灰かぶりの少年

うどん

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灰かぶりの少年43

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鼻をくすぐる良い香り
甘くてとても美味しそう

不思議…この香りは何処から?






パチッ

目が覚めた






「うん…ッ」






目を開けて起き上がると知らない部屋
木材の天井に家具、ベッド


それに話声…


なぜここに居るのか記憶にない



「あらっ、目が覚めたのかい!」


「⁇⁇」


「とんでもない所で倒れていたから私と主人でとりあえず家まで運んだんだよ」


「おっ、気がついたか。そうそうワシと家内でお前さんを運んで助けようと…」


ドアの無い部屋の向こうからお婆さんが現れその次にお爺さんが入ってきた

どうやら老夫婦のようである



「…ッすみません、僕っ…気がつかなくてずっと寝てしまって…ご迷惑をお掛けしました‼︎」


「そんなの気にしないでおくれ、私達の方こそきちんとした手当てができなくてすまないね…」


「いえっ、とんでもないです!」


自分の為にこんなにして下さるなんて勿体無いくらいの待遇だ
嬉しくて涙が出そうになる


「今、ちょうどいい具合に蜂蜜入りの紅茶ができたから飲むかい?」


「えっ…良いのですか…っありがとうございます!」


「フフッ、いいに決まってるじゃないか~変わっている子だね」


老夫婦と僕と3人で笑い、とても和やかな優しい雰囲気になった


「あっそうそう、お前さんを探している人がいたよ。最近なんだけど…大勢の人を引き連れて一軒、一軒を聞き込みしてまわっていたみたいでね…それでウチにもとうとう来て、足が悪い少年は居ないかと聞いてきたんだ」


「大勢の人!?」


「確か…身なりもすごく良かったから多分身分が高い方だよ。それに自分は兄で弟を探してるって…」


その言葉を聞いて心臓が激しく脈打つ


「その探している弟は突然行方不明になって不憫な思いをしていると心配そうにおっしゃっていてね」


「ぁ…っぁ…」


「もちろんすぐに私はこの方が探している弟様はお前さんだと直感で感じたから伝えといてあげたよ、本当に弟様思いの方でお優しい」


視界がぼやけてめまいがする

逃げないと…


「おや?どうしたんだい、顔が真っ青だ」





コンコンッ




扉を軽く叩く音




「老夫婦殿、参りました。こちらの扉をお開け下さい」


「あっ…はいっすぐに開けますのでお待ち下さいませ」


「ほら、もう来て下さった。」


老夫婦は嬉しそうな表情で俯く自分の顔を覗いてくる

動悸と大量の汗
逃げないと…逃げないと


同じ言葉が頭の中で巡り冷静さを徐々に奪っていく






「やっと見つけた…」




「…ツツ」

やはりこの声は間違いない
目の前に立つ威圧感は計り知れないくらいの重みを感じる


「おっ…お兄様」


「ずいぶん探したんだぞ、さぁ帰ろう」


優しく自分の手をとり心配そうに問いかける兄の姿に困惑と恐怖が混ざり合う


こんなお兄様は一度も見たことがない
これは嘘だ 怖い


–違うっ…助けてっっ!–


老夫婦に訴えかけようと手を伸ばそうとしたが少し胸騒ぎがして躊躇した
もし本当のことを言って助けを求めてしまったら2人は殺されてしまうかもしれない

そんな事態は絶対に避けたい
優しい2人を巻き込んでは…!

いろんな思いが込み上がる


「気分が悪くなったのかい?何か言いたそうだけど…」


お婆さんは心配そうにそっと自分の背中を撫でてくれる
その優しさが心のともしびを温かく包みこみ心地良い気持ちにさせてくれた


「大丈夫です、ご夫婦様ありがとうございました。僕をここまで介抱して下さって感謝します、僕もやっと帰れるので嬉しい限りです…この御恩は決して忘れません。どうかお元気で…」


声を少し震わせてしまったが笑顔でお婆さんの手を握ることができた
本当に心の底から感謝している、見ず知らずの自分を助けてくれてありがとう…

これで良い
これで良いのだ



「…では老夫婦殿、申し訳ない。後で感謝礼として褒美を授けよう」


お兄様は僕を力強く抱きかかえ、老夫婦の姿を振り返りもせず家を出でいく


さようなら
お婆さん…お爺さん…







































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