結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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第三章~真実~

そういうのが恋だよ

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「ドキドキしちゃった?」



そう聞けば、真っ赤な顔になる目の前の女の子。

男慣れしてないのは一目瞭然だった。

霧島はちとせちゃんのことが好きそうだけど、ただのお兄ちゃん的存在にしか思ってなさそうだ。



「ドキドキなんて……」


「してないの?」



恥ずかしそうに俯く彼女の顔を上に向かせる。




「え、えっと……」



たぶん、この子は



「俺のこと、好きでしょ」


「……っ」



俺の言葉にびっくしたように目を見開く。

好きにさせるようにやってきてるんだから、当然だ。



「違った?」


「好きとか、よく、わからなくて……」



ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。



「その人のことを考えたらドキドキしたり、苦しくなったり、会いたくなったり」


「……あ」


「そういうのが恋だよ」



俺の言葉にまっすぐ見つめてくる。

そのまっすぐで純真そうな瞳に自分の瞳が揺れていくのがわかる。



「学くん……」


「ん?」


「あたし、体育館で紹介された時からずっとそうです」



俺をまっすぐに見つめてそんなことを言う唇。
その唇をどうしても奪いたくなった。



「そっか」



俺は、ちとせちゃんの唇に自分の人差し指を重ねる。



「え……?」


「俺は一応いまは先生だからね」


「……あ」



かぁっと頬を赤くする。



「どうして、体育館でそんなふうになったの?」


「なんか目が合ったかもしれないって……いや!たまたま生徒たちを見ただけってのは分かってて!でも、ドキドキしちゃって……」



慌てたように顔の前でブンブンと手を振る。



「目が合ったかもじゃないよ」


「え……?」



俺の言葉に首を傾げる。



「合ったんだよ」


「……っ」



みるみるうちに真っ赤になっていく頬。



「ぷっ、真っ赤」



頬を真っ赤に染めるちとせちゃんがかわいくて。



──チュッ



気がついたら、彼女の唇に自分の唇を重ねてた。



「え!?あ!?え!?」



すぐに離れた唇だけど、ちとせちゃんの柔らかな唇の感触が残ってる。



「唇、柔らかいね」



指で唇をなぞれば、どんどんどんどん頬は赤く染まっていく。



「な、な、なんで!?」


「なんでだろうね?」



椅子に座り直して、元々やるべきだった資料まとめを始める。



「よ、よく普通で……」


「俺は大人だしね」


「……っ」



本当はこうしてからかって、からかい続けて。
最後にズタズタに傷つけたいと思ってた。

でも、向かいに座るちとせちゃんの顔が見れなくて。
資料まとめに没頭したのは言うまでもない。



「あ、あたしは高校生だし。誰かと付き合ったこともないし……簡単にだまされるし」



ホチキスの音だけが響いてた部屋の沈黙を破ったのはちとせちゃん。



「え?何、急に……」



資料から目を離して、ちとせちゃんを見れば彼女の瞳から溢れてくる大粒の涙。



「え!?泣いて……!?」



びっくりして、立ちあがって彼女の隣にいく。



さすがにびっくりした。

でも、こうして泣いてる時点で俺の目的は遂行できてるはずなのになぜだか胸はスッキリしなかった。



「な、泣くなよ」



普段から泣いてる女なんて見慣れてるから、何でもないはずだったのに。

今の俺は完全にあたふたしてしまっている。



「わかってるの……。からかわれてるってことくらい。でも……」


「うん。わかったから」



ポンポンっと頭を撫でて、ちとせちゃんの体を引き寄せる。



「ま、なぶくん?」


「からかったりなんてしてないから」



スムーズにこの言葉が出てた。



「え?」


「ちゃんと好きだから。俺も」



これは、演技だ。
俺に気持ちを向かせる作戦だと自分に言い聞かせる。



「本当?」


「あぁ、でも付き合うとか今は無理。ここの先生なわけだし。教育実習、終わったらさ。放課後にちゃんとさせて」



それから教育実習が終わるまでの一週間。
俺とちとせちゃんは、ほぼ一緒にいたと思う。

俺の復讐のために。
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