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another story ~あの彼の小話~
興味あるよ
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「霧島さんは、彼女いるんですか?」
「いや、そーいうの興味ないんで」
明らかに貴方のこと狙ってますよアピールをサラリと交わしていく目の前の男。
ここは、会社の飲み会の席。
最近、中途入社で入ってきた霧島さんの歓迎会。
なんでも、あの大手のMMコーポレーションから引き抜かれたんだとか。
課長が「すごいSEが入るぞ」ってキラキラ目を輝かせていた。
同じSEとして、信頼出来る同僚はありがたいし、残業ばかりしてる身として、少しでも負担が減るのは嬉しい。
霧島さんは、仕事はできるし、顔も端正でそれでいて、話にもまったく嫌味がない。
でも、女の子には本当に興味がなくて、こんなふうに適当にあしらっている。
そんなクールなところが人気なんだとか。
まぁ、たしかに。
チャラくて、手当り次第というよりも霧島さんみたいな男の子方が好感を持てるだろう。
「.......さん?有岡さん?」
ユラユラと肩を揺らされる感覚。
あたしの苗字だ。
有岡菜都
あたしの名前。
「.......ん.......っ!?」
目を開けてすぐにみえてきた顔にガバッと起き上がる。
「有岡さん、結構飲みすぎたみたいで。俺、同じマンションだったみたいでタクシーで一緒に帰ってきたんですけど.......」
辺りを見渡すと、あたしの家と同じ作りだけど置いているものは全くちがう。
置いてるものは少なく、シンプル。
男の人の部屋というような感じの部屋だった。
「もしかして、ここ.......」
「俺の家です」
「ご、ごめんなさい!えっと、なんてお礼をしたりらいいか!」
ソファーから降りて、慌てて霧島さんに頭を下げる。
「いいですよ、そんなに頭下げなくたって」
おかしそうに笑っている霧島さん。
いつも、会社でみるクールな霧島さんとは違って、その表情は簡単にあたしの心の中へと入ってきた。
「あ、たし、自分の家に帰りますね!」
霧島さんの彼女がこんなところを見たりしたら、勘違いさせてしまう。
「そんな、べつにいいっすよ?明日休みじゃないですか。どう見てもフラフラだし」
帰ろうとするあたしをソファーへと座らせる。
「でも、彼女とか.......」
「そんなのいないんで、気にしなくていいですよ」
そんな霧島さんのこたえに、ホッと安堵するあたしの胸。
「でも、もしも勘違いされちゃったら困るじゃないですか」
「だから誰に?そんなに嫌ならべつに帰ってもいいですよ?歩けるならですけど」
はぁっと一息つく霧島さん。
呆れられてしまったのかもしれない。
「ごめんなさい、嫌だとかじゃなくて.......迷惑かけるのが嫌で」
「俺だって、自分の部屋までに帰る途中に倒れられるのは嫌ですよ」
「すみません.......」
ここは、お言葉に甘えて、ここにいさせてもらおうと観念する。
「有岡さんって俺のひとつ上でしたよね?」
「そのはずです。霧島さん、25歳ですよね?」
「そうっす。てことは、俺が年下なんですから、敬語じゃなくていいですよ」
「え.......じゃあ、霧島さんも」
なんだか、自分だけ敬語を使わないというのも気が引ける。
それに、気兼ねなく霧島さんと話せるようになりたいだなんて思っていたりもする。
「有岡さんの方が年上なのに」
「でも、ひとつしか違わないし、ね?」
首を傾げて、彼のことを見てみる。
「じゃあ、お言葉に甘えて。普通に話しましょ」
「よかった。話しやすくなる」
単純に嬉しかった。
入社してきてから、社内で一目置かれている存在で、同じ仕事をする同士として、いままでは気になっていた。
でも、いま部屋着をきて多分だけどリラックスしている霧島さんは少しいつもと違っていて。
そんな霧島さんのことをもっと知りたいと思った。
「有岡さんって、なんか放って置けない感じだよね」
「それって年上に見えないってこと?」
「んー、たしかに見えないかも」
フッと優しく笑う霧島さんに胸がとくんと高鳴る。
きっと、この人のことを好きになる。そう思った。
「もー、ひどいなぁ」
口ではそんなふうに言いながらも、霧島さんに構われることがもう嬉しかった。
「似てるんだよね、俺の知ってる奴に」
「ん?顔が?」
「ううん、その放って置けない感じが」
「へー、それは喜んでもいいことなのかな?」
その人がどんな人かが分からないので、いいことなのかどうかの判断がつかない。
「興味あるよ、有岡さんに」
「.......え?」
返ってきた答えは、あたしの想像とはまるで違った。
「ずっと興味あったわけじゃないよ、もちろん。今、興味もった」
「.......あたしも」
霧島さんと同じ。
ずっと、霧島さんのことを気になっていたわけでもない。
でも、いまこの部屋にいる他の人も知らないパーソナルな部分を見ることができて、惹かれていた。
「これから、たまにご飯とか行こうか」
「うんっ!」
霧島さんにそう言われた一言が、すごく嬉しくて、やっぱりもうこの時には彼のことが好きだったんだと思う。
「いや、そーいうの興味ないんで」
明らかに貴方のこと狙ってますよアピールをサラリと交わしていく目の前の男。
ここは、会社の飲み会の席。
最近、中途入社で入ってきた霧島さんの歓迎会。
なんでも、あの大手のMMコーポレーションから引き抜かれたんだとか。
課長が「すごいSEが入るぞ」ってキラキラ目を輝かせていた。
同じSEとして、信頼出来る同僚はありがたいし、残業ばかりしてる身として、少しでも負担が減るのは嬉しい。
霧島さんは、仕事はできるし、顔も端正でそれでいて、話にもまったく嫌味がない。
でも、女の子には本当に興味がなくて、こんなふうに適当にあしらっている。
そんなクールなところが人気なんだとか。
まぁ、たしかに。
チャラくて、手当り次第というよりも霧島さんみたいな男の子方が好感を持てるだろう。
「.......さん?有岡さん?」
ユラユラと肩を揺らされる感覚。
あたしの苗字だ。
有岡菜都
あたしの名前。
「.......ん.......っ!?」
目を開けてすぐにみえてきた顔にガバッと起き上がる。
「有岡さん、結構飲みすぎたみたいで。俺、同じマンションだったみたいでタクシーで一緒に帰ってきたんですけど.......」
辺りを見渡すと、あたしの家と同じ作りだけど置いているものは全くちがう。
置いてるものは少なく、シンプル。
男の人の部屋というような感じの部屋だった。
「もしかして、ここ.......」
「俺の家です」
「ご、ごめんなさい!えっと、なんてお礼をしたりらいいか!」
ソファーから降りて、慌てて霧島さんに頭を下げる。
「いいですよ、そんなに頭下げなくたって」
おかしそうに笑っている霧島さん。
いつも、会社でみるクールな霧島さんとは違って、その表情は簡単にあたしの心の中へと入ってきた。
「あ、たし、自分の家に帰りますね!」
霧島さんの彼女がこんなところを見たりしたら、勘違いさせてしまう。
「そんな、べつにいいっすよ?明日休みじゃないですか。どう見てもフラフラだし」
帰ろうとするあたしをソファーへと座らせる。
「でも、彼女とか.......」
「そんなのいないんで、気にしなくていいですよ」
そんな霧島さんのこたえに、ホッと安堵するあたしの胸。
「でも、もしも勘違いされちゃったら困るじゃないですか」
「だから誰に?そんなに嫌ならべつに帰ってもいいですよ?歩けるならですけど」
はぁっと一息つく霧島さん。
呆れられてしまったのかもしれない。
「ごめんなさい、嫌だとかじゃなくて.......迷惑かけるのが嫌で」
「俺だって、自分の部屋までに帰る途中に倒れられるのは嫌ですよ」
「すみません.......」
ここは、お言葉に甘えて、ここにいさせてもらおうと観念する。
「有岡さんって俺のひとつ上でしたよね?」
「そのはずです。霧島さん、25歳ですよね?」
「そうっす。てことは、俺が年下なんですから、敬語じゃなくていいですよ」
「え.......じゃあ、霧島さんも」
なんだか、自分だけ敬語を使わないというのも気が引ける。
それに、気兼ねなく霧島さんと話せるようになりたいだなんて思っていたりもする。
「有岡さんの方が年上なのに」
「でも、ひとつしか違わないし、ね?」
首を傾げて、彼のことを見てみる。
「じゃあ、お言葉に甘えて。普通に話しましょ」
「よかった。話しやすくなる」
単純に嬉しかった。
入社してきてから、社内で一目置かれている存在で、同じ仕事をする同士として、いままでは気になっていた。
でも、いま部屋着をきて多分だけどリラックスしている霧島さんは少しいつもと違っていて。
そんな霧島さんのことをもっと知りたいと思った。
「有岡さんって、なんか放って置けない感じだよね」
「それって年上に見えないってこと?」
「んー、たしかに見えないかも」
フッと優しく笑う霧島さんに胸がとくんと高鳴る。
きっと、この人のことを好きになる。そう思った。
「もー、ひどいなぁ」
口ではそんなふうに言いながらも、霧島さんに構われることがもう嬉しかった。
「似てるんだよね、俺の知ってる奴に」
「ん?顔が?」
「ううん、その放って置けない感じが」
「へー、それは喜んでもいいことなのかな?」
その人がどんな人かが分からないので、いいことなのかどうかの判断がつかない。
「興味あるよ、有岡さんに」
「.......え?」
返ってきた答えは、あたしの想像とはまるで違った。
「ずっと興味あったわけじゃないよ、もちろん。今、興味もった」
「.......あたしも」
霧島さんと同じ。
ずっと、霧島さんのことを気になっていたわけでもない。
でも、いまこの部屋にいる他の人も知らないパーソナルな部分を見ることができて、惹かれていた。
「これから、たまにご飯とか行こうか」
「うんっ!」
霧島さんにそう言われた一言が、すごく嬉しくて、やっぱりもうこの時には彼のことが好きだったんだと思う。
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