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公爵令嬢の予言
侯爵家の居候 1
しおりを挟むミーシャから、『もう卒業まで必須の授業はないのだし卒業式までは学園はお休みしてもいいのよ』と言われたけれども。私は学園の畑が気になって少しでも行きたいと主張した。
しかしミーシャから自分が行く日だけにするようにと厳しく言われ、その通りにして今日は2人で学園に登校している。
「レティシア! ……あれから大丈夫だった?」
教室で、今日は友人ミーナとソフィアと2日ぶりに会っている。
「ええ! 心配かけてごめんなさい。私は大丈夫よ。もうすぐ卒業で会えなくなってしまうのにお休みするのは寂しいんだけど……」
「仕方ないわよ。それに卒業してからもお互いのお屋敷で会えばいいんじゃない! 私は結婚しても彼は王宮の官吏だから王都暮らしの予定だし……。レティシアも王都で研究所だから会えるでしょう?」
悲しげに言った私に、ミーナは笑顔でそう言った。
「私は……。もしかしたら、彼は外交官だからその内帝国に行かなければならないかもしれないの。……でも! 年に一度は帰ると言ってたから、その時には絶対に会ってね!」
ソフィアの婚約者は外交官なのだ。……卒業したら、それぞれに道は分かれる。仕方のない事だけれど、やはり寂しい。
私達3人はそんな事を話しながら、残り少なくなった学生生活を名残惜しんでいた。
「――そこの貴女。少しよろしいかしら?」
教室で3人で話をしていると、こちらに向かって声がかかる。
どなたに声をかけているのかしら? と、その声の方を見ると――。
そこには、遠目で見るくらいしかこの3年間全く関わりのなかった、ローズマリー フランドル公爵令嬢がいた。
後ろには数人の高位の貴族令嬢たち。
……これは、どう考えても私に声をかけてらっしゃるのよね……。
見事な縦髪ロールの赤い髪に青い瞳。気の強そうなその表情は、かなりこちらを見下した感じる。
彼女は私を顎でしゃくって、その斜め後ろの令嬢が「ついてきなさい」と言って歩き出した。
私は震えるミーナとソフィアに「大丈夫よ」と言ってから歩き出す。
胸が、ドクドクする。手も少し震えている。
ああ、ミーシャの言う事を聞いて屋敷に籠っていれば良かったのかしら。
けれど筆頭公爵令嬢に呼ばれたとあっては、侯爵令嬢であるミーシャにもどうにも出来ない。
でもまさか。呼び出されるとは思わなかったのだ。
だって、私はリオネル様とは関わっていないのだから。
……うん、私はやましい事は何も無い。堂々としていよう。
そう考えながら、私は公爵令嬢たちの後をついて行った。
◇ ◇ ◇
公爵令嬢の目的地だったのだろう渡り廊下から少し庭に出た辺りにやってきた。途中私達を見て気になったのか複数の生徒達が渡り廊下からこちらをチラチラと覗いている。
「どうして呼ばれたのか。……分かってらっしゃるわよね?」
公爵令嬢を後ろに下がらせ、前に出てきた令嬢がツンと上向きながらこちらに問いかけてきた。
「……いいえ。全く分かりません」
私は本当に分からなかったのでそう答えた。何を言われるのだろうと思ったら、まさかの『分かってるだろう』だった。呼んだのはそちらなのに。
「まあ! なんて図々しい! 貴女のような下々の心の卑しい人間がいるから、この学園の風紀が乱れますのよ!?」
その横にいた別な令嬢が興奮しながら言ってきたのだが……。
「風紀、乱れているんですか? 私の周りにはそんな様子はなかったので知りませんでしたが……」
それは本当に知らなかった。この学園はなんだかんだいって皆貴族かそれなりの家柄の子弟たち。その家を背負う立場である為に学園内で騒ぎなどそうは起こらないと思っていたし、レティシアも見たことがなかった。
「まあ! 白々しい。貴女が乱しているのではありませんか! だいたい子爵令嬢ごときが王族に近付くなんて、ありえませんわ!」
……王族に近付く?
「……あの。私は確かに1年生の時に王族である王太子殿下とお話ししたことがあります。でも、もう2年以上前の話です」
やはり、リオネル様とのことだったのね。……でも、何故今になってそれを私に? あの時であってもそんな関係ではないと断言出来るけど。
「まあ! やはり殿下にまとわりついているのね! それに貴女がつい最近も殿下と会っているのは知ってるのよ!」
また1人別の令嬢がそう叫ぶ。
「……つい最近? ……あ、一度偶然バッタリ会った事を言われているのですか? 管理棟に入ったら殿下がいらしたので驚いてすぐに出て行きました。ただそれだけですけれど」
一応正直にそう答えたのだが、令嬢たちはヒートアップした。『王子に会った』という事が重要らしい。
「ほら! やっぱりそうじゃありませんか!」
「殿下に近付きしなだれかかる事を『ただそれだけ』などと、やはり元平民は言うことが違いますわね!」
「王族に厚かましくも近付く事は、不敬罪よ!」
彼女たちはそう一通りレティシアを詰なじった。レティシアが何を言おうとも、彼女たちは初めからそう思い込んでおり、こちらの話を聞く気はないらしい。……これは私がここにいても意味はないのでは?
そして、その後ろでその様子を見ながら静かに佇むフランドル公爵令嬢。
暫くそうして気が済んだのか、
「それでは、これからは気を付けることね!」
……そう言って、フランドル公爵令嬢一行は去って行った。
そして周りにはそれを見に来ていた生徒たち。彼らも、「あ、終わったのか」といった様子でわらわらと去って行く。
コレは、いったいなんの茶番だったのだろう? リオネル王子に近付くなと言われても本当にずっと会っていないのだからどうしようもない。
……フランドル公爵令嬢は、一体何がしたかったのかしら? 勿論、こんな風にされた事で私は凄く嫌な気持ちになったけれど……。
――これじゃあ、まるで『悪役令嬢』の嫌がらせだわ。
不意にそう思って、すぐに「ん?」と思った。『悪役令嬢』? なんだそれ?
なにやらモヤモヤして悩んでいると後ろから声がかかり、それは霧散する。
「レティシア! 大丈夫!?」
ミーナとソフィアが先生方を連れてやって来てくれたのだ。私は先生方に今起こった事の説明をしたが、相手は筆頭公爵家の令嬢とその友人たち。
結局は「騒ぎを起こさないように」と私が注意されて今回の事は終わった。そしてさっき一瞬感じたモヤモヤを私は忘れてしまった。
後で今回の事を聞いたミーシャは公爵令嬢たちや先生に対して激怒していた。
そしてミーシャから私は今度こそ卒業式までは『外出禁止令』を出されてしまったのである。
ーーーーー
ミーシャの侯爵家でお世話になり出したものの、すぐに登校したレティシア。レティシアが登校していると聞いてすぐに動き出したフランドル公爵令嬢。
そしてレティシアはフランドル公爵令嬢と会った事から、何かを思い出しそうになりました。
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https://www.alphapolis.co.jp/novel/500576978/161276574
完結しているのですが、【キースのメモ】を追記しております。
おばあちゃんの知恵やレシピをまとめたものになります。
合わせてお楽しみいただければと思います。
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