《完結》恋に落ちる瞬間〜私が婚約を解消するまで〜

本見りん

文字の大きさ
9 / 31

側近達の婚約者

しおりを挟む




 学園でのマリアンネの騒ぎが起きてからしばらくして、ツツェーリアは王宮での王子妃教育の後アルベルトとお茶を飲んでいた。


「……あれからもシッテンヘルム嬢は相変わらずだな」

「ええ。……彼女は私の事も目の敵にしていているのでその場は引いてもまた同じ事を繰り返されるのですわ」

「ツツェーリアを目の敵? それはいったいどうしてなのだろう。……そういえば最初からそのような様子だったね。仮にも侯爵令嬢が公爵令嬢にして王子の婚約者であるツツェーリアに取ってよい態度ではない」


 アルベルトもマリアンネの態度に不満を持っているようだった。


「……実を申しますと、彼女は昔殿下の婚約者候補の1人だったのですわ。私は昔から何度も彼女に嫌味を言われておりましたのよ。
そして彼女に婚約者が出来、その最初の騒ぎに私が関わったものですから余計に恨まれてしまったのでしょうね」


「ッ!? そんなものは逆恨みではないか。それにそもそもそのような浅い考えの者が王家に入る事など出来ぬ。ましてや高位貴族の令嬢がこのような騒ぎを起こし続けるなどなんと愚かな」


 アルベルトはかなり憤慨しているようだ。


「……殿下? もしかして、かなりお怒りでいらっしゃる……?」


 珍しいこともあるものだ。アルベルトは王家の人間らしく滅多に感情を外には出さないのに。


「……そうだ。今ツツェーリアの話で確信した。マルクスはシッテンヘルム侯爵令嬢とは婚約を解消すべきだ」

「……それはまた、極端なお話ですわね」


 確かにマリアンネの態度は褒められたものではないが、貴族の婚約はほぼ家同士で決められるもの。お互いの家が認めているのであればシッテンヘルム侯爵家がきちんと令嬢に指導して終わりでいいのではないのか?


「あれからも様々な事があり、マルクスとブルーノと私は腹を割って話をしたのだ。
……2人とも、自分達の婚約を解消したいと考えていた」


「!? まさか、マルクス様はともかくブルーノ様もでございますか?」


「…………そうだ」


 アルベルトからよくよく話を聞くと、ブルーノの婚約は生まれてすぐに祖父である侯爵に決められたもの。しかしブルーノとその婚約者である子爵家の令嬢は幼い頃から交流があるものの、とにかく馬が合わない。そして家格も派閥も違いお互いの家としても何の利もないという。……そして、2人にはお互いに両思いの相手がいるそうなのだ。


「……それはまた、おかしな話ですのね。家に利のない婚約など。侯爵はどうしてそのような婚約をお組みになられたのでしょう?」


 ツツェーリアはどうにも理解が出来ず尋ねると、アルベルトも苦虫を潰したような顔をした。


「……それが、侯爵自身の昔の叶わなかった恋の為だと言うのだ」


「…………は?」


「……侯爵は若かりし頃、身分違いの恋に落ちたそうだがその恋は周囲の反対もあり叶わなかった。2人はその恋を次の世代で叶えようとしたが、互いの子は男子ばかり。やっと令嬢の孫に女の子が生まれたので生まれてすぐのブルーノと婚約させたというのだ。
……あの侯爵は随分と独善的だと有名だろう。周囲の者が何を言っても全く聞く耳を持たないらしい。特に侯爵の昔の恋人はその婚約を喜んだ後亡くなったそうで今となっては誰にも彼を説得出来ないらしいのだ」


「まあ、それは……」


 なんともはた迷惑な。
 それ程の大恋愛をし人を思う気持ちを知っているならば、今現在の本人達の想いを分かってやるべきなのではないか。

 そう思ったが、侯爵も亡くなった恋人の弔いの為にムキになっているのかもしれない。


 ───人の想いは外からは分からぬもの。


 そう思いながら更にアルベルトの話を聞く。


「──そしてマルクスだが……。彼にも好きな女性がいるそうなのだ。それなのに軍務大臣であるシッテンヘルム侯爵が騎士団長であるハルツハイム伯爵に強引に話を勧め本人の気持ちも聞かぬまま婚約を決めてしまったらしい。
マルクスはその婚約を知りすぐにシッテンヘルム侯爵令嬢に事情を話し婚約の解消を願ったが、それが却って令嬢の嫉妬心に火をつけてしまったらしい」

「───まあ。それで……」


 それでマリアンネは最初からあれ程マルクスに近付く女生徒達を目の敵にしていたのか。

 そしてあの最初の学園での騒ぎの時に他の令嬢達が言っていた事はほぼ当たっていたという事なのかとツツェーリアは少し驚く。


「シッテンヘルム侯爵令嬢には多少同情はするが、そもそもが侯爵家が立場に物を言わせて本人抜きに婚約を決めてしまった事に問題がある。幼い頃の取り決めならいざ知らず、今我らの年齢での婚約を本人の意思も聞かず勝手に決めてしまうなど余程の事情がない限り考えられない事だからな」


