転生したので前世の大切な人に会いに行きます!

本見りん

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12 仲間達の決意

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 ライナーは見るからにがくりと力を落とした。

 大切な親友が『勇者』に選ばれる。そして自分も勇者の仲間に加えてもらい、家族や知人や知らない人々からも随分と持ち上げられた事だろう。神に選ばれし勇者のパーティー。……そしてその後の勇者の死と転落。

 若くして人生の大きな浮き沈みを経験してしまったライナー。それが教会の権威の為であったと聞けば思いは複雑だろう。

 
「聖女の事を悪く言うつもりはないけど、教会の出身なら多分その辺りの事情は知ってたんじゃないかな? それで旅に出たらいるはずもない『魔王』よりも目の前の恋に走った……て感じかな?」

「マジかよ……。俺達は……少なくとも俺は聞いてねーぞ。レオンは、どうだったんだろう。……もしかしたら、マリアと付き合い出した時に聞いたのかもしれねーな。途中から明らかに魔王退治の熱量が俺とは違ってた。それも恋に夢中になってるからかと思ってたんだが……」

 ため息を吐きながらライナーは言った。そのガックリきた様子にセリは思わず慰めを入れる。

「でもまあ、教会の作る『勇者』の全部が悪い訳じゃないと思うけどね。各地の魔物は退治されてる訳だし、それで助かった人達もたくさんいるだろうから。まあ勇者一行全員に事情を打ち明けてくれてても良かったのかもしれないけど」

「あー……。でも俺、知ってたら辞めてた自信ある。レオンも最初から知ってたら旅に出てなかったと思う。『俺達は勇者だ! 魔王を倒し世界を守るんだ!』って最初は意気揚々と出発したからなー。初めから真実を知ってたらあんなにテンション上がらねーよ」

「……ああ、まあ確かに」


 レオンも乗せられやすい子ではあった。

 確かに世界各地を回る魔物退治の旅にアテもなく出るのは若者達にはツライだろう。それを『聖女』が教会と連絡を取り上手く誘導していくという事か。
 しかし『聖女マリア』はその誘導役を上手くこなせず、勇者の仲間をバラバラにしてしまった訳だが。

「……でも、あの聖女はまたライナーの所にくるんじゃない? 一度断られた位で諦めるならこんな帝国の外れにまで来ないでしょ。もしかしたら次は教会の看板をひっ下げて来るのかも。……そうしたら、ライナーは断れるの?」

 途端にライナーは凄く嫌な顔をした。

「ぜってーやりたくない! ……けど、教会の名を出されるのは厄介だな……」

「……そうだよね。この世界で教会の意向に逆らうのは難しい……よね。もしかしたら聖女は教会を動かせるのかな。7年も勇者のパーティーの『聖女』をやってるならそれなりの権力は持っているのかもしれないわね」

「……だろうな……。セリ。俺は5年前レオンが死んで新たな勇者が選ばれたと聞いてすぐに表舞台から姿を消した。俺は勇者の仲間なんてやってたから教会の力は分かってるつもりだ。だから俺はすぐに居場所がバレそうな故郷にも帰らなかった。もしアイツが……教会の名を出してやってくるのなら、俺はまた姿を消すしかない」


 その時、扉がバタンッと大きな音を立てて開いた。

「待ったッ!! ライナー、いきなり姿を消すなんて事は許さないからね!? ちゃんと仲間に話をしなさいよ!」

 扉の向こうからダリルとアレンが現れた。

「うぇっ!? お前ら聞いて……? てか、何盗み聞きしてんだよっ! セリとゆっくり話せって言ってたじゃねーかっ!」

 慌てふためくライナーをスルーして今度はアレンが話しかける。

「ライナー。僕らの関係はそんなものだったの? 僕らは最高のパーティーだって、いつも言ってたじゃない!」

「お前ら……。けど、いくらなんでも教会が出てきてそれに逆らう事になったら……。お前達に迷惑かけちまう。お前達は俺のこと何も知らなかったって、こっちが迷惑だって教会の奴らに言えばきっと大丈夫だから……」

 その言葉を聞いてダリルとアレンはキッとライナーを睨むように見て言った。

「馬鹿にしてんじゃないわよ!! 仲間を売って自分達だけ助かろうだなんて思っちゃいないわよ!」

「そうだよ! 最悪逃げるっていうんなら、皆一緒にだからね!? でも今はまず、このままでいける最善の道をみんなで考えて探してみようよ!」

 ダリルとアレンがライナーにそう畳み掛けた。
 最初驚きで目を見張ったライナーだったが、彼らの気持ちがだんだんと胸に沁みてくる。

「これから、迷惑かけちまうかもしれねーのに……。俺に関わったばかりに本当にすまん……」

「何言ってるの! あの日、誓ったでしょう? もう私達は仲間であり家族なの! ……さぁ、策を練るわよ? まあそういう事態にならないのが1番だけど、あちらの出方次第で私達も動き方を考えていかないとね……!」


 そう言って、ダリルとアレンは少し悪い笑顔を見せた。

 ライナーとセリはそれを見てゴクリと息を呑んだのだった。


 
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