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公爵令嬢の予言
挿話 王太后
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リオネルの祖母である王太后の『卒業パーティー』前夜のお話です。
ーーーーー
「王太后様。お久しぶりにございます」
「……遠路はるばるよく参った。3年半振りかの? 時に、兄上はご健勝か?」
ランゴーニュ王国の王太后は、機嫌良く甥であるヴォール帝国のクライスラー公爵家当主を労う。
王太后は大国であるヴォール帝国の高位貴族出身。ランゴーニュ王国の国王が、母とはいえ王太后に強く出れない理由がここにある。
「……はい。前皇帝陛下崩御の後、随分と気力が衰えられましたが、私に公爵の位を譲られてからは領地で挽回の機会を窺う事を生きがいとしております」
5年前、ヴォール帝国の前皇帝は急な病でこの世を去った。
20年前兄弟での帝位争いに勝利し見事皇帝の座についた前皇帝は、しかしながら子供にはなかなか恵まれなかった。たった1人生まれた皇女は当時まだ2歳。法律で成人するまでは皇位を継ぐ事は出来ず、皮肉な事に20年前に失脚したはずの皇弟が皇帝の座に着くことになった。
そして前帝の幼い皇女は離宮にほぼ幽閉状態。20年前の政争で前皇帝に味方した貴族達は当然のように力を無くしていった。
「挽回、のう……。それならば、前皇帝の忘れ形見である『皇女』様を離宮より奪還し保護をするか、お前達の派閥の歳の近い男子と婚約させるなどの方法があるのではないか?」
王太后は呑気にそう口にしたが、甥は顔を顰める。
「恐れながら。我ら前皇帝派の伯爵家が皇女様のいる離宮に我らの息のかかった侍女を入れようとしただけで、伯爵は謀反の恐れがあるとして処刑。『皇女』様に婚約の申入をした貴族は遠く離れた僻地へ左遷。
……とてもではありませんが、手は出せません」
「……ふん。20年前のやり返しをされている。そういう訳じゃな。それではその『皇女』様も御命は危険ではないのか? 確か……あの時の『皇女』は混乱の中で行方不明となってはいたが……。お前たちが手にかけたのであろう?」
人払いをしてあるとはいえかなり際どい話題に、甥は不快感を隠しもせずに答える。
「人聞きの悪い事を仰らないでください。……残念ながら逃げられたのですよ。随分と探したのですがね。……まぁ、今更です。それに今の皇帝になって5年経っても皇女は姿を現さない。おそらくはもう……」
そう言い捨ててヴォール帝国の公爵は一つ息を吐いてから、ランゴーニュ王国の王太后である叔母に向き直る。
「……今回お訪ねしましたのは、何やらこの王国での不穏な噂を聞いたからでございます。王太后様は、まだあの公爵令嬢に肩入れなさっておられるので?」
現在ヴォール帝国内では力を落としている甥のクライスラー公爵家。今公爵家の大きな切り札の一つといえるのは、小さいとはいえ周辺国の間で『食糧庫』と呼ばれる程に豊かなランゴーニュ王国、その国で未だ絶大な力を持つ『王太后』の実家であること。
しかし今その王太后の血を引く孫の第一王子が『ある予言』によってその地位が危ぶまれている、という噂。その第一王子が失脚したとて次の王太子候補は同じ王太后の孫である第二王子ではあるのだが、出来ればそのような無用な争い事は起こらない方が望ましい。しかも第二王子は大人しく、この噂の発端となっている『予言』をした公爵家に上手く取り込まれてしまう恐れがある。
そうなると、この王国は王家よりもその公爵家が力を持つ事になる。年齢的にこの王太后がいなくなった後にはヴォール帝国の王太后の実家であるクライスラー公爵家の力が及びにくくなる。……それは困るのだ。
「肩入れなどと……。ローズマリー フランドル公爵令嬢の『予言』は当たるとお前も良く知っているではないか。前皇帝の病気のことも見事当ててみせたのだからな!」
そう満足げに笑いながら言う王太后に、甥は冷たい視線を向ける。
「しかしそれからは、一切我が帝国に関する『予言』はないではありませんか。こちらも我らに有利な『予言』をいただけるかと期待していたのですがね」
その前皇帝の病気の予言も、皆初めはとても信じられなかった。それに前皇帝が病気を発症してからもどうすれば治るかなどの有意義な情報は全く無かった。結局のところその『予言』はなんの役にもたたなかったのだ。
それからはこちらに何か有利になる『予言』が聞けるかもしれないと、期待してそれなりに王太后の推す公爵令嬢側の味方をしてきたが……。
全く、利点が無い。
それからの公爵令嬢の出す『予言』は、公爵令嬢の身の回りで起こるほんの小さな出来事ばかりだった。
こちらの見たい未来を視れないのならぼ、味方をしても全く意味がない。
「父上も、同意見です。この王国を乱す可能性のある行動は謹んでください」
「しかし……! 第一王子は国を預かるものとしてやってはいけない事をするとそう『予言』されているのだぞ!? ……それに、アレは夫である前王とそっくりだ……。あの手の者は浮気者で女の敵だ、あのような者が王になるべきでは無い!」
過去の夫の行いを思い出してか、怒りに震える王太后を冷えた眼差しで見る甥。
「貴女はこのランゴーニュ王国の王太后。私情を国政に挟むべきではありません」
「ッ! 私情などではない! 私は……この王国の未来を考えてより良い国王に立ってもらう為に尽力しているのだ! 全てはこの王国の為だ!」
……どう見ても私情まみれの王太后には、おそらくもう正論など通じない。
王太后との話を終わらせ部屋を辞し、王宮の廊下から見える見事な庭を見ながら歩くヴォール帝国の公爵。
……前王の味方をする訳ではないが。大国から嫁いできた高慢で嫉妬深い王妃に、おそらくこの王国の前王は心休まらず愛妾を作ったのではないか? 叔母上が苦しまれたのは事実であろうが、夫婦というものは外からはわからぬものだ。そして叔母上を見ていると前王が何やら気の毒にも思えるというもの。
いつも周りの話を聞かず、自分に都合の良い話ばかりを聞き我がことばかりを話すのだ。おそらく息子である今のランゴーニュ国王も相当苦労している事だろう。
そして、あの様子では叔母上が思い直す可能性は低い。……この後このランゴーニュ王国でひと騒動は起こるのだろう。暫くは、この王国の動向に目を光らせる必要がある。
その時、フワリと風が吹き庭に植えられた花々が揺れる。
公爵は、一瞬その庭に思い焦がれた女性が立っているかのように見えた。
また一つ風が吹き、それが幻だと気付く。……また、幻。
「『行方不明の皇女』、か……」
……20年前。あと一歩というところで逃してしまった皇女。何故あの時、もう少し早く捕らえなかったのか。いや、あの時『こと』が起きるその前に彼女に全てを話していたのなら……。
20年前から何度も反芻する後悔。しかし何度考えても……もう彼女は居ない。
公爵の目の前に、風に吹かれてひとひらの紫の花びらが舞い降りた。そっとそれを手に取る。深い紫の……彼女の瞳のようなそれをキュと握りしめる。
「ヴァイオレット皇女……」
――公爵は愛しげにその花びらに口づけた。
ーーーーー
ヴォール帝国クライスラー公爵家出身である王太后。
息子である現在の国王は、ほぼ乳母達に育てられ実の母である王太后の事は苦手です。昔から自分が1番の女性でした。
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「王太后様。お久しぶりにございます」
「……遠路はるばるよく参った。3年半振りかの? 時に、兄上はご健勝か?」
ランゴーニュ王国の王太后は、機嫌良く甥であるヴォール帝国のクライスラー公爵家当主を労う。
王太后は大国であるヴォール帝国の高位貴族出身。ランゴーニュ王国の国王が、母とはいえ王太后に強く出れない理由がここにある。
「……はい。前皇帝陛下崩御の後、随分と気力が衰えられましたが、私に公爵の位を譲られてからは領地で挽回の機会を窺う事を生きがいとしております」
5年前、ヴォール帝国の前皇帝は急な病でこの世を去った。
20年前兄弟での帝位争いに勝利し見事皇帝の座についた前皇帝は、しかしながら子供にはなかなか恵まれなかった。たった1人生まれた皇女は当時まだ2歳。法律で成人するまでは皇位を継ぐ事は出来ず、皮肉な事に20年前に失脚したはずの皇弟が皇帝の座に着くことになった。
そして前帝の幼い皇女は離宮にほぼ幽閉状態。20年前の政争で前皇帝に味方した貴族達は当然のように力を無くしていった。
「挽回、のう……。それならば、前皇帝の忘れ形見である『皇女』様を離宮より奪還し保護をするか、お前達の派閥の歳の近い男子と婚約させるなどの方法があるのではないか?」
王太后は呑気にそう口にしたが、甥は顔を顰める。
「恐れながら。我ら前皇帝派の伯爵家が皇女様のいる離宮に我らの息のかかった侍女を入れようとしただけで、伯爵は謀反の恐れがあるとして処刑。『皇女』様に婚約の申入をした貴族は遠く離れた僻地へ左遷。
……とてもではありませんが、手は出せません」
「……ふん。20年前のやり返しをされている。そういう訳じゃな。それではその『皇女』様も御命は危険ではないのか? 確か……あの時の『皇女』は混乱の中で行方不明となってはいたが……。お前たちが手にかけたのであろう?」
人払いをしてあるとはいえかなり際どい話題に、甥は不快感を隠しもせずに答える。
「人聞きの悪い事を仰らないでください。……残念ながら逃げられたのですよ。随分と探したのですがね。……まぁ、今更です。それに今の皇帝になって5年経っても皇女は姿を現さない。おそらくはもう……」
そう言い捨ててヴォール帝国の公爵は一つ息を吐いてから、ランゴーニュ王国の王太后である叔母に向き直る。
「……今回お訪ねしましたのは、何やらこの王国での不穏な噂を聞いたからでございます。王太后様は、まだあの公爵令嬢に肩入れなさっておられるので?」
現在ヴォール帝国内では力を落としている甥のクライスラー公爵家。今公爵家の大きな切り札の一つといえるのは、小さいとはいえ周辺国の間で『食糧庫』と呼ばれる程に豊かなランゴーニュ王国、その国で未だ絶大な力を持つ『王太后』の実家であること。
しかし今その王太后の血を引く孫の第一王子が『ある予言』によってその地位が危ぶまれている、という噂。その第一王子が失脚したとて次の王太子候補は同じ王太后の孫である第二王子ではあるのだが、出来ればそのような無用な争い事は起こらない方が望ましい。しかも第二王子は大人しく、この噂の発端となっている『予言』をした公爵家に上手く取り込まれてしまう恐れがある。
そうなると、この王国は王家よりもその公爵家が力を持つ事になる。年齢的にこの王太后がいなくなった後にはヴォール帝国の王太后の実家であるクライスラー公爵家の力が及びにくくなる。……それは困るのだ。
「肩入れなどと……。ローズマリー フランドル公爵令嬢の『予言』は当たるとお前も良く知っているではないか。前皇帝の病気のことも見事当ててみせたのだからな!」
そう満足げに笑いながら言う王太后に、甥は冷たい視線を向ける。
「しかしそれからは、一切我が帝国に関する『予言』はないではありませんか。こちらも我らに有利な『予言』をいただけるかと期待していたのですがね」
その前皇帝の病気の予言も、皆初めはとても信じられなかった。それに前皇帝が病気を発症してからもどうすれば治るかなどの有意義な情報は全く無かった。結局のところその『予言』はなんの役にもたたなかったのだ。
それからはこちらに何か有利になる『予言』が聞けるかもしれないと、期待してそれなりに王太后の推す公爵令嬢側の味方をしてきたが……。
全く、利点が無い。
それからの公爵令嬢の出す『予言』は、公爵令嬢の身の回りで起こるほんの小さな出来事ばかりだった。
こちらの見たい未来を視れないのならぼ、味方をしても全く意味がない。
「父上も、同意見です。この王国を乱す可能性のある行動は謹んでください」
「しかし……! 第一王子は国を預かるものとしてやってはいけない事をするとそう『予言』されているのだぞ!? ……それに、アレは夫である前王とそっくりだ……。あの手の者は浮気者で女の敵だ、あのような者が王になるべきでは無い!」
過去の夫の行いを思い出してか、怒りに震える王太后を冷えた眼差しで見る甥。
「貴女はこのランゴーニュ王国の王太后。私情を国政に挟むべきではありません」
「ッ! 私情などではない! 私は……この王国の未来を考えてより良い国王に立ってもらう為に尽力しているのだ! 全てはこの王国の為だ!」
……どう見ても私情まみれの王太后には、おそらくもう正論など通じない。
王太后との話を終わらせ部屋を辞し、王宮の廊下から見える見事な庭を見ながら歩くヴォール帝国の公爵。
……前王の味方をする訳ではないが。大国から嫁いできた高慢で嫉妬深い王妃に、おそらくこの王国の前王は心休まらず愛妾を作ったのではないか? 叔母上が苦しまれたのは事実であろうが、夫婦というものは外からはわからぬものだ。そして叔母上を見ていると前王が何やら気の毒にも思えるというもの。
いつも周りの話を聞かず、自分に都合の良い話ばかりを聞き我がことばかりを話すのだ。おそらく息子である今のランゴーニュ国王も相当苦労している事だろう。
そして、あの様子では叔母上が思い直す可能性は低い。……この後このランゴーニュ王国でひと騒動は起こるのだろう。暫くは、この王国の動向に目を光らせる必要がある。
その時、フワリと風が吹き庭に植えられた花々が揺れる。
公爵は、一瞬その庭に思い焦がれた女性が立っているかのように見えた。
また一つ風が吹き、それが幻だと気付く。……また、幻。
「『行方不明の皇女』、か……」
……20年前。あと一歩というところで逃してしまった皇女。何故あの時、もう少し早く捕らえなかったのか。いや、あの時『こと』が起きるその前に彼女に全てを話していたのなら……。
20年前から何度も反芻する後悔。しかし何度考えても……もう彼女は居ない。
公爵の目の前に、風に吹かれてひとひらの紫の花びらが舞い降りた。そっとそれを手に取る。深い紫の……彼女の瞳のようなそれをキュと握りしめる。
「ヴァイオレット皇女……」
――公爵は愛しげにその花びらに口づけた。
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