玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第006話 チュートリアル 誰もが一度はやりたいなんとか波

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第1章第006話 チュートリアル 誰もが一度はやりたいなんとか波

・Side:ツキシマ・レイコ

 「と言うことで、次はお待ちかねの遠慮離攻撃手段です。」

 赤井さんは、10mくらいのところに、的を用意していた。
 「まずはマイクロ波だね。要は電子レンジな訳だけど。結構拡散するので、有効距離はさほど遠くではありません。もちろん食品の加熱や下ごしらえも出来ますし、お風呂も沸かせます。猫を乾かしてはいけません」

 うーん、結構便利?
 信号に使わないのなら、確かに電子レンジくらいしか使い道無いのか。
 あと猫。なんで猫?

 「次がメーザー。マイクロ波のレーザーだね。出力は、近くなら鉄板を切れるくらいだけど、遠くなるとあまり収束させられないので、あまり貫通力は無いかな。肘から先を構造変化させて、腕の中に自由電子メーザーガンを形成します」

 なんか急にレベルが物騒な方向に…。腕の中にガンって、某赤い人みたい。

 「ん?マイクロ波だから目に見えない?」

 「出力が高ければ、放射経路の大気がプラズマ化して光るから見えるけど。ほとんど雷と大差ないかな。音もパンっと」

 見た目は結構地味かも。まぁ、もともとビームは本来地味だって、お父さんも言っていたけど。

 「最後はマナを弾体として投射するコイルガン。これは強力だよ。質量当たりのエネルギー量はまんまE=mc^2だからね。ただ、体のマナを使うので、使いすぎると体が小さくなるので注意」

 「E=mc^2って…一グラムの質量でも、完全に変換したら原爆並じゃなかったっけ?」

 体が小さくなるほど使うって、どんな破壊力ですか?
 文字通りの歩く核兵器、ここに誕生。

 「大砲とかのレベルで使うのなら、使うのはマイクログラム単位だね。これを使うにはいろいろコツがあるので後で説明します」



 電気の時と同じように、順番に手ほどきを受けた。
 まずは水の入ったコップに手のひらを向けて、ゆっくりのイメージで放射。少しすると、水面から湯気が出てきて、そのうち沸騰を始めた。試しに出力を上げるイメージでふんっとすると、ボコンっと沸騰した水がコップから飛び出した。

 「一気に沸騰させると水蒸気爆発するので、その辺の加減は注意。風呂を沸かすのはけっこう難しいよ。」

 沸騰させると泡が邪魔して、逆に水に熱が伝わりにくくなるそうだ。

 つぎにメーザーの出し方。これは手のひらと指先から打てるんだそうな。
 ちょっと離れた岩に手のひらを向けて念じる。念じるとしか言いようがないけど。
 腕の中と手首が硬くなる感じがして、先ほどの電気の訓練のように、電荷が溜まるような感じがする。ある程度溜まったところで放出するイメージをすると、パンっと軽い音がして、標的の岩の表面にパスっと白煙が上った。おおっ!なんか出た! なんか出たよ!

 …。
 ふと。両手首のところでくっつけて、その手をひねりながら脇で構えてみる。
 赤井さんが腕を組み、「ふむ」と息を吐く。私が何をしたいか分かったようだ。
 そのまま腰横に溜めのポーズを取って、一気に前に突き出し…

 パンっ!

 「カメハメハ大王、18世紀から19世紀のハワイ王国の国王」

 レッドさんが解説します。

 「…」

 「…」

 あははははは。二人で爆笑した。

 「だよね、試してみたくなるよね。分かる分るよ! あははは」

 ちなみに、この両手から打ったメーザーは、標的に命中せず、左右に散った。まぁこのポーズだとまっすぐ飛ばないよね。
 手のひらを標的に向けての、野菜な人の撃ち方の方が確実でした。当たらないことにはどうにもならない。

 小出力なら、人差し指から撃った方が簡単だった。指で鉄砲の形にしてパン。

 「レイコ・ガン…かな?」

 赤井さんが呟く。
 幽か蛇かどっちつかずなネーミングですね。


 次は本命のコイルガン。
 弾体はマナで出来た極小の針のようなもので、射出から指定した時間後にその内包するエネルギーを解放する。ミリ秒単位で爆発する時限爆弾みたいな物と赤井さんは言ってた。腕の中から飛び出すと言っても、太さは毛穴ほども無いので、手に穴が空くということも無い。

 後ろに赤井さんが付き添い、クレーターの反対側の崖を目指して試射してみたのだけど。
 最初の一発はすさまじかった。打った瞬間に目の前の空間が爆発した。

 気がついたら、赤井さんが抱き起こしてくれていた。10秒ほど気絶していたみたい。

 「悪かったね。故意に失敗して貰ったんだ」

 「…何が起きたの?」

 「弾が射出されてすぐに空気の壁で止まって、そこで爆発したんだ」

 弾が小さく軽すぎて、大気ですぐに減速してそこで爆発してしまった…とのこと。
 赤井さんも目をしばしばしている。

 「マナの身体は、それこそマグマの中でも平気だけど。さっき少し気絶したでしょ? マナの体の唯一といっていい弱点だね。」

 「熱…しゃなくて光?」

 「惜しい。答えはガンマ線。強度の放射線は、演算中のマナを阻害するんだ。僕たちはガンマ線フリーズと呼んでいるけど。玲子の体がそこから正常に復帰するかのテストも兼ねていたから、その辺は黙っていてすまないね。

 人工衛星とかも、宇宙線等で誤作動したりするという。それと同じ感じかな。

 「あとマナによる放射線は、大量だと当然生物への影響もあるから、使う場所は考えてね。今の規模なら5mくらい離れていればほぼ無害だけど、至近で爆発させると放射線障害起こすから。まぁその前に爆発でどうかなるだろうけど」

 「途中で爆発するんじゃ、マナ砲て使えないじゃん」
 「大気が邪魔なわけだから。撃つ前にメーザーで大気を加熱膨張させて道を作ってやればいい。ただ、メーザーとマナを正確な時間差で撃つ必要があるから、その辺をまずマスターしないとね」

 「自動的には出来ないの?」
 「今でもほとんど自動だけど、自分の意思である程度自在に操れるようにしておけば、いろいろ応用が利くようになるのさ。とりあえず練習だね。」

 ミリ秒単位のけっこうシビアなタイミングだと思うんだけど。
 とりあえず二十発くらい練習しただろうか。最初の五発は自分が吹っ飛び、そのあとの十発は目標に届く前に爆発したが。それ以降はなんとか狙ったところを爆発させることが出来るようになった。

 「上等々々。目標の中に食い込めば、閃光も放射線も抑えられるから。この辺は練習だね」

 目標を破壊したいのなら、中で爆発させる方がより効果が期待できるんだそうな。

 「最後に、マナの質量0.1グラムでの威力を体験しておこうか。」

 赤井さんが私を抱っこすると、背中の翼を広げた。片方で十メートルくらいありそうな巨大な翼だ。
 広げた翼がぼうと輝いた。家の前の荒野を軽く滑走しながらはばたくと、ふわっと浮き上がり、上昇していく。はばたきと速度が釣り合っていないような感じだけど、翼が輝いているのと関係があるのだろう。

 赤井さんに抱えられて五キロメートルくらい飛んだだろうか、クレーターの外の草木のほとんど無い渓谷のようなところに来た。

 「これくらいの場所で良いかな。目標はあの辺ね」

 そこから、一キロメートルほど離れたところに見える岩山の山肌指示されたので、撃ってみた。

 先に発射したメーザーの通り道が閉じるまでの間に弾着させる必要があるので、弾速はマッハ十を超える。弾の重量が0.1グラムとは言え、かなりの反動が来て、バランスを崩して尻餅をついてしまった。

 目標の岩山では、着弾地点にパスっと白い煙が昇ったと思ったら、次の瞬間に岩肌が盛り上がり、続いて亀裂から爆炎が吹き出す。潜り込んだ弾頭がうまいこと中まで届いたようだが。すごい規模の爆発だ。
 先に地面からの振動が届き、続いて大気を伝わりドカンと衝撃波がやってくる。もくもくとキノコ型の雲が昇っていく。一キロメートル離れているとはいえ、岩の破片がパラパラと降ってくる。

 雲が風に流されると、岩山の斜面には直径百メートルほどのクレーターが出来ていた。
 撃った跡として、手のひらの皮が剥けていた。

 命名、レイコ・バスター。赤井さんの命名です。

 「赤井さん、なんで私にこんな能力を?」

 「うーん。マナとは何か、使ったらどうなるか、この辺を正確に理解しておいてほしいというのが第一かな」

 その体は核物質でできているようなもの。知らずに体の一部のマナを解放でもしたら、周囲が消し飛びますし。体内で起こしたら、流石にマナの体でも無事では済みません。
 取り扱い注意ってことですね。

 「あとはまぁ。どこでもそうだけど、普通の子どもが一人で生きていくのは厳しいし。持っている知識にしろ力にしろどうしても干渉されることになる。その時に誇示できる武力があるなしで、扱いが違ってくるのは想像できるだろ?。その力を人の役に立たせるもよし、気に入らない国を吹き飛ばすもよし。その辺の裁量を君にゆだねるのも、また実験と観察の内だね」

 真剣な表情で赤井さんは言った。最悪、三千万年もかけたこの星を壊してもいいと、私に言う。

 「…あやふやですまないね。ただ、何か強制させたいとかじゃないので。したいことをしてくれればいいよ」

 まるで観察されるモルモットのようだけど。悪意は感じられないし、拒絶したいから私を停止させてくださいと言っても詮無きことなので、とりあえず置いくことにした。



 とりあえず、チュートリアル第二弾は終わり。
 個室として使わせてもらっている部屋にはお風呂もあるので入ったけど。鏡を見ると肌があちこちひどいことになっていた。 ただ、次の日の朝には多少まだらが残っているもの、ほとんど治っていた。直っていた?

 うーん、結構人間をやめてしまった感じがします。
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