26 / 69
第2章~逃げ出したい気持ち~
俺が守りたい
しおりを挟む
「あら、タマちゃん!いたの!」
ここで責任者をしてる結城さんが食堂にやってくる。
「結城さん、おはよー」
「おはようってもう午後よ?」
「今日はねー、15時まで寝てた」
当たり前のことのように話すタマ。
「タマちゃん、また寝れなかった?」
結城さんが心配そうにみる。
「まぁね、寝付けたのはもう明るくなってたよ」
底抜けに明るく見えるタマだけど、どこかで闇を抱えてるのかもしれない。
「そうだ、今日の夜はみんなでちとせちゃんの歓迎会するよ!」
「え!?そんな……あたしいつまでいるかなんて分からないのに」
「いいのよ。たとえ1日だとしてもここにいるうちは家族なの」
結城さんの言う〝家族〟という言葉に胸が暖かくなった。
家族がないあたしは、家族にずっと憧れてた。
やっと家族ができたと思ったのに、家族になんかなれていなかった。
1人で舞い上がっていたんだ。
✱✱✱
......................................................
「なにしてんの?」
ちとせを元いた施設へ送り届けて、仕事が終わるような時間から会社の前で待つこと2時間。
目当ての人物がやっと出てきた。
「あまり副社長にこういうこと言いたくないんですけど、どいうつもりなんですか?」
「なにがだよ」
俺の言葉に眉を顰める。
「ちとせのことなんだと思ってるんですか?」
「は?」
ちとせの名前を出した瞬間、不機嫌な声になる。
「結婚したとか言って、してねーじゃん」
「は?なんでそれ……」
「あいつのこと傷つけるだけのつもりなら、俺が一緒にいるんで」
ちとせが同じ生徒会に入ってきて、すぐに好きになった。
仲よくなった関係を壊したくなくて、告白する勇気は待ち合わせてないけど。
でも、結婚したからもう先はないなと。
妹のように見守ろうと心に決めた。
でも、こいつがちとせを裏切ってるなら話は別だ。
「そんなの許すわけねーだろ」
俺の腕を掴んで睨みつける。
「じゃあ、ちゃんと幸せにしてやってくださいよ!」
「わかってるよ……」
副社長はそのまま、俺に背を向けて歩き出した。
「家に帰ってもいねーけどな」
ちとせはもうあの家を出た。
帰ったら誰もいない家にあいつは驚くのだろう。
あいつは、今日ちとせが会社に行ってないことも知らない様子だった。
本当にちとせのこと見てるんだろうか。
だいたいなんで婚姻届は出されてなかったのか。
そんなことをする必要がどこにあるのか。
俺らが高校の時だってそうだ。
教育実習生だったあいつは、この期間が終わったらちゃんとしようとちとせと約束をしておいて、最後の日に学校にこなかった。
あの時、ちとせがすごく泣いていたのに俺は抱きしめることしかできなくて。
何も出来ない自分がもどかしかった。
だから、もしいま傷つけようとしてるなら。
俺が守りたい。
ここで責任者をしてる結城さんが食堂にやってくる。
「結城さん、おはよー」
「おはようってもう午後よ?」
「今日はねー、15時まで寝てた」
当たり前のことのように話すタマ。
「タマちゃん、また寝れなかった?」
結城さんが心配そうにみる。
「まぁね、寝付けたのはもう明るくなってたよ」
底抜けに明るく見えるタマだけど、どこかで闇を抱えてるのかもしれない。
「そうだ、今日の夜はみんなでちとせちゃんの歓迎会するよ!」
「え!?そんな……あたしいつまでいるかなんて分からないのに」
「いいのよ。たとえ1日だとしてもここにいるうちは家族なの」
結城さんの言う〝家族〟という言葉に胸が暖かくなった。
家族がないあたしは、家族にずっと憧れてた。
やっと家族ができたと思ったのに、家族になんかなれていなかった。
1人で舞い上がっていたんだ。
✱✱✱
......................................................
「なにしてんの?」
ちとせを元いた施設へ送り届けて、仕事が終わるような時間から会社の前で待つこと2時間。
目当ての人物がやっと出てきた。
「あまり副社長にこういうこと言いたくないんですけど、どいうつもりなんですか?」
「なにがだよ」
俺の言葉に眉を顰める。
「ちとせのことなんだと思ってるんですか?」
「は?」
ちとせの名前を出した瞬間、不機嫌な声になる。
「結婚したとか言って、してねーじゃん」
「は?なんでそれ……」
「あいつのこと傷つけるだけのつもりなら、俺が一緒にいるんで」
ちとせが同じ生徒会に入ってきて、すぐに好きになった。
仲よくなった関係を壊したくなくて、告白する勇気は待ち合わせてないけど。
でも、結婚したからもう先はないなと。
妹のように見守ろうと心に決めた。
でも、こいつがちとせを裏切ってるなら話は別だ。
「そんなの許すわけねーだろ」
俺の腕を掴んで睨みつける。
「じゃあ、ちゃんと幸せにしてやってくださいよ!」
「わかってるよ……」
副社長はそのまま、俺に背を向けて歩き出した。
「家に帰ってもいねーけどな」
ちとせはもうあの家を出た。
帰ったら誰もいない家にあいつは驚くのだろう。
あいつは、今日ちとせが会社に行ってないことも知らない様子だった。
本当にちとせのこと見てるんだろうか。
だいたいなんで婚姻届は出されてなかったのか。
そんなことをする必要がどこにあるのか。
俺らが高校の時だってそうだ。
教育実習生だったあいつは、この期間が終わったらちゃんとしようとちとせと約束をしておいて、最後の日に学校にこなかった。
あの時、ちとせがすごく泣いていたのに俺は抱きしめることしかできなくて。
何も出来ない自分がもどかしかった。
だから、もしいま傷つけようとしてるなら。
俺が守りたい。
1
あなたにおすすめの小説
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
Short stories
美希みなみ
恋愛
「咲き誇る花のように恋したい」幼馴染の光輝の事がずっと好きな麻衣だったが、光輝は麻衣の妹の結衣と付き合っている。その事実に、麻衣はいつも笑顔で自分の思いを封じ込めてきたけど……?
切なくて、泣ける短編です。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
友達の肩書き
菅井群青
恋愛
琢磨は友達の彼女や元カノや友達の好きな人には絶対に手を出さないと公言している。
私は……どんなに強く思っても友達だ。私はこの位置から動けない。
どうして、こんなにも好きなのに……恋愛のスタートラインに立てないの……。
「よかった、千紘が友達で本当に良かった──」
近くにいるはずなのに遠い背中を見つめることしか出来ない……。そんな二人の関係が変わる出来事が起こる。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる