玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

文字の大きさ
35 / 384
第1章 エイゼル領の伯爵

第1章第033話 六六住宅

しおりを挟む
第1章第033話 六六住宅

・Side:アイリ・エマント

 初夏なので。木の窓は閉めずに簾が網戸のように貼られているので。外が明るくなってくると日が透けて差し込んで来ます。宿屋の他の人たちも、日が昇る前から活動を始めたようで。宿泊客を起こすサービスで、順番にドアを叩いている音がします。

 まだスースーと寝ているレイコちゃんとレッドさんを起こさないようにベットから出て、簾の貼られた窓を開ける。 部屋は、一階の通りに面しているところだから、既に行き来する馬車も見える。
 なにげに、ファルリード亭に泊まるのは初めてだったりする。まぁ、ここから歩いて行けるところに住んでいるのだから当たり前だけど。
 さて。レイコちゃんを起こさないと。

 一階の各部屋の入り口は、カーラおばあさんのいるカウンターから見えるので。盗難の心配はさほど無いと思うけど。彼女のリュックは持っていった方がいいかな。宿で借りた寝間着から着替えたレイコちゃんと一緒に食堂に行きます。

 他の宿泊客は日が昇ったら動き出すので、もうこの時間だと食堂も結構空いているので、昨晩と同じ席についた。
 朝食は規定のセットが出される。まぁ、魚の炒め物のサンドイッチにスープだ。それを頼んで食べていると、タロウさんとエカテリンさんがやってきた。

 「おれ、朝飯まだなんだよ。モーラちゃん、こっちにもセットちょうだい。サンドだけ1つ追加で」

 「今朝急にこっち行けっって言われてね、私もまだなんだよ。こっちには丸ごと2セットおくれ」

 エカテリンさん、朝から健啖ですね。それだけ食べてそのプロポーションは、うらやましいです。

 エカテリンさんがここに来るとは聞いていなかったけど。レイコちゃん案件だからというのは見当がついた。案の定、今朝に臨時派遣が決まったそうだ。
 ボアを単身で狩れるレイコちゃんとレッドちゃんに護衛が必要かな?とは思ったけど。余計なトラブルを避けるためには、騎士の護衛がついている。すなわちアイズン伯爵が計らっていると知らしめるのが必要なんだそうな。

 「うーん、四人か。私はまだ六六に帰っていないのでまずそちらにと、あと教会にも顔出しておきたいんだけど、みんないい?」

 「おまかせします」

 「そういや、崖崩れで帰参が十日伸びたんだっけな。皆たぶん心配してるぞ」

 「護衛はついて行くのみ。問題ないぜ」



 道がてら、六六についてレイコちゃんに説明した。
 スラムを撤去した時、住人を収容するために、安く早く作れる住宅が考案され。木材の産地で壁板やら屋根やら床やら部品を大量に作って輸送、現地では壁を四角く組み立てて、その上に屋根を乗せればできあがり。
 その方法でもって、六人住める部屋が六つの長屋を建築。さらにそれを六棟で一区画。六区画で一町という感じで、どんどん広げていったんだそうな。

 もちろん、全室に六人押し込んでいるわけじゃにいし。六部屋のうち五部屋に住んで一部屋は共同スペースにしたり。そのへんは余裕と共に変化していったそうな。住人は、一町で八百人前後かな?
 片親の親子とか老人とか、そういうのを上手いこと混ぜて、親が働いている間の子供の面倒を見てもらったり。炊事をまとめてやることで時間や費用の節約や省力や。子供達にはお小遣いで洗濯を頼んだり等、六六の中で互助ができるような仕組みができていて。スラム街と違って治安は急激に良くなったそうだ。
 
 流石に初期の六六は安普請過ぎるけど。今は柱も立てて床板や天井だって貼られていて。内壁を綺麗に整えればなかなかに良い感じの部屋になる。
 私は、そんな六六に一部屋を借りて一人で住んでいる。六人用の部屋よりはちょっと狭いが。それでも個室なのはありがたい。ここに入るまでずっと大部屋だったからね。

 私の部屋にある六六入っていくと、井戸端会議をしていた奥さん方が駆け寄ってきた。

 「ちょっとちょっとアイリちゃん。無事だっのね? もう、心配したわよ」

 「ギルト近くで働いている人に崖崩れだって聞いたけど、? 大丈夫だったの?」

 「ユルガムルにいるときに崖崩れの一報が入って、そこで一週間ほど足止め食って、遠回りで戻ることになったので遅れましたけど。大丈夫でした」

 「えー。キャラバンが崖崩れに巻き込まれたって話が出てたわよ。しかもキャラバンの人たちが生死不明だって」

 うわー。なんか大事になってます。
 出張からの帰参予定は決まっていたけど。遅れた理由なんてそうそう伝わらないからね。

 「ああ、俺も昨日帰ったときに、近所の人に驚かれたなぁ… ギルドとか伯爵家の方には、きちんと連絡行っていたようだけど。変な噂になってしまっているな」

 タロウも心配されたようね。ギルドに帰ったときには騒ぎになっていなかったので、知らされるべき人には知らされているようだけど。流石に一人暮らしの近所まだは対象外か。

 「あら、この子はどちらの子? あら、背中のは犬…でもないわね。何かしら?」

 おばちゃん達は、私とレッドさんに気がついた。

 「レイコと申します。この子はレッドさん。いろいろ訳あってギルドでお世話になってます」

 「…あたし、そう言えば今朝、キャラバンがドラゴンに襲われたって噂を聞いたんだけど…」

 なんかいろいろ噂に尾鰭付いていますね。みながレッドさんに注目します。
 レッドさん、翼は畳んでいますが。犬には見えない顔に角は隠していない。そもそも赤いし。まぁ分りますよね。

 「クー」

 「赤竜様が飛んでいるのを見ましたけど。襲われてなんていないですよ」

 「赤竜様、本当にいるんだねぇ。私のおばあちゃんが子供のころに遠くを飛んでいるのを見たって言っていたけど…」

 「クー?」

 「…こんなに小さくてかわいいって話は聞いたことないねぇ…」

 ここで、騎士装備のエカテリンさんが居るのにも気がついたようですね
 うーん。レイコちゃんについては喋るなとは言われていないけど、積極的に風潮するのは論外だよね、どうしよう…と思っていたら。私が困った顔をしたのを見た奥さんの一人が、気を利かせてくれて話を合わせてくれた。

 「ああ、はいはいはいはい。なんか訳ありみたいね。訳あり扱いでいいのよね? 騎士様が付いているってことは、そういうことでいいのよね?アイリちゃん」

 「それでお願いします!」

 「私らの街の伯爵様は、いろいろ"持っている"と思っていたけど。今度は赤竜神さまかい。まぁ伯爵様が承知なら、むやみに騒ぐこともないんだろうね。」

 「はい。それで大丈夫かなと。私は今日はこれから用事があるので、その辺いろいろはまた今度ね」

 「はいよ。気をつけて行っておいで」

 奥さん達とは、手を振って別れた。訳ありで済ませてしまう奥さん達凄い。

 ともかく。まずは自室に旅の荷物を放り込んで、すぐに戻った。部屋の換気は、頼んでおいた隣の奥さんがしてくれたようです。あとでお土産持っていこう。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

異世界で目が覚めたら目の前で俺が死んでました。この世界でオリジナルの俺はとっくに死んでたみたいです

青山喜太
ファンタジー
主人公桜間トオル17歳は家族との旅行中、車の中ではなく突然なんの脈絡もなく遺跡の中で目が覚めてしまう。 混乱する桜間トオルの目の前にいたのは自分と瓜二つ、服装さえ一緒のもう一人の桜間トオルだった。 もう一人の桜間トオルは全身から出血し血を吐きながら、乞う。 「父さんと、母さん……妹をアカリを頼む……!!」 思わず、頷いた桜間トオルはもう一人の自分の最後を看取った。 その時、見知らぬ声が響く。 「私のことがわかるか? 13人の桜間トオル?」 これはただの高校生である桜間トオルが英雄たちとの戦争に巻き込まれていく物語

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

倒した魔物が消えるのは、僕だけのスキルらしいです

桐山じゃろ
ファンタジー
日常のなんでもないタイミングで右眼の色だけ変わってしまうという特異体質のディールは、魔物に止めを刺すだけで魔物の死骸を消してしまえる能力を持っていた。世間では魔物を消せるのは聖女の魔滅魔法のみ。聖女に疎まれてパーティを追い出され、今度は魔滅魔法の使えない聖女とパーティを組むことに。瞳の力は魔物を消すだけではないことを知る頃には、ディールは世界の命運に巻き込まれていた。

スキル【ファミレス】を使っていたら伝説になりました。

キンモクセイ
ファンタジー
スキル「ファミレス」を手にした。 ハズレスキルかと思い、主人公の思うがまま行動している。 そんな時に1人の少女と出会い、運命が変わる。

処理中です...