5 / 384
第1章 エイゼル領の伯爵
第1章第003話 私が死んだあとの地球とか。
しおりを挟む
第1章第003話 私が死んだあとの地球とか。
・Side:ツキシマ・レイコ
このあと赤井さんは、私が死んだ後のいろいろを説明してくれた。
スキャナから得たデータを使ってコンピューター上に再生人格を構築できるシステムが完成するのに、さらに百五十年。
再生された人格をどう扱うかで、社会でいろいろあった。ごく少数とは言え、コンピューターの演算能力をもちネットワークに住み着く新人類だ。当然、生身の人たちとの確執が広がってった。
政治レベルでも扱いが紛糾し、法律的には再生人格の人権は法人格留りとなったため。いろいろあった後、再生人格達は、最初は月面、最終的に水星に拠点を移すことになった。
データであるが故に時間は無制限。資源とエネルギーさえあれば、地球に留まる必要すら無い、通信レベルで交流が続いていればそれでいいと。物理的には袂を分かつことにしたんだそうだ。
再生人格たちが月面で活動し始めた頃、地球の学者と共に大統一理論の完成を目指していた中で、理論の一つとして余剰次元にエネルギーを蓄えてそれを自在に出し入れする技術の可能性が示唆された。あたかも、通常のアップ/ダウンクオークから、より高エネルギーのトップ/ボトムクオークを自在に作れるようなそんな理論。
月面のクレーター一つを丸ごと使った粒子加速器で検証が進み、反物質並のエネルギー物質として完成を見ることになる。
さらに、その周囲を炭素の籠(フラーレン)で覆い、それ自体が擬似原子として振舞い、さらにそれらを連結することでエネルギーの貯蔵と演算回路を併せ持つ分子機械の集合体が開発された。これが疑似物質"マナ"である。
Mass Annihilation drive Nanosize Architecture。質量消失動力によるナノサイズ構造…なんて仰々しい訳もついている。…多分後付けだろうけど。
エネルギーそのものを質量にしているのと同じなので、生成には大量のエネルギーが必要だが。再生人格たちは拠点を水星に移し、太陽の周囲に直径三百万km幅1kmほどリングを五十年ほどかけて建造し、太陽光エネルギーでマナを大量製造して地球に輸出した。
小は体内で活動するナノマシンから、バッテリー内蔵のCPUやら家電の類いまで。大は電気駆動の航空機やらイオン推進のロケット。高密度のエネルギーを安全かつ自在に活用できるこの技術は、瞬く間に地球で普及していった。
しかし。マナが普及した地球上で、原因不明のマナの暴走で地球文明はほぼ壊滅してしまった。
一つの惑星で文明の継続を依存することの危険性を改めて確認した水星の再生人格達は、マナで作った宇宙船に自分たちのコピーを載せ、様々な恒星系に向けて送り出した。
ここまでで約千年。ともかく、海のある惑星を発見した探査船のAIによって、片っ端にテラフォーミングが行なわれ。生存環境が整った惑星から、遺伝情報から地球の生態系を再現した。
そしてちょうど現在。この星に根付いた文明が、地球でも見られたような非線形的な進歩の兆しを見せ始めている。
長く続く第二の人生を新しく始めるには、ここが一番面白い時期じゃ無いかと言うことで、私を再生した…ということだそうだ。
「…ここで赤井さんと暮らすってのは駄目なの?」
「僕も長い間でいろいろあったんだよ。開発したのはこの惑星だけじゃないし、いくつもの文明に関わってきた。このドラゴンの体は、生身の人間と距離を置くためでもあるんだ」
赤井さんが惑星を受け持ったのは、これが初めてではないらしい。というか、他の惑星にも赤井さんがいて、時間差がありながらも、データ通信をしていて意識の統合をしていると言うことらしいけど。
「人類の進歩を最初から見守るにしても。人の歴史は穏やかなスローライフだけで成り立っているわけじゃないからね。人の心をもったまま向き合っていると、耐えがたいことが多々あったんだよ」
赤井さんは、静かに目を瞑って語っている。
「またあとで話すけど、玲子君を今このタイミングで再生した理由や目的ってのはあるし、実験と観察という側面は確実にある。ただそれでも、玲子君に新しい人生を楽しんで貰いたいというのは、本心だ」
眼鏡をクイっとする。
「玲子君。人間社会で生活する以上、今後の生活が楽しい事ばかりとは保障出来ないけど。それでも生き飽きるまでは好きに生きてみるのも、また経験だよ。いつになるかはなんとも言えないけど、将来的には僕らの仲間としていろいろやって欲しいこともあるしね。深刻にならないで良いよ」
夜になってカーテンが閉められた天井の高い部屋。遅くまで死んだ後の世界についての問答が続いた。
それこそ、あの国がどうなったかとかから、あの漫画がどうなったかまで。
…休載ばかりしていたあの漫画、結局完結しなかったのね…
---------------------------------------------------------------------------
マナあたりの設定は、新田真子先生著「RUSH」あたりをインスパイアしております。掲載誌があれでしたけど、夢中で読んでました。
・Side:ツキシマ・レイコ
このあと赤井さんは、私が死んだ後のいろいろを説明してくれた。
スキャナから得たデータを使ってコンピューター上に再生人格を構築できるシステムが完成するのに、さらに百五十年。
再生された人格をどう扱うかで、社会でいろいろあった。ごく少数とは言え、コンピューターの演算能力をもちネットワークに住み着く新人類だ。当然、生身の人たちとの確執が広がってった。
政治レベルでも扱いが紛糾し、法律的には再生人格の人権は法人格留りとなったため。いろいろあった後、再生人格達は、最初は月面、最終的に水星に拠点を移すことになった。
データであるが故に時間は無制限。資源とエネルギーさえあれば、地球に留まる必要すら無い、通信レベルで交流が続いていればそれでいいと。物理的には袂を分かつことにしたんだそうだ。
再生人格たちが月面で活動し始めた頃、地球の学者と共に大統一理論の完成を目指していた中で、理論の一つとして余剰次元にエネルギーを蓄えてそれを自在に出し入れする技術の可能性が示唆された。あたかも、通常のアップ/ダウンクオークから、より高エネルギーのトップ/ボトムクオークを自在に作れるようなそんな理論。
月面のクレーター一つを丸ごと使った粒子加速器で検証が進み、反物質並のエネルギー物質として完成を見ることになる。
さらに、その周囲を炭素の籠(フラーレン)で覆い、それ自体が擬似原子として振舞い、さらにそれらを連結することでエネルギーの貯蔵と演算回路を併せ持つ分子機械の集合体が開発された。これが疑似物質"マナ"である。
Mass Annihilation drive Nanosize Architecture。質量消失動力によるナノサイズ構造…なんて仰々しい訳もついている。…多分後付けだろうけど。
エネルギーそのものを質量にしているのと同じなので、生成には大量のエネルギーが必要だが。再生人格たちは拠点を水星に移し、太陽の周囲に直径三百万km幅1kmほどリングを五十年ほどかけて建造し、太陽光エネルギーでマナを大量製造して地球に輸出した。
小は体内で活動するナノマシンから、バッテリー内蔵のCPUやら家電の類いまで。大は電気駆動の航空機やらイオン推進のロケット。高密度のエネルギーを安全かつ自在に活用できるこの技術は、瞬く間に地球で普及していった。
しかし。マナが普及した地球上で、原因不明のマナの暴走で地球文明はほぼ壊滅してしまった。
一つの惑星で文明の継続を依存することの危険性を改めて確認した水星の再生人格達は、マナで作った宇宙船に自分たちのコピーを載せ、様々な恒星系に向けて送り出した。
ここまでで約千年。ともかく、海のある惑星を発見した探査船のAIによって、片っ端にテラフォーミングが行なわれ。生存環境が整った惑星から、遺伝情報から地球の生態系を再現した。
そしてちょうど現在。この星に根付いた文明が、地球でも見られたような非線形的な進歩の兆しを見せ始めている。
長く続く第二の人生を新しく始めるには、ここが一番面白い時期じゃ無いかと言うことで、私を再生した…ということだそうだ。
「…ここで赤井さんと暮らすってのは駄目なの?」
「僕も長い間でいろいろあったんだよ。開発したのはこの惑星だけじゃないし、いくつもの文明に関わってきた。このドラゴンの体は、生身の人間と距離を置くためでもあるんだ」
赤井さんが惑星を受け持ったのは、これが初めてではないらしい。というか、他の惑星にも赤井さんがいて、時間差がありながらも、データ通信をしていて意識の統合をしていると言うことらしいけど。
「人類の進歩を最初から見守るにしても。人の歴史は穏やかなスローライフだけで成り立っているわけじゃないからね。人の心をもったまま向き合っていると、耐えがたいことが多々あったんだよ」
赤井さんは、静かに目を瞑って語っている。
「またあとで話すけど、玲子君を今このタイミングで再生した理由や目的ってのはあるし、実験と観察という側面は確実にある。ただそれでも、玲子君に新しい人生を楽しんで貰いたいというのは、本心だ」
眼鏡をクイっとする。
「玲子君。人間社会で生活する以上、今後の生活が楽しい事ばかりとは保障出来ないけど。それでも生き飽きるまでは好きに生きてみるのも、また経験だよ。いつになるかはなんとも言えないけど、将来的には僕らの仲間としていろいろやって欲しいこともあるしね。深刻にならないで良いよ」
夜になってカーテンが閉められた天井の高い部屋。遅くまで死んだ後の世界についての問答が続いた。
それこそ、あの国がどうなったかとかから、あの漫画がどうなったかまで。
…休載ばかりしていたあの漫画、結局完結しなかったのね…
---------------------------------------------------------------------------
マナあたりの設定は、新田真子先生著「RUSH」あたりをインスパイアしております。掲載誌があれでしたけど、夢中で読んでました。
93
あなたにおすすめの小説
異世界転生 剣と魔術の世界
小沢アキラ
ファンタジー
普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。
目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。
人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。
全三部構成の長編異世界転生物語。
美化係の聖女様
しずもり
ファンタジー
毒親の仕打ち、親友と恋人の裏切り、人生最悪のどん底でやけ酒を煽り何を思ったのか深夜に突然掃除を始めたら床がドンドンって大きく鳴った。
ゴメン、五月蝿かった?
掃除は止めにしよう、そう思った瞬間、床に現れた円のようなものが光りだした。
気づいたらゴミと掃除道具と一緒に何故か森の中。
地面には気を失う前に見た円が直径3メートルぐらいの大きさで光ってる。
何コレ、どうすればいい?
一方、魔王復活の兆しに聖女を召喚した王城では召喚された筈の聖女の姿が見当たらない。
召喚した手応えはあったものの目の前の床に描かれた魔法陣には誰も居ない。
もしかして召喚先を間違えた?
魔力の残滓で聖女が召喚された場所に辿り着いてみれば聖女はおらず。
それでも魔王復活は待ってはくれない。
それならば聖女を探しながら魔王討伐の旅へ見切り発車で旅する第二王子一行。
「もしかしたら聖女様はいきなり召喚された事にお怒りなのかも知れない、、、、。」
「いや、もしかしたら健気な聖女様は我らの足手まといにならぬ様に一人で浄化の旅をしているのかも知れません。」
「己の使命を理解し果敢に試練に立ち向かう聖女様を早く見つけださねばなりません。」
「もしかして聖女様、自分が聖女って気づいて無いんじゃない?」
「「「・・・・・・・・。」」」
何だかよく分からない状況下で主人公が聖女の自覚が無いまま『異世界に来てしまった理由』を探してフラリと旅をする。
ここ、結構汚れていません?ちょっと掃除しますから待ってて下さいね。掃除好きの聖女は無自覚浄化の旅になっている事にいつ気付くのか?
そして聖女を追って旅する第二王子一行と果たして出会う事はあるのか!?
魔王はどこに?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
不定期更新になります。
主人公は自分が聖女だとは気づいていません。
恋愛要素薄めです。
なんちゃって異世界の独自設定になります。
誤字脱字は見つけ次第修正する予定です。
R指定は無しの予定です。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです
青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。
混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。
もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。
「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」
思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。
その時、見知らぬ声が響く。
「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」
これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!
胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。
主に5大国家から成り立つ大陸である。
この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。
この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。
かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。
※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!)
※1話当たり、1200~2000文字前後です。
『山』から降りてきた男に、現代ダンジョンは温すぎる
暁刀魚
ファンタジー
社会勉強のため、幼い頃から暮らしていた山を降りて現代で生活を始めた男、草埜コウジ。
なんと現代ではダンジョンと呼ばれる場所が当たり前に存在し、多くの人々がそのダンジョンに潜っていた。
食い扶持を稼ぐため、山で鍛えた体を鈍らせないため、ダンジョンに潜ることを決意するコウジ。
そんな彼に、受付のお姉さんは言う。「この加護薬を飲めばダンジョンの中で死にかけても、脱出できるんですよ」
コウジは返す。「命の危険がない戦場は温すぎるから、その薬は飲まない」。
かくして、本来なら飲むはずだった加護薬を飲まずに探索者となったコウジ。
もとよりそんなもの必要ない実力でダンジョンを蹂躙する中、その高すぎる実力でバズりつつ、ダンジョンで起きていた問題に直面していく。
なお、加護薬を飲まずに直接モンスターを倒すと、加護薬を呑んでモンスターを倒すよりパワーアップできることが途中で判明した。
カクヨム様にも投稿しています。
World of Fantasia(ワールド・オブ・ファンタジア)
緋色牡丹
ファンタジー
生きる意味を見出せない三十二歳の男・山田緋色。
夏の夜、光の渦に呑まれ、彼が目を覚ましたのは――幻想の森だった。
壊れた愛車、知らない空、そして湖に浮かぶ青髪の少女。
異世界での出会いが、“止まった人生”を再び動かしていく。
異世界叙情ファンタジー、開幕──
※この小説は、小説家になろう、カクヨムにも同時掲載しています。
挿絵はAIイラストを使ったイメージ画像です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる