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王立学園にて
しおりを挟む季節は変わり、アルベルトとツツェーリアは王立学園に入学した。
……学園が始まり最初の大型連休が終わっても2人の婚約は解消されることはなく、ツツェーアは王子妃教育を受けつつ学園にも通うという忙しい日々を過ごしていた。
「ツツェーリア」
アルベルトとツツェーリアは同じクラス。当然話す機会もあれば婚約者であるから共に行動する時もある。
そしてアルベルトの隣には、彼の側近である侯爵家嫡男ブルーノと騎士団長嫡男マルクスがいる。彼らはアルベルト付きとして数年前から顔を合わせてはいたが、学園で同級生として過ごす内に本当の友人のような間柄になっているようだった。
ツツェーリアとアルベルトが話し出すと、2人の側近は少しその側を離れる。……気を使ってくれているのだろう。
しかし王子の側近であり美男子で将来有望な2人はアルベルトから離れた途端、たくさんの女生徒達が彼らに集まってくる。
……特に、まだ婚約者の居ないマルクスにはたくさんの女生徒が寄ってきているようだ。本人はかなり嫌そうな顔をしているが……。
ツツェーリアはその様子をチラリと見て大変そうねと思いながらアルベルトと話をしていたのだが……。
……怒りの形相でそれに近寄る1人の女生徒がいた。
「……貴女方、マルクス様からお離れなさいッ!! 彼は、私の婚約者でしてよ!」
周りの生徒達は驚いてその声の主を見る。
……そこに居たのは、マリアンネ シッテンヘルム侯爵令嬢。
集まっていた女生徒達は驚きつつも反論した。
「シッテンヘルム様。何を仰っておられますの? マルクス様に婚約者が居るだなんて聞いた事がありませんわ!」
「そうですわ! 幾らマルクス様が素敵だからといって、そのような嘘をおつきになるなんて見苦しくていらっしゃいますのね」
最高でも伯爵家の彼女達は果敢にも侯爵家の令嬢にそう言い放った。
それだけマルクスの事が好きなのか集団だから強気になっているのか。
……これはいけないわね。
そう思ったツツェーリアはチラリとアルベルトに目配せをする。アルベルトも静かに頷いた。
そしてツツェーリア達が動こうとした時。
「見苦しいのは貴女方ですわ! 私は正式な、マルクス様の婚約者ですのよ。……ねぇ? マルクス様」
マリアンネはそう言って挑発的な目でマルクスを見た。
マルクスはマリアンネを見ないまま眉を顰め少し黙り……、そしてゆっくりと頷いた。
途端に女生徒達は悲痛な悲鳴をあげた。
そしてツツェーリアとアルベルト、ブルーノはそんなマルクスの様子に『おや』と思う。
「シッテンヘルム様!! 貴女様は無理矢理婚約を押し付けたんじゃありませんこと!?」
「そうですわ! だってマルクス様は嫌そうにしてらっしゃるじゃないの!」
「そういえばシッテンヘルム様のお家は軍務大臣ですもの。騎士団長を勤めるハルツハイム伯爵家に圧力をかけたのではありませんの!?」
そう言って騒ぎ出す女生徒達に、マリアンネはまるで図星を突かれたかのように顔を赤くしてから怒りを爆発させた。
「なっ……、無礼者ッ!! 我が家は侯爵家でしてよ!! 今私に無礼を働いた者、そしてこれからマルクス様に近づく者はシッテンヘルム侯爵家の名において決して許しはしませんわ!!」
「───お待ちなさい」
家の名を出して女生徒達を怒鳴り付けていたマリアンネ。そこにツツェーリアは声を掛けた。
『侯爵家』という脅しをかけられ少し青ざめかけていた女生徒達、そして勢い付いている所を止められ不服そうなマリアンネは一斉にツツェーリアを見る。
「……まず、貴女方。シッテンヘルム様に対して失礼が過ぎますわ。
……そしてシッテンヘルム様。侯爵家の令嬢ともあろう方が、その程度の事で家名を出すべきではありませんわ。それにここは平等を謳う『王立学園』でしてよ。お互いに礼を尽くし尊重し合わなければなりませんわ」
公爵令嬢たるツツェーリアの凛としたその物言いに、女生徒達は頭を下げた。
しかしマリアンネは不満そうに声を上げる。
「……この者達は私の婚約者に手を出そうとしたのですよッ!? 侯爵家として黙って見ていられるはずがありませんわッ!!」
「彼女達はその『婚約』を知らなかったのですし何より話をしていただけ。
……淑女たるもの、そのように物事を荒立てるものではありませんわ」
ツツェーリアはそう言って周囲をチラリと見る素振りをした。……今このクラスの生徒を始め廊下にまでこの騒ぎを聞きつけた生徒達が集まっているという状況、しかも近くでアルベルト王子も見ている事にマリアンネもやっと気付いたようで羞恥にグッと言葉に詰まらせ俯いた。
「…………ツツェーリア様は私から殿下を奪ったばかりか、マルクス様まで取り上げようとなさるのですね……!」
マリアンネはツツェーリアを睨み付け最後そう呟いてその場を去った。
ツツェーリアが思わずアルベルトを見ると、彼も呆れたように肩をすくめたのだった。
……この時はそれで何とかその場はおさまったのだが。
それからもマリアンネはマルクスに近付く女生徒達相手に度々騒ぎを起こすようになったのだった。
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