結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ

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another story ~あの彼の小話~

付き合おっか

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正直ドキリとした。
有岡さんのこと、全然意識なんかしていなかったのに、直球できた「好き」という言葉はすんなりと俺の心の中に入り込んできた。



「付き合おっか」



ずっと誰とも築いてこなかった、恋人という関係。
この関係に初めて人をおこうとしてる。



「え!?本当に!?」



さっきまでの少し真剣な表情から、一気に笑顔をみせる。



「そんな嬉しい?」


「好きな人と付き合えて、嬉しくないなんてないよ」


「そんなもんなのか」



好きな人と付き合えた経験がない俺には、わからない喜びだった。



「好きな人1人しかいなかったんだもんね」


「そうだね」


「じゃあ、いままでの彼女は全部相手から告白されたってこと?」


「そもそも彼女いたことがない」



そういうと、有岡さんは目を見開いたまま固まった。



「おい、有岡さん?」


「あ、いやぁ.......一生分の運を使ったのかなって」


「は?俺は宝くじかなんかか?」



俺はそんな、確率で当たるようなものになったつもりはない。



「だって、あんなにみんなに人気のある霧島さんの初めての彼女になるなんて、うそみたいで」


「うそにする?」


「い、いやだ!」



俺の言葉にすごい速さで否定をしてくる様子にプッと笑ってしまう。



「ていうか、有岡さん俺の事買い被りすぎ」


「そんなことないよ。霧島さんは.......「燿って呼びなよ」



なんとなく「霧島さん」といつまでも呼ばれるのも窮屈に感じて、そう遮ってみる。



「じゃあ、燿くんで」


「いんじゃね?」



呼ばれた名前で脳裏にずっと好きだった女が浮かんできたけど、直ぐにかき消す。



「どうしていままで彼女作らなかったの?燿くんならたくさん告白もされてきたでしょ?」


「まぁ、それなりにね。でも、なんかみんな俺の顔に寄ってくるのが嫌だったんだ」



俺の事を何も知ろうともしないで「カッコイイから好き」という言葉を何度となく聞いてきた。
俺はその「カッコイイ」という言葉が大嫌いだった。



「顔がいいことを自覚してらっしゃる」


「おい、引くな。言われるだけだ」



少し後ずさりをする有岡さんの腕をつかむ。



「でも、どうしてあたしとは付き合ってくれる気になったの?」


「有岡さんが、俺のこと顔で見てないのは、ずっと一緒にいてわかってるよ」


「燿くん.......」



有岡さんと一緒に過ごすようになって、最初に感じたイメージはそのまんま。
ちとせに性格が似てるなって、最初に思って。

だからかな、あの飲み会で有岡さんのことを放っておけなかったのは。
ちとせを重ねて、一緒にいるようになったのかもしれない。



「だから、初めて彼女にしてもいいかなって思ったんだ」



ちとせ以外、彼女してもいいなんて思ったことがなかった。



「燿くんが、あたしのことをまだ好きじゃないのはちゃんと分かってるから」


「なに、遠慮しようとしてんの」


「だって、ちゃんと好きになってもらえてないのに彼女面したら嫌われるかなって」


「彼女なんだから、彼女面したらいいじゃん」



ポンっと有岡さんの頭に手を乗せる。



「嫌わない?」


「俺が付き合おっかって言ったんだよ。それに、一緒にいたいって思ってるのは俺もだから」



たしかにまだちとせを重ねてるだけで、有岡さん自身のことをちゃんと見ていない部分はある。
でも、一緒にいて、疲れないし楽しい。
そんな女はちとせ以外では初めてだった。



「あ、ちなみに経験ないわけじゃないから」


「ちょ.......っ、聞いてない!」



俺の言葉に顔を赤くする有岡さん。
絶対に顔を赤くすると思ったから言ったんだ。



「大丈夫、そんな簡単に手は出さないよ」



顔を赤くする姿が可愛くて、わしゃわしゎっと髪の毛を撫でる。



「出してくれてもいいのに.......」



そんなことを言い出す有岡さんに、俺の心臓はどくりと騒ぐ。



「おいおい、やめろって」


「やっぱり、魅力ない?」


「そうじゃないって、あーもう」



グイッと有岡さんの腕を引っ張って、彼女の唇に俺の唇を落とす。



「.......んっ」


「魅力ないとか、もう言っちゃダメだよ。俺の彼女だって自覚もって」



そう諭して、もう一度有岡さんに口付けをする。



「好きじゃなくても、できるもんなんだね」


「なんで、そんな卑屈になんの。俺、ちゃんと有岡さんのこと見てるよ」



見ようとしてる。
ちゃんと彼女のこと好きになる気がしている。



「じゃあ名前で呼んで欲しい」


「菜津」


「知ってたんだ」


「当たり前だろ。菜津、おいで」



彼女を俺の腕の中へと連れていく。



「.......んっ」



彼女は作らず、たまに体の関係を築いて。
でも、べつに手当り次第なわけでもなかった。

ただ、どうしてもちとせ以外、彼女にしたいと思ったことがなかった。

そんなことを続けてきたとき、ちとせが母親になって、子供を抱く姿をみたとき、やっと俺はちとせ離れをしようと思った。

きっと、高校生の時に出会って、家族もいない、男のことでは泣いてばかり、そんなちとせのことを俺が守ってやらなきゃっていう使命感があったんだと思う。

そして、職場を変えて知り合ったのが菜津だった。

初めてあったとき「放っておけなそうな人だな」と思った。
それが菜津の第一印象。

「放っておけない」という印象が、ちとせを思い出させた。
きっと、初めから惹かれていたんだと思う。


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