玲子さんは自重しない~これもある種の異世界転生~

やみのよからす

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第10章 レイコさんは自重しない

第10章第005話 御前会議へ

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第10章第005話 御前会議へ

Side:ツキシマ・レイコ

 列車は王都に着きました。
 汽車と飛行機に興奮冷めやらぬネイト陛下らロトリー国勢は、駅まで王宮から護衛付きの迎えが来て、そのまま王城の迎賓館に向かいます。アライさんもそちらへ同行、またあとで。
 乗り込む前に、車軸周りをのぞき込んだりと、ネイト殿下はなにげに馬車にも興味津々です。板バネサスは、シンプルながら効果が高いですが。いろんな取り付け方法が試行錯誤されていて。エイゼル市で使われていた物とはまたちょっと形が違うようで。そのへんが興味を引いているようです。

 私とマーリアちゃんは、御前会議への召喚…招待?ですが。先にアイズン伯爵の王都邸に向かいます。
 王都の貴族街は王宮の周囲にありますので、市街地を出るまでは同じ方向です。セレブロさんも乗れる大きめの馬車です。
 伯爵には、航海から帰ってきてからまだ伯爵には挨拶していませんでしたからね。特に事前の用事があるというわけでもありませんが。挨拶したいと連絡したら、王都邸で待つとのことです。


 パレードというわけでは無いですが。豪華な馬車二台に大勢の護衛騎士が騎乗で周囲を固めています。何度も王都に来たことのある私達の馬車はガラス窓から外が見えれば十分ですが。ネイト殿下も、窓を開けて街を見物するわけですから、目立つことこの上ない。
 駅前ですしね。歩道から立ち止まってみている人がたくさんいます。

 「え? なに?」
 「獣人? ラクーンというやつか?」
 「あの馬車の紋章…王宮のだろ? それに立派な服着ているし。ということはラクーンの貴族…王家の客なのか?」
 「それにしても…「「「かわいーっ!」」」」

 女性の見物人が黄色い声上げていますね。
 馬車には前後にもガラスが填められていて、後ろを走る私達の馬車からも、ネイト殿下の様子が見えています。
 まぁ、他国の王太子に「かわいい」と歓声上げることは、本来なら咎められるところなのでしょうが。当のネイト殿下は、彼女らに向かって手を振っています。その様子を見ていた護衛騎士も、表情を和らげるのでした。

 「レイコ…ネイト殿下のぬいぐるみとか作ったら、売れるんじゃ無いかしら?」

 アライさんのぬいぐるみはすでに王孫姫たるクリスティーナ様が持っておられますけどね。…模様はむしろパンダ柄のネイト殿下の方が簡単です。

 「ラクーンには、あまり見世物にはなって欲しくはないけど…ネイト殿下ってその辺分かって武器にしている気がする」

 「あ、わかる」

 あざといと言うほどではないですけど。自分の容姿が"人"に好まれるのは意識していると思います。アライさんも、ファルリード亭で給仕をしていたときには、女性や子供にはサービスでハグしていましたしね。
 確かに、ネイルコードでの活動にプラスになる要素でしょう。…なにげに外交能力高い方です。


 王城前にて、ネイト殿下の馬車とは別方向となります。ネイト殿下がこちらにも手を振ってくれましたので、応えておきます。
 アイズン伯爵に会うのは半年ぶり。ちょっとドキドキですね。伯爵邸の応接室で出迎えてくれました。


 「…レイコ殿、マーリア殿。それに小竜神様にセレブロ。無事の帰還なによりだ。それにしても大きくなったな」

 クックックと悪そうに笑うアイズン伯爵。もちろん今では悪意なんてカケラもないことは知ってます。
 私が大きくなったことは報告が回っていたと思いますが。私を見てすぐに分かってくれたようです。嬉しいですね。

 「ただいまです。アイズン伯爵」
 「ありがとうございます、アイズン卿」
 「ククーク」
 「あおん」

 ククっと、怖い顔をするアイズン伯爵。こちらも釣られて笑ってしまいます。
 うん。ネイルコードでの平常が戻った感じがします。

 「見違えたの、レイコ殿。簡単な話は報告を受けておるが、なんとも美人さんになって。まぁ詳しい話は御前会議でもお願いしようか。一休みしてから王宮に向かおう」

 「はい、伯爵」

 「…カラー殿のことは残念だった。病に罹る物も死者もかなり減ったのだが。看護に助力してくれた方が亡くなってしまうとは…」

 「いえ。皆さんが尽力してくれたことは知っています」

 アイズン伯爵も、ファルリード亭にはよく寄られていましたし。家に来て食事なんて事もありましたので。面識はけっこうあったと思います。


 ここ伯爵邸に一泊…とはならず。一休み後にすぐに王宮に向かうことになりました。
 馬車通いの時代なら、会議は次の日となるところですが。列車での移動なら、まだ昼前ですので、このまますぐに御前会議に向かいます。
 アイズン伯爵が王宮への馬車の中で、ここ半年のネイルコード関連の話をいろいろ楽しそうに語ってくれました。

