4 / 31
解消しましょう
しおりを挟む「……少し、疲れたね。済まないが……「アルベルト殿下! 私、大事なお話があるのです。ええ大して時間は取らせませんわ。少しでいいですので是非!」…………ああ、分かった」
『疲れたので休ませてもらう』。
おそらくはそう言おうとしていたアルベルトの言葉を遮ったツツェーリア。
そして2人はアルベルトの部屋の近くの部屋に入り人払いをした。2人きりになれるのは、成人していない幼馴染の婚約者だから。今はまだそれがギリギリ許されるのだ。
「ツツェーリアも疲れていたはずなのに、今日のパーティーも完璧だったね。流石だよ。
……それで、大事な話とは?」
まだエディット王女との出逢いの衝撃と叶わぬ恋に心の整理が出来ていないのであろうアルベルト殿下。
ツツェーリアはいつもより少し気弱な様子のアルベルトを自信あり気に見た。
「殿下。……大丈夫でございますわ。私は全てを理解いたしておりますので!」
ツツェーリアは勢い込んで言った。
「理解……? ツツェーリア、いったい何を……?」
アルベルトは戸惑いを隠せないようだ。
彼にしてみれば、たった今婚約者がありながら目の前で別の者にその心を奪われてしまったのだ。王女に対する恋心と混乱と、婚約者に対して申し訳ないという気持ちに苛まれているのだろう。
そんなアルベルトを勇気付けるように、力強くツツェーリアは彼の目を見ながら笑顔で言った。
「殿下。……私達、婚約を解消いたしましょう!」
ツツェーリアはいいことを言った! と満面の笑顔だったが、アルベルトは大いに困惑していた。
「───ッ!? ツツェーリア!? いったい何を言い出すんだ?」
ツツェーリアを宥めるようにアルベルトは言った。彼は混乱していた。もしかすると、自分のこの不実な想いに気付いたツツェーリアが悲しみの余りに正気を失いそんな事を言い出したのではないか? とアルベルトはツツェーリアを真剣に心配しそんな思いをさせてしまった自分の不甲斐なさ不誠実さに怒りを覚えた。
もしそうだったなら、自分はなんて事を───!!
そんな思いに苛まれた苦渋の表情のアルベルトに対して、ツツェーリアは余裕の笑みを浮かべた。
「言葉の通りですわ。……アルベルト殿下はエディット王女に恋をされたのでしょう?」
「ッ!! ツツェーリア……、いや違う、そうではないのだ……」
なんとか言い訳をしようとしたアルベルトにツツェーリアは自信ありげに言った。
「殿下。いったい私と何年の付き合いだとお思いですか? それに私は隣で殿下と王女を見ておりましたのよ。……そして……私も同じですので分かります」
「……? 同じ、とは?」
完全に混乱している殿下に、こちらもこれを言わないと卑怯だと思ったツツェーリアは自分の今の気持ちを正直に話す事にしたのだった。
……
「───そう、か……。ツツェーリアも、恋を……。それにハルミンの不幸があってから跡取りをなくしたアルペンハイム公爵家では公爵を始め色々葛藤があったのだな……」
ツツェーリアは自分に想う人が出来た事、そして弟ハルミンを失い悲しみと避けられない後継問題で悩んだアルペンハイム公爵家の内情を話した。
そして、アルベルト殿下と話をしていく内にツツェーリアは自分の想いを叶える為に殿下の恋を利用しようとした自分の身勝手さにだんだんと気付いた。
「……はい。今までお伝えせずに申し訳ありません……。私も、この想いはつい最近気付いたのですが一生胸に留めておくつもりでした。
……申し訳ございません。私は卑怯でしたわ。殿下の恋に乗じてこのような申し出をするなど」
「いや。話してくれてありがとう、ツツェーリア。私は貴女が心からこの国を愛し尽くしてくれているのを知っている。
……そして私も今知ったが『恋心』というものは、自分ではコントロールし難いものらしい」
殿下はそう言うと、大きく息を吐いた。
「……少し、考えさせてはくれないか。
本当はこのままツツェーリアと結婚する事が一番良いと分かっている。……少し、時間が欲しい」
「……分かりました」
そう言ってその日はツツェーリアは王宮の自分の部屋に戻った。
寝支度をし、今日の事を色々考える。
「───あぁ……。殿下の恋につけ込んで、とんでもない事を申し上げてしまったわ……」
ツツェーリアは深く落ち込んだまま、ベットにダイブした。暫くうつ伏せのままひとしきり落ち込んだ後、ガバリと起き上がる。
確かに殿下に自分の勝手な想いをぶつけ、余計な事を言ってしまった。けれど、このまま何もなければ結婚する殿下にはいずれ正直に自分の想いは伝えなければいけなかった。
……これは人や相手によるのだろうが、少なくとも幼い頃から同志として一緒にいたアルベルトと自分の間柄ならば伝えるべきと思う。
だから、ツツェーリアの想いを殿下に伝えた事はまあ良いとして。
──いくら恋する気持ちが分かるからといって、殿下に『婚約解消しましょう』、はなかったわよね……。殿下には殿下の気持ちやお考えがある。
とりあえず殿下も色々お考えになるのだろうから、そのまとまった答えを私は尊重しよう。
そう決めたツツェーリアは、今度はゆっくりとベットに横になった。
464
あなたにおすすめの小説
【完結】私のことが大好きな婚約者さま
咲雪
恋愛
私は、リアーナ・ムスカ侯爵子女。第二王子アレンディオ・ルーデンス殿下の婚約者です。アレンディオ殿下の5歳上の第一王子が病に倒れて3年経ちました。アレンディオ殿下を王太子にと推す声が大きくなってきました。王子妃として嫁ぐつもりで婚約したのに、王太子妃なんて聞いてません。悩ましく、鬱鬱した日々。私は一体どうなるの?
・sideリアーナは、王太子妃なんて聞いてない!と悩むところから始まります。
・sideアレンディオは、とにかくアレンディオが頑張る話です。
※番外編含め全28話完結、予約投稿済みです。
※ご都合展開ありです。
婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。
石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。
その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。
実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。
初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。
こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません
しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。
曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。
ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。
対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。
そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。
おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。
「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」
時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。
ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。
ゆっくり更新予定です(*´ω`*)
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
王太子殿下が私を諦めない
風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。
今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。
きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。
どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。
※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
【完結】恋が終わる、その隙に
七瀬菜々
恋愛
秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。
伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。
愛しい彼の、弟の妻としてーーー。
婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています
みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。
そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。
それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。
だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。
ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。
アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。
こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。
甘めな話になるのは20話以降です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる