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another story②~彼らの長女の小話~
この手だけは
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「光架、ちょっと来い」
自分の部屋で本を読んでいると、お父さんがあたしの部屋までやってくる。
「え?なぁに?」
「いいから、来い」
「はぁーい」
きっともう「来い」としか言わないだろうから、聞くことはやめて、お父さんとリビングへと向かう。
「お父さん、どうし.......航!?」
リビングに入って、ソファーに座っている人物を見て、自分の目がきっと大きくなっているだろうことがわかる。
「驚きすぎ」
ふわっと大好きな笑顔で笑ってくれる。
前から優しい笑顔だったけど、最近はすべて吹っ切れたような笑顔をみせるようになった。
きっと、お母さんとお父さんのことが解決したからだろう。
さらにかっこよくなったなぁ、なんて思う。
「驚くよ、来るなんて言ってなかったもん!」
「いい加減、迷惑だから家にあがってもらった」
「いい加減?迷惑?」
お父さんの言葉に首を傾げる。
「毎日毎日.......光架との交際を認めてくださいって」
「.......え?」
航に目をやると、恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「光架のこと、どうしても認めてもらいたくて.......勝手にごめん」
「ううん.......ビックリしたけど」
航の家にいって1週間。
毎日航が家に来ていたことなんて、知らなかった。
「俺は認めるつもりなんて、なかったんだ。ライバル会社の息子となんかなんでだって.......でも、こうも毎日こられるとさすがにな」
お父さんが苦笑い。
「もう、なんでそんな考えなしなのよ.......」
なんて言いながらもやっぱり嬉しい。
好きな人が自分との未来を考えてくれているのは嬉しすぎる。
「光架の未来は絶対俺が一緒にいるってこの前決めたし、光架が俺と父さんの確執をとってくれたようたもんだから」
昔の記憶が勘違いであることがわかってから、航はお父さんとよく話し合って、お互い言いたいことが言えてなかったって結論に至ったんだって。
航のお父さんにもお母さんにも「光架ちゃんのおかげだ」って言われたけど、それは違うとあたしは思っている。
「航とお父さんがきちんと向き合った結果だよ。あたしなんて、たまたまそこにいただけ」
「.......お前、霧島に会ったのか?」
あたしたちの話を聞いていたお父さんが怪訝な顔をする。
「あ、うん.......この前家に行った時に」
「航くんのことは、何度もきているうちに、芯の通ったいいやつだと思ったし、光架のことを大切に思ってくれてるのも伝わってきた」
「お父さん.......」
「でもなぁ.......なんで、霧島んとこなんだろうなぁ」
はぁっとため息をつく。
「いままでは、父さんのことなんと言われてもいいと思ってきました。霧島の人間であることも嫌でした。でも、いまは父さんのことを尊敬してますし、霧島の家を出るつもりもありません。たとえ、交際を反対されたとしても、家は出ませんし光架のことを手放すつもりもないです」
ぎゅっとあたしの手を握る。
ハッキリと自分の考えを述べる航のこと、いままで見たことがなかったからビックリしてしまう。
お父さんと和解したことが、ここまでいい方向に向かうなんておもっていなかった。
いままでの航ももちろんいい人で、考え方もしっかりしてて。すごく好きだった。
でも、少しでもダメになりそうなとき、航は頑張ることよりも逃げることを優先していた。
そんな航がいま、お父さんに向かってくれていること。
それが嬉しくて、こころが暖まって、そして誇らしかった。
「光架、いいやつに出会ったんだな.......」
ポンポンっとあたしの頭を撫でる。
「うん、航に出会えてよかった。お父さん、あたしに、あの高校を勧めてくれてありがとう」
「あぁ、そういえば勧めたよな。森ノ宮」
お父さんに勧められて、制服をみたら可愛かったからという理由できめた志望校。
その高校で入学してすぐに航に出会って。
でも、航は人気者だったから、あたしには合わないって決めつけてあまり仲良くならないようにしていたけど、気づいたら航のペースに飲まれてて、好きになってた。
そんな航と付き合って5年。
今は大学3年生で、お互い森ノ宮の大学に通っている。
「勧めてくれてありがとうございます!ちなみにですけど、俺も父さんの勧めで入りました。不本意でしたけど」
「ふーん、あいつ.......航くんのお父さんは、生徒会長を1年からずっとやっていたよ」
「へぇ.......って、父さんの高校時代を知っているんですか?」
航が不思議に思うのも無理はない。
お父さんは、航のお父さんよりも4つもうえだから、高校はかぶらない。
「ちょうどそのころ、教育実習に行ったんだよ」
「あっ、お母さんと出会ったやつだ!」
前にお母さんとお父さんの馴れ初めを聞いた時にお母さんが言っていた。
「不本意だけど.......霧島の想いもこれでかなうのかな」
お父さんが少しだけ寂しそうな顔をする。
「お父さん?」
「お前ら、付き合うこと認めてやるから。絶対離れるんじゃねぇぞ。何があっても、大切な人の手を離すな」
そう、話すお父さんの目は少しだけ潤んでいて。
あたしたちの繋いでいる手にもすこし、力が増した。
「絶対、この手だけはなにがあっても離しません。ありがとうございます」
航くんがお父さんに向かって頭をさげる。
絶対に、ずっと離さない。
なにがあっても、絶対に一緒にいるんだとあたしの心に誓った。
─another story ①完─
自分の部屋で本を読んでいると、お父さんがあたしの部屋までやってくる。
「え?なぁに?」
「いいから、来い」
「はぁーい」
きっともう「来い」としか言わないだろうから、聞くことはやめて、お父さんとリビングへと向かう。
「お父さん、どうし.......航!?」
リビングに入って、ソファーに座っている人物を見て、自分の目がきっと大きくなっているだろうことがわかる。
「驚きすぎ」
ふわっと大好きな笑顔で笑ってくれる。
前から優しい笑顔だったけど、最近はすべて吹っ切れたような笑顔をみせるようになった。
きっと、お母さんとお父さんのことが解決したからだろう。
さらにかっこよくなったなぁ、なんて思う。
「驚くよ、来るなんて言ってなかったもん!」
「いい加減、迷惑だから家にあがってもらった」
「いい加減?迷惑?」
お父さんの言葉に首を傾げる。
「毎日毎日.......光架との交際を認めてくださいって」
「.......え?」
航に目をやると、恥ずかしそうに顔を赤くしている。
「光架のこと、どうしても認めてもらいたくて.......勝手にごめん」
「ううん.......ビックリしたけど」
航の家にいって1週間。
毎日航が家に来ていたことなんて、知らなかった。
「俺は認めるつもりなんて、なかったんだ。ライバル会社の息子となんかなんでだって.......でも、こうも毎日こられるとさすがにな」
お父さんが苦笑い。
「もう、なんでそんな考えなしなのよ.......」
なんて言いながらもやっぱり嬉しい。
好きな人が自分との未来を考えてくれているのは嬉しすぎる。
「光架の未来は絶対俺が一緒にいるってこの前決めたし、光架が俺と父さんの確執をとってくれたようたもんだから」
昔の記憶が勘違いであることがわかってから、航はお父さんとよく話し合って、お互い言いたいことが言えてなかったって結論に至ったんだって。
航のお父さんにもお母さんにも「光架ちゃんのおかげだ」って言われたけど、それは違うとあたしは思っている。
「航とお父さんがきちんと向き合った結果だよ。あたしなんて、たまたまそこにいただけ」
「.......お前、霧島に会ったのか?」
あたしたちの話を聞いていたお父さんが怪訝な顔をする。
「あ、うん.......この前家に行った時に」
「航くんのことは、何度もきているうちに、芯の通ったいいやつだと思ったし、光架のことを大切に思ってくれてるのも伝わってきた」
「お父さん.......」
「でもなぁ.......なんで、霧島んとこなんだろうなぁ」
はぁっとため息をつく。
「いままでは、父さんのことなんと言われてもいいと思ってきました。霧島の人間であることも嫌でした。でも、いまは父さんのことを尊敬してますし、霧島の家を出るつもりもありません。たとえ、交際を反対されたとしても、家は出ませんし光架のことを手放すつもりもないです」
ぎゅっとあたしの手を握る。
ハッキリと自分の考えを述べる航のこと、いままで見たことがなかったからビックリしてしまう。
お父さんと和解したことが、ここまでいい方向に向かうなんておもっていなかった。
いままでの航ももちろんいい人で、考え方もしっかりしてて。すごく好きだった。
でも、少しでもダメになりそうなとき、航は頑張ることよりも逃げることを優先していた。
そんな航がいま、お父さんに向かってくれていること。
それが嬉しくて、こころが暖まって、そして誇らしかった。
「光架、いいやつに出会ったんだな.......」
ポンポンっとあたしの頭を撫でる。
「うん、航に出会えてよかった。お父さん、あたしに、あの高校を勧めてくれてありがとう」
「あぁ、そういえば勧めたよな。森ノ宮」
お父さんに勧められて、制服をみたら可愛かったからという理由できめた志望校。
その高校で入学してすぐに航に出会って。
でも、航は人気者だったから、あたしには合わないって決めつけてあまり仲良くならないようにしていたけど、気づいたら航のペースに飲まれてて、好きになってた。
そんな航と付き合って5年。
今は大学3年生で、お互い森ノ宮の大学に通っている。
「勧めてくれてありがとうございます!ちなみにですけど、俺も父さんの勧めで入りました。不本意でしたけど」
「ふーん、あいつ.......航くんのお父さんは、生徒会長を1年からずっとやっていたよ」
「へぇ.......って、父さんの高校時代を知っているんですか?」
航が不思議に思うのも無理はない。
お父さんは、航のお父さんよりも4つもうえだから、高校はかぶらない。
「ちょうどそのころ、教育実習に行ったんだよ」
「あっ、お母さんと出会ったやつだ!」
前にお母さんとお父さんの馴れ初めを聞いた時にお母さんが言っていた。
「不本意だけど.......霧島の想いもこれでかなうのかな」