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第1章~2人の奇妙な関係~
密会は医務室?
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「ちょっと遅れちゃった……誰もいないか」
お昼を外に食べにいっていたあたしは、始業時間より5分くらい遅くなってしまった。
昼休みにも誰も来ていなかったことにほっとする。
誰か具合が悪くなったりしたときは、医務室に備え付けの電話からあたしの携帯にかかってくることになっている。
滅多に呼び出されることはないんだけど、たまにあるんだ。
そのためにあまり離れたところには行かないようにしている。
「よし、資料作るか」
あたしの仕事は、具合が悪くなった社員の対応はもちろんだが、いろいろな部署から頼まれている書類の整理などもある。
本当は、保健師としての仕事だけでいいのだがそれだけだとどうしても暇な時間が出てきてしまうのであたしから社長にお願いをした。
学くんは〝真面目すきじゃね?〟なんて笑ってたけど。
給料をもらう身分として、暇な時間はあまり欲しくない。
「あ、保健師さん帰ってきてたんだ」
シャーッのカーテンがあいた音がしたと思ったら、女性の声。
「あ!すいません、どこか具合でも?」
彼女はたしか、秘書室勤務の北条さんだ。
「ううん。そうじゃないの、まだぐっすり寝てるから置いといてあげてね」
シーっと口の前に指を立てて、彼女はここを出ていく。
……?
〝まだぐっすり寝てる〟と彼女は言った。
ということは、ベッドに誰かがいて。
ここで二人で寝ていたということになる。
たしかに、彼女のシャツのボタンはあいていてすこし乱れていた。
「うそ、会社で!?」
さっきの彼女が誰か社員と……。
と考えて、顔が熱くなってしまう。
それにしても、ここで寝てる人は大丈夫なのだろうか。
仕事の時間とか。
気になってしまって、そーっとカーテンをあける。
「……っ」
カーテンをあけた先に見えたのは、枕を抱き枕にして寝息を立てている学くんの姿。
「見せつけ……?」
こんなとこで、さっきの彼女と。
あたしがここに来ることをわかっているのに。
──ピリリリ
ベッド横にある小さなテーブルにあるスマホが音を鳴らしてる。
その音にあたしは、ハッとしてカーテンをしめる。
……起きてくる。
どんな顔をすればいいのかわからない。
いっそのことここから出てってしまいたい。
今、学くんと顔を合わせるなんて辛すぎる。
カーテンの向こう側からは何かを話す声が聞こえる。
かかってきた電話にでているのだろう。
あたしは、その声を気にしないようベッドに背をむけて座れるパソコンに向かう。
仕事なんて手につかないのに。
「あ、ちとせ」
カーテンを開けてでたきた学くんがあたしの名前を口にする。
「お疲れ様。仕事戻ったら?」
顔を見れなくて、パソコンの画面に向かったまま話す。
「……なんかあった?」
1度たりとも自分のことを見ないあたしを不思議に思ってか、コツコツと足音がこちらに近づいてくるのがわかる。
……自分が一番よく分かってると思うけど。
「なんもないよ。ほら、早く仕事戻った方がいいって」
すぐ近くに来ていることは知っている。
でも、学くんのことを見ると何を言ってしまうかわからない。
「おい、俺を見ろよ」
グイッと背もたれを持って椅子を回転させられて、すぐ目の前には学くんの顔。
「なんもないって……」
見つめることなんてできなくて、すぐにパッと目をそらす。
「なんなんだよ、お前」
チッと舌打ちをして、イライラしたように隣の椅子にドカっと座る。
「だから、なんも……「じゃあ、俺の目を見て言えよ!こんなんじゃ仕事に戻れねぇだろ!?」
言葉を遮って、あたしの腕を掴む。
「学くんにとってあたしはどうでもいい存在なんだから。放っておけばいいじゃない」
あまりあたしを期待させないでほしい。
どうして、あたしに構おうとするの。
「だからなんでそんなこと言うんだよ!?」
イライラしたようにあたしの両肩を掴む。
「痛い……。誰かきたら困るからとりあえず出てって……」
静かに学くんの手を外して、あたしは立ち上がる。
