ヴォールのアメジスト 〜悪役令嬢の『予言』は乙女ゲームの攻略本から〜

本見りん

文字の大きさ
11 / 89
公爵令嬢の予言

侯爵家の居候 1

しおりを挟む


 ミーシャから、『もう卒業まで必須の授業はないのだし卒業式までは学園はお休みしてもいいのよ』と言われたけれども。私は学園の畑が気になって少しでも行きたいと主張した。
 しかしミーシャから自分が行く日だけにするようにと厳しく言われ、その通りにして今日は2人で学園に登校している。


「レティシア! ……あれから大丈夫だった?」

 教室で、今日は友人ミーナとソフィアと2日ぶりに会っている。

「ええ! 心配かけてごめんなさい。私は大丈夫よ。もうすぐ卒業で会えなくなってしまうのにお休みするのは寂しいんだけど……」

「仕方ないわよ。それに卒業してからもお互いのお屋敷で会えばいいんじゃない! 私は結婚しても彼は王宮の官吏だから王都暮らしの予定だし……。レティシアも王都で研究所だから会えるでしょう?」

 悲しげに言った私に、ミーナは笑顔でそう言った。

「私は……。もしかしたら、彼は外交官だからその内帝国に行かなければならないかもしれないの。……でも! 年に一度は帰ると言ってたから、その時には絶対に会ってね!」

 ソフィアの婚約者は外交官なのだ。……卒業したら、それぞれに道は分かれる。仕方のない事だけれど、やはり寂しい。

 私達3人はそんな事を話しながら、残り少なくなった学生生活を名残惜しんでいた。
 



「――そこの貴女。少しよろしいかしら?」


 教室で3人で話をしていると、こちらに向かって声がかかる。

 どなたに声をかけているのかしら? と、その声の方を見ると――。

 そこには、遠目で見るくらいしかこの3年間全く関わりのなかった、ローズマリー フランドル公爵令嬢がいた。
 後ろには数人の高位の貴族令嬢たち。


 ……これは、どう考えても私に声をかけてらっしゃるのよね……。

 見事な縦髪ロールの赤い髪に青い瞳。気の強そうなその表情は、かなりこちらを見下した感じる。
 彼女は私を顎でしゃくって、その斜め後ろの令嬢が「ついてきなさい」と言って歩き出した。


 私は震えるミーナとソフィアに「大丈夫よ」と言ってから歩き出す。


 胸が、ドクドクする。手も少し震えている。
 ああ、ミーシャの言う事を聞いて屋敷に籠っていれば良かったのかしら。
 けれど筆頭公爵令嬢に呼ばれたとあっては、侯爵令嬢であるミーシャにもどうにも出来ない。


 でもまさか。呼び出されるとは思わなかったのだ。

 だって、私はリオネル様とは関わっていないのだから。

 ……うん、私はやましい事は何も無い。堂々としていよう。

 そう考えながら、私は公爵令嬢たちの後をついて行った。



 ◇ ◇ ◇  


 公爵令嬢の目的地だったのだろう渡り廊下から少し庭に出た辺りにやってきた。途中私達を見て気になったのか複数の生徒達が渡り廊下からこちらをチラチラと覗いている。


「どうして呼ばれたのか。……分かってらっしゃるわよね?」


 公爵令嬢を後ろに下がらせ、前に出てきた令嬢がツンと上向きながらこちらに問いかけてきた。


「……いいえ。全く分かりません」

 私は本当に分からなかったのでそう答えた。何を言われるのだろうと思ったら、まさかの『分かってるだろう』だった。呼んだのはそちらなのに。


「まあ! なんて図々しい! 貴女のような下々の心の卑しい人間がいるから、この学園の風紀が乱れますのよ!?」

 その横にいた別な令嬢が興奮しながら言ってきたのだが……。

「風紀、乱れているんですか? 私の周りにはそんな様子はなかったので知りませんでしたが……」

 それは本当に知らなかった。この学園はなんだかんだいって皆貴族かそれなりの家柄の子弟たち。その家を背負う立場である為に学園内で騒ぎなどそうは起こらないと思っていたし、レティシアも見たことがなかった。


「まあ! 白々しい。貴女が乱しているのではありませんか! だいたい子爵令嬢ごときが王族に近付くなんて、ありえませんわ!」

 ……王族に近付く?

「……あの。私は確かに1年生の時に王族である王太子殿下とお話ししたことがあります。でも、もう2年以上前の話です」

 やはり、リオネル様とのことだったのね。……でも、何故今になってそれを私に? あの時であってもそんな関係ではないと断言出来るけど。


「まあ! やはり殿下にまとわりついているのね! それに貴女がつい最近も殿下と会っているのは知ってるのよ!」

 また1人別の令嬢がそう叫ぶ。

「……つい最近? ……あ、一度偶然バッタリ会った事を言われているのですか? 管理棟に入ったら殿下がいらしたので驚いてすぐに出て行きました。ただそれだけですけれど」

 一応正直にそう答えたのだが、令嬢たちはヒートアップした。『王子に会った』という事が重要らしい。

「ほら! やっぱりそうじゃありませんか!」

「殿下に近付きしなだれかかる事を『ただそれだけ』などと、やはり元平民は言うことが違いますわね!」

「王族に厚かましくも近付く事は、不敬罪よ!」


 彼女たちはそう一通りレティシアを詰なじった。レティシアが何を言おうとも、彼女たちは初めからそう思い込んでおり、こちらの話を聞く気はないらしい。……これは私がここにいても意味はないのでは?

 そして、その後ろでその様子を見ながら静かに佇むフランドル公爵令嬢。


 暫くそうして気が済んだのか、

「それでは、これからは気を付けることね!」


 ……そう言って、フランドル公爵令嬢一行は去って行った。


 そして周りにはそれを見に来ていた生徒たち。彼らも、「あ、終わったのか」といった様子でわらわらと去って行く。


 コレは、いったいなんの茶番だったのだろう? リオネル王子に近付くなと言われても本当にずっと会っていないのだからどうしようもない。
 ……フランドル公爵令嬢は、一体何がしたかったのかしら? 勿論、こんな風にされた事で私は凄く嫌な気持ちになったけれど……。


 ――これじゃあ、まるで『悪役令嬢』の嫌がらせだわ。

 不意にそう思って、すぐに「ん?」と思った。『悪役令嬢』? なんだそれ? 


 なにやらモヤモヤして悩んでいると後ろから声がかかり、それは霧散する。

「レティシア! 大丈夫!?」

 ミーナとソフィアが先生方を連れてやって来てくれたのだ。私は先生方に今起こった事の説明をしたが、相手は筆頭公爵家の令嬢とその友人たち。
 結局は「騒ぎを起こさないように」と私が注意されて今回の事は終わった。そしてさっき一瞬感じたモヤモヤを私は忘れてしまった。


 後で今回の事を聞いたミーシャは公爵令嬢たちや先生に対して激怒していた。


 そしてミーシャから私は今度こそ卒業式までは『外出禁止令』を出されてしまったのである。



ーーーーー


ミーシャの侯爵家でお世話になり出したものの、すぐに登校したレティシア。レティシアが登校していると聞いてすぐに動き出したフランドル公爵令嬢。
そしてレティシアはフランドル公爵令嬢と会った事から、何かを思い出しそうになりました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

藤原遊
恋愛
『運命をやり直す悪役令嬢は、やがて愛されすぎる』 「君がどんな道を選ぼうとも、俺は君を信じ続ける。」 処刑された悪役令嬢――それがリリアナ・ヴァレンシュタインの最期だった。 しかし、神の気まぐれで人生をやり直すチャンスを得た彼女は、自らの罪を悔い、穏やかに生きる道を選ぶ。修道女として婚約を解消する未来を望んだはずが、彼女の変化を見た周囲は「何が彼女をそこまで追い詰めたのか」と深く誤解し、過保護と溺愛を隠さなくなっていく。 「俺が守る。君が守りたいものすべてを、俺も守る。」 そんな中、婚約者のルシアン殿下もまた彼女を見守り続ける。冷静沈着な王太子だった彼は、いつしか彼女のために剣を振るい、共に未来を築きたいと願うようになっていた。 やがてリリアナは、王国を揺るがす陰謀に巻き込まれながらも、それを乗り越える力を得る。そして最後に殿下から告げられた言葉――。 「リリアナ、俺と結婚してくれ。」 「わたくしでよろしければ、喜んでお受けします。」 繰り返される困難を経て、彼女が辿り着いたのは溺愛たっぷりのハッピーエンドだった。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~

放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」 最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!? ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!

悪役令嬢な眠り姫は王子のキスで目を覚ます

永江寧々
恋愛
五歳の頃、父親に言われた『お前は今日から悪役令嬢になりなさい」という命令で決まったティファニーの人生。 幼馴染である公爵令嬢のマリエットが『ヒロインになりたい」と言い出した事で『ヒロインには悪役令嬢が必要なの』という余計な言葉を付け足したせいでティファニーがその犠牲となった。 あれから十年間、ティファニーはずっとマリエットのために悪役令嬢を貫き通してきた。 すぐに眠ってしまう奇病を持つティファニーが学校でお咎めなしでいられるのは莫大な寄付をするマリエットの父親の後ろ盾あってのこと。拒否権などなかった。 高校に入ってマリエットが遊び人と名高いグレンフェル家の次男、コンラッド王子と婚約するという噂が流れた事でティファニーは解放も近いと歓喜していたのだが、休憩がてら眠っていたティファニーにキスをした男がいた。 コンラッド・グレンフェル王子だ ファーストキスだったのにとショックを受けるティファニーに『責任でも取ろうか?」と無責任な言葉を吐き、キスをした理由について『寝顔が好みだった」と言う王子に怒り狂うティファニーは二度と関わりたくないと願うが王子から迫ってきて…… 自分の人生を取り戻すためにマリエット専属の悪役令嬢を貫きたいティファニーだが、何故か王子にキスをされると必ず目を覚ましてしまう謎に頭を抱えるもあまりにも理不尽なマリエットに我慢ならず、反応を窺いながらの悪役令嬢ではなく相手の事などおかまいなしの本物の悪役令嬢になることを決めた。 「お望み通りやってやりますわ。本物の悪役令嬢をね」 ※小説家になろう様にも投稿しています。 11月4日、完結致しました。 足を運んでくださいました皆様、温かいコメントをくださいました皆様、本当にありがとうございました。 心より感謝申し上げます。 もし次の作品を見かけました時は、気まぐれに足をお運びいただけたら光栄です。 本当にありがとうございました。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。 ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。 同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。 ※♡話はHシーンです ※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。 ※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。 ※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。

悪役令嬢、追放先の貧乏診療所をおばあちゃんの知恵で立て直したら大聖女にジョブチェン?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜

華梨ふらわー
恋愛
第二王子との婚約を破棄されてしまった主人公・グレイス。しかし婚約破棄された瞬間、自分が乙女ゲーム『どきどきプリンセスッ!2』の世界に悪役令嬢として転生したことに気付く。婚約破棄に怒り狂った父親に絶縁され、貧乏診療所の医師との結婚させられることに。 日本では主婦のヒエラルキーにおいて上位に位置する『医者の嫁』。意外に悪くない追放先……と思いきや、貧乏すぎて患者より先に診療所が倒れそう。現代医学の知識でチートするのが王道だが、前世も現世でも医療知識は皆無。仕方ないので前世、大好きだったおばあちゃんが教えてくれた知恵で診療所を立て直す!次第に周囲から尊敬され、悪役令嬢から大聖女として崇められるように。 しかし婚約者の医者はなぜか結婚を頑なに拒む。診療所は立て直せそうですが、『医者の嫁』ハッピーセレブライフ計画は全く進捗しないんですが…。 続編『悪役令嬢、モフモフ温泉をおばあちゃんの知恵で立て直したら王妃にジョブチェン?! 〜やっぱり『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件~』を6月15日から連載スタートしました。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574 完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。 おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。 合わせてお楽しみいただければと思います。

処理中です...