「それは全くその通りだと思いますし、ハルツハイム様はお気の毒としか言いようがありません。
……けれどここまで騒がれその婚約が公になっていては、婚約解消となるとシッテンヘルム様は『傷物令嬢』となってしまいますわね」


「そうなのだ。そしてそれはブルーノ達も……、そして我らにも同じ事が言える」



 そう言ってアルベルトは少し俯き考え込んだ。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】私のことが大好きな婚約者さま

咲雪
恋愛
 私は、リアーナ・ムスカ侯爵子女。第二王子アレンディオ・ルーデンス殿下の婚約者です。アレンディオ殿下の5歳上の第一王子が病に倒れて3年経ちました。アレンディオ殿下を王太子にと推す声が大きくなってきました。王子妃として嫁ぐつもりで婚約したのに、王太子妃なんて聞いてません。悩ましく、鬱鬱した日々。私は一体どうなるの? ・sideリアーナは、王太子妃なんて聞いてない!と悩むところから始まります。 ・sideアレンディオは、とにかくアレンディオが頑張る話です。 ※番外編含め全28話完結、予約投稿済みです。 ※ご都合展開ありです。

婚約者から悪役令嬢と呼ばれた公爵令嬢は、初恋相手を手に入れるために完璧な淑女を目指した。

石河 翠
恋愛
アンジェラは、公爵家のご令嬢であり、王太子の婚約者だ。ところがアンジェラと王太子の仲は非常に悪い。王太子には、運命の相手であるという聖女が隣にいるからだ。 その上、自分を敬うことができないのなら婚約破棄をすると言ってきた。ところがアンジェラは王太子の態度を気にした様子がない。むしろ王太子の言葉を喜んで受け入れた。なぜならアンジェラには心に秘めた初恋の相手がいるからだ。 実はアンジェラには未来に行った記憶があって……。 初恋の相手を射止めるために淑女もとい悪役令嬢として奮闘するヒロインと、いつの間にかヒロインの心を射止めてしまっていた巻き込まれヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:22451675)をお借りしています。 こちらは、『婚約者から悪役令嬢と呼ばれた自称天使に、いつの間にか外堀を埋められた。』(https://www.alphapolis.co.jp/novel/572212123/891918330)のヒロイン視点の物語です。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

釣り合わないと言われても、婚約者と別れる予定はありません

しろねこ。
恋愛
幼馴染と婚約を結んでいるラズリーは、学園に入学してから他の令嬢達によく絡まれていた。 曰く、婚約者と釣り合っていない、身分不相応だと。 ラズリーの婚約者であるファルク=トワレ伯爵令息は、第二王子の側近で、将来護衛騎士予定の有望株だ。背も高く、見目も良いと言う事で注目を浴びている。 対してラズリー=コランダム子爵令嬢は薬草学を専攻していて、外に出る事も少なく地味な見た目で華々しさもない。 そんな二人を周囲は好奇の目で見ており、時にはラズリーから婚約者を奪おうとするものも出てくる。 おっとり令嬢ラズリーはそんな周囲の圧力に屈することはない。 「釣り合わない? そうですか。でも彼は私が良いって言ってますし」 時に優しく、時に豪胆なラズリー、平穏な日々はいつ来るやら。 ハッピーエンド、両思い、ご都合主義なストーリーです。 ゆっくり更新予定です(*´ω`*) 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

王太子殿下が私を諦めない

風見ゆうみ
恋愛
公爵令嬢であるミア様の侍女である私、ルルア・ウィンスレットは伯爵家の次女として生まれた。父は姉だけをバカみたいに可愛がるし、姉は姉で私に婚約者が決まったと思ったら、婚約者に近付き、私から奪う事を繰り返していた。 今年でもう21歳。こうなったら、一生、ミア様の侍女として生きる、と決めたのに、幼なじみであり俺様系の王太子殿下、アーク・ミドラッドから結婚を申し込まれる。 きっぱりとお断りしたのに、アーク殿下はなぜか諦めてくれない。 どうせ、姉にとられるのだから、最初から姉に渡そうとしても、なぜか、アーク殿下は私以外に興味を示さない? 逆に自分に興味を示さない彼に姉が恋におちてしまい…。 ※史実とは関係ない、異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

婚約破棄までの168時間 悪役令嬢は断罪を回避したいだけなのに、無関心王子が突然溺愛してきて困惑しています

みゅー
恋愛
アレクサンドラ・デュカス公爵令嬢は舞踏会で、ある男爵令嬢から突然『悪役令嬢』として断罪されてしまう。 そして身に覚えのない罪を着せられ、婚約者である王太子殿下には婚約の破棄を言い渡された。 それでもアレクサンドラは、いつか無実を証明できる日が来ると信じて屈辱に耐えていた。 だが、無情にもそれを証明するまもなく男爵令嬢の手にかかり最悪の最期を迎えることになった。 ところが目覚めると自室のベッドの上におり、断罪されたはずの舞踏会から1週間前に戻っていた。 アレクサンドラにとって断罪される日まではたったの一週間しか残されていない。   こうして、その一週間でアレクサンドラは自身の身の潔白を証明するため奮闘することになるのだが……。 甘めな話になるのは20話以降です。

処理中です...