「くそっ……。絶対帰ったら何があったか吐かせるからな!」
苛立ちを隠せない雰囲気で、そのままバンっとドアを開けて出ていく。
お昼を外に食べにいっていたあたしは、始業時間より5分くらい遅くなってしまった。
昼休みにも誰も来ていなかったことにほっとする。
誰か具合が悪くなったりしたときは、医務室に備え付けの電話からあたしの携帯にかかってくることになっている。
滅多に呼び出されることはないんだけど、たまにあるんだ。
そのためにあまり離れたところには行かないようにしている。
「よし、資料作るか」
あたしの仕事は、具合が悪くなった社員の対応はもちろんだが、いろいろな部署から頼まれている書類の整理などもある。
本当は、保健師としての仕事だけでいいのだがそれだけだとどうしても暇な時間が出てきてしまうのであたしから社長にお願いをした。
学くんは〝真面目すきじゃね?〟なんて笑ってたけど。
給料をもらう身分として、暇な時間はあまり欲しくない。
「あ、保健師さん帰ってきてたんだ」
シャーッのカーテンがあいた音がしたと思ったら、女性の声。
「あ!すいません、どこか具合でも?」
彼女はたしか、秘書室勤務の北条さんだ。
「ううん。そうじゃないの、まだぐっすり寝てるから置いといてあげてね」
シーっと口の前に指を立てて、彼女はここを出ていく。
……?
〝まだぐっすり寝てる〟と彼女は言った。
ということは、ベッドに誰かがいて。
ここで二人で寝ていたということになる。
たしかに、彼女のシャツのボタンはあいていてすこし乱れていた。
「うそ、会社で!?」
さっきの彼女が誰か社員と……。
と考えて、顔が熱くなってしまう。
それにしても、ここで寝てる人は大丈夫なのだろうか。
仕事の時間とか。
気になってしまって、そーっとカーテンをあける。
「……っ」
カーテンをあけた先に見えたのは、枕を抱き枕にして寝息を立てている学くんの姿。
「見せつけ……?」
こんなとこで、さっきの彼女と。
あたしがここに来ることをわかっているのに。
──ピリリリ
ベッド横にある小さなテーブルにあるスマホが音を鳴らしてる。
その音にあたしは、ハッとしてカーテンをしめる。
……起きてくる。
どんな顔をすればいいのかわからない。
いっそのことここから出てってしまいたい。
今、学くんと顔を合わせるなんて辛すぎる。
カーテンの向こう側からは何かを話す声が聞こえる。
かかってきた電話にでているのだろう。
あたしは、その声を気にしないようベッドに背をむけて座れるパソコンに向かう。
仕事なんて手につかないのに。
「あ、ちとせ」
カーテンを開けてでたきた学くんがあたしの名前を口にする。
「お疲れ様。仕事戻ったら?」
顔を見れなくて、パソコンの画面に向かったまま話す。
「……なんかあった?」
1度たりとも自分のことを見ないあたしを不思議に思ってか、コツコツと足音がこちらに近づいてくるのがわかる。
……自分が一番よく分かってると思うけど。
「なんもないよ。ほら、早く仕事戻った方がいいって」
すぐ近くに来ていることは知っている。
でも、学くんのことを見ると何を言ってしまうかわからない。
「おい、俺を見ろよ」
グイッと背もたれを持って椅子を回転させられて、すぐ目の前には学くんの顔。
「なんもないって……」
見つめることなんてできなくて、すぐにパッと目をそらす。
「なんなんだよ、お前」
チッと舌打ちをして、イライラしたように隣の椅子にドカっと座る。
「だから、なんも……「じゃあ、俺の目を見て言えよ!こんなんじゃ仕事に戻れねぇだろ!?」
言葉を遮って、あたしの腕を掴む。
「学くんにとってあたしはどうでもいい存在なんだから。放っておけばいいじゃない」
あまりあたしを期待させないでほしい。
どうして、あたしに構おうとするの。
「だからなんでそんなこと言うんだよ!?」
イライラしたようにあたしの両肩を掴む。
「痛い……。誰かきたら困るからとりあえず出てって……」
静かに学くんの手を外して、あたしは立ち上がる。
「くそっ……。絶対帰ったら何があったか吐かせるからな!」
苛立ちを隠せない雰囲気で、そのままバンっとドアを開けて出ていく。
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