手を振るような仕草を見せた。その後、彼らは転移して去っていった。



 * * *



 ベネットとアルスが戦ってから一月が経った。俺たちは、人間が近寄らないような深い森の奥で、仲良く暮らしている。

 あの戦いの後、住むのにちょうど良さそうなところを探して旅をしていた。

 そして、この森を見つけて、よしここに住もう! と決めた直後に、タイミングよくアルスが転移魔法陣で登場し、謎の技術で一軒家をプレゼントしてくれた。アルスの懐からポンッと家が出てきたように見えたが詳細は不明だ。 
 
 正直助かったが、アルスは「ベネットと楽しくバトルできたお礼」とか言っていたので、ベネットは物凄く嫌そうな顔をしていた。

 ついでに服を燃やしてしまったお詫びとして、大量の服も貰った。アルスのチョイスは良く分かっており、俺の性癖を十分にフォローしてくれていた。

「ねー、ウィルー、この服ほとんど布が無いけど、こんなのがいいの?」

「ああ、そうだ。だが、人前でその恰好はダメだぞ? 俺と二人きりの時限定だからな!」

「ふーん? ウィルが嬉しいならそれでいいや」

 ……と、ベネットに着せて喜んでいる。

 もちろん、ずっとそんなことばかりしているわけではない。

 まだ冒険者を引退するつもりはないので、体を鍛えつつ、森で狩りをしている。この森には強力な魔獣や魔蟲が多数生息しており、ベネットの食糧に困らないのがいい。

 成長を続けるベネットは、転移魔法陣も操れるようになったので、たまに街に転移してこの森で採れた素材を換金しつつ、生活に必要な物を購入したりも出来るようになった。



 ある日、転移魔法陣の赤い光が見えたので庭に出ると、あの王様が笑顔で手を振っていた。

「Sランクモンスターの視察に来たよ」

 そうか、暇つぶしか。この王様、割と自由に一人で行動してるよな。まぁ、この人を暗殺できる奴なんていないだろうから問題ないのかねぇ?

 アルスは自前のティーセットを広げると、世間話をはさみつつ近況を俺に教えてくれた。

 ブラッディマッシュの存在は各方面に知られないように根回ししたそうだ。

 そうしなければ、討伐隊が組まれて攻めてきたり、名声を上げるために冒険者が挑みにくるだろうとのこと。そこは素直に感謝しておくか。 

 それと、俺を嵌めた赤髪リーダー格は逮捕され、牢屋にぶち込まれたそうだ。名前を初めて知ったが『リーナ』というらしい。



 あの四人組にボコられた直後は復讐してやりたかったが、今はもうどうでもよかった。

 ……いや、彼女の仲間を殺したのは気が咎めているか。彼女は死ぬまでずっと、俺を恨んで苦しみ続けるだろう。そう考えると胸が痛む。それが俺の復讐だと言い切れる性格なら、まだ良かったのだが……。

 奪われた金は、全額使われていて返ってこなかったが、それもどうでもよかった。この森で手に入る素材を売れば生活に必要な金は手に入るし、俺にはベネットという、かけがえのない財産があるんだからな。



 このままいつまでも、可愛い相棒と暮らしていければいい。そんなことを思いながら、今日もベネットと一緒に森へ狩りに出かけたのだった。


 * * *

布地の少ない服を着ているベネット。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放された俺の木工スキルが実は最強だった件 ~森で拾ったエルフ姉妹のために、今日も快適な家具を作ります~

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺は、異世界の伯爵家の三男・ルークとして生を受けた。 しかし、五歳で授かったスキルは「創造(木工)」。戦闘にも魔法にも役立たない外れスキルだと蔑まれ、俺はあっさりと家を追い出されてしまう。 前世でDIYが趣味だった俺にとっては、むしろ願ってもない展開だ。 貴族のしがらみから解放され、自由な職人ライフを送ろうと決意した矢先、大森林の中で衰弱しきった幼いエルフの姉妹を発見し、保護することに。 言葉もおぼつかない二人、リリアとルナのために、俺はスキルを駆使して一夜で快適なログハウスを建て、温かいベッドと楽しいおもちゃを作り与える。 これは、不遇スキルとされた木工技術で最強の職人になった俺が、可愛すぎる義理の娘たちとのんびり暮らす、ほのぼの異世界ライフ。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

実家にガチャが来たそしてダンジョンが出来た ~スキルを沢山獲得してこの世界で最強になるようです~

仮実谷 望
ファンタジー
とあるサイトを眺めていると隠しリンクを踏んでしまう。主人公はそのサイトでガチャを廻してしまうとサイトからガチャが家に来た。突然の不可思議現象に戸惑うがすぐに納得する。そしてガチャから引いたダンジョンの芽がダンジョンになりダンジョンに入ることになる。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

処理中です...