 国内どころか、ダーコラ経由正教国までの鉄道も計画され。経済振興のご意見番たるアイズン伯爵も、エイゼル市周辺だけ見ていれば良いとは行かなくなり。鉄道で行き来が楽になったこともあって、最近は王都に詰めることが増えたそうです。

 「この歳でまたやることが増えるとはな。騎士が新しい剣を得てはしゃいでいる様な気分じゃ」

 シムシティーからA列車…って感じですか。
 いつになるかはともかく、マーリアちゃんの母国エルセニムにもダーコラから路線が計画されているそうです。なんでも、ユルガルムの西からエルセニムの北に抜けるルートが出来ないか、地形の探査をして貰っているそうで。ここの鉄道が敷設できれば、ユルガルムと正教国を直結するルートが出来ます。
 いままでは、赤井さん、赤竜神のすむ山地の東側のルートで、探査も進んでいなかったそうですが。計画が起きれば山地の路線と街道の敷設。また土木工事の出番が増えそうです。


 王城に着いたら。真っ先に王孫姫のクリスティーナ様が出迎えてくれました。
 王族が出迎え?ってなるところですが。クリスティーナ様と一緒に居るのがセレブロさんの娘であるケルちゃんも一緒です。セレブロさんは、久しぶりに親娘で過ごしてきてねってことですね。

 「お帰りなさいレイコ様、マーリア様。…レイコ様、見違えましたわ」

 「ありがとうございます、クリスティーナ様。お土産とお話は、またご一緒の時にでも」

 ロトリー国で披露した綿飴機、さっそくこちらでも工房に制作を依頼しています。まぁ高級お菓子という物ではありませんが、目新しさはあるでしょう。王城に献上する予定です。

 「ふふふ。楽しみにしていますね。にしても、王宮のモフモフ度が上がりますね。先ほど、ロトリー国の方々ともお会いしました。…ネイト殿下、素敵ですよね。危うく抱きついてしまうところでした」

 あ。これはぬいぐるみ作るぞコースだ。あのパンダ柄には魅了されますよね。
 
 「会議前にお引き留めするのも何ですから、この辺で。ケル、お母さんと一緒にテラスに行きましょう」
 「セレブロ、こっちはしばらくかかりそうだから、ゆっくりしてきなさい」
 「ガウっ」「ガウンっ」

 さっそくじゃれている二匹。追っかけていく姫様。さらに追いかけていく侍女さんと護衛。そろそろ12歳だというのにわんぱくです。


 王宮に入ると、早速会議室へ案内されました。

 「赤竜神の巫女ツキシマ・レイコ様、エルセニム国第一王女マーリア・エルセニム・ハイザート様。エイゼル市領主バッシュ・エイゼル・アイズン伯爵。ご到着です」

 陛下とアインコール殿下、カステラード殿下、大臣達。この国の首脳部はすでに揃われています。…老眼鏡付けている人も増えましたね。文官職レベルでは、皆に行き渡った感じです。
 あと、アインコール王太子殿下だけではなく、王太子嫡子にして王孫のカルタスト殿下まで列席しています。

 重鎮が揃っているところに、私達が後から入ると言うのには恐縮したのですが。皆さんは朝から会議されていたそうです。卓にはお茶が置かれています。小休止タイムでしたね。

 皆が私を見ています。お久しぶりです半年ぶりですね。…はい違いますね、私の背姿ですか?
 報告は上がっていると思うんですが。丸い目丸い口。埴輪が並んでいるのを想像してしまいましたよ。

 「いやいやいや、いろいろ聞きたいことはあるが。まずは皆の無事の帰還を言祝ぐことにしよう。レイコ・ツキシマ殿、マーリア・エルセニム・ハイザート殿。長きにわたる航海、誰一人欠くことなく戻られたこと誠に祝着。また、セイホウ王国並びロトリー国との外交への助力、ネイルコード国王として感謝いたします」

 「ありがとうございます皆さん…って、ひっ」

 立ち上がって挨拶してくださる皆さんでしたが。膝付かないで! …と叫ぶ寸前で察してくれたようです。

 「…あと。ファルリード亭のカーラ殿のことは残念だった」

 「いえ…いろいろ手配して戴いたそうで。ありがとうございました」

 「そう言ってもらえると… それでも本当に残念だった」

 感染病に対する対策は、この時代では出来ることに限りがあります。
 医療当事者へのマスクや手洗いの推奨が出来ているだけでも、この時代なら御の字でしょう。三年前から確実に罹患者は減っているようで。効果は出ているのです。

 仕方ない。仕方ない。頭の中でリピートします。

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