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側近達の婚約者
しおりを挟む学園でのマリアンネの騒ぎが起きてからしばらくして、ツツェーリアは王宮での王子妃教育の後アルベルトとお茶を飲んでいた。
「……あれからもシッテンヘルム嬢は相変わらずだな」
「ええ。……彼女は私の事も目の敵にしていているのでその場は引いてもまた同じ事を繰り返されるのですわ」
「ツツェーリアを目の敵? それはいったいどうしてなのだろう。……そういえば最初からそのような様子だったね。仮にも侯爵令嬢が公爵令嬢にして王子の婚約者であるツツェーリアに取ってよい態度ではない」
アルベルトもマリアンネの態度に不満を持っているようだった。
「……実を申しますと、彼女は昔殿下の婚約者候補の1人だったのですわ。私は昔から何度も彼女に嫌味を言われておりましたのよ。
そして彼女に婚約者が出来、その最初の騒ぎに私が関わったものですから余計に恨まれてしまったのでしょうね」
「ッ!? そんなものは逆恨みではないか。それにそもそもそのような浅い考えの者が王家に入る事など出来ぬ。ましてや高位貴族の令嬢がこのような騒ぎを起こし続けるなどなんと愚かな」
アルベルトはかなり憤慨しているようだ。
「……殿下? もしかして、かなりお怒りでいらっしゃる……?」
珍しいこともあるものだ。アルベルトは王家の人間らしく滅多に感情を外には出さないのに。
「……そうだ。今ツツェーリアの話で確信した。マルクスはシッテンヘルム侯爵令嬢とは婚約を解消すべきだ」
「……それはまた、極端なお話ですわね」
確かにマリアンネの態度は褒められたものではないが、貴族の婚約はほぼ家同士で決められるもの。お互いの家が認めているのであればシッテンヘルム侯爵家がきちんと令嬢に指導して終わりでいいのではないのか?
「あれからも様々な事があり、マルクスとブルーノと私は腹を割って話をしたのだ。
……2人とも、自分達の婚約を解消したいと考えていた」
「!? まさか、マルクス様はともかくブルーノ様もでございますか?」
「…………そうだ」
アルベルトからよくよく話を聞くと、ブルーノの婚約は生まれてすぐに祖父である侯爵に決められたもの。しかしブルーノとその婚約者である子爵家の令嬢は幼い頃から交流があるものの、とにかく馬が合わない。そして家格も派閥も違いお互いの家としても何の利もないという。……そして、2人にはお互いに両思いの相手がいるそうなのだ。
「……それはまた、おかしな話ですのね。家に利のない婚約など。侯爵はどうしてそのような婚約をお組みになられたのでしょう?」
ツツェーリアはどうにも理解が出来ず尋ねると、アルベルトも苦虫を潰したような顔をした。
「……それが、侯爵自身の昔の叶わなかった恋の為だと言うのだ」
「…………は?」
「……侯爵は若かりし頃、身分違いの恋に落ちたそうだがその恋は周囲の反対もあり叶わなかった。2人はその恋を次の世代で叶えようとしたが、互いの子は男子ばかり。やっと令嬢の孫に女の子が生まれたので生まれてすぐのブルーノと婚約させたというのだ。
……あの侯爵は随分と独善的だと有名だろう。周囲の者が何を言っても全く聞く耳を持たないらしい。特に侯爵の昔の恋人はその婚約を喜んだ後亡くなったそうで今となっては誰にも彼を説得出来ないらしいのだ」
「まあ、それは……」
なんともはた迷惑な。
それ程の大恋愛をし人を思う気持ちを知っているならば、今現在の本人達の想いを分かってやるべきなのではないか。
そう思ったが、侯爵も亡くなった恋人の弔いの為にムキになっているのかもしれない。
───人の想いは外からは分からぬもの。
そう思いながら更にアルベルトの話を聞く。
「──そしてマルクスだが……。彼にも好きな女性がいるそうなのだ。それなのに軍務大臣であるシッテンヘルム侯爵が騎士団長であるハルツハイム伯爵に強引に話を勧め本人の気持ちも聞かぬまま婚約を決めてしまったらしい。
マルクスはその婚約を知りすぐにシッテンヘルム侯爵令嬢に事情を話し婚約の解消を願ったが、それが却って令嬢の嫉妬心に火をつけてしまったらしい」
「───まあ。それで……」
それでマリアンネは最初からあれ程マルクスに近付く女生徒達を目の敵にしていたのか。
そしてあの最初の学園での騒ぎの時に他の令嬢達が言っていた事はほぼ当たっていたという事なのかとツツェーリアは少し驚く。
「シッテンヘルム侯爵令嬢には多少同情はするが、そもそもが侯爵家が立場に物を言わせて本人抜きに婚約を決めてしまった事に問題がある。幼い頃の取り決めならいざ知らず、今我らの年齢での婚約を本人の意思も聞かず勝手に決めてしまうなど余程の事情がない限り考えられない事だからな」
「それは全くその通りだと思いますし、ハルツハイム様はお気の毒としか言いようがありません。
……けれどここまで騒がれその婚約が公になっていては、婚約解消となるとシッテンヘルム様は『傷物令嬢』となってしまいますわね」
「そうなのだ。そしてそれはブルーノ達も……、そして我らにも同じ事が言える」
そう言ってアルベルトは少し俯き考え込んだ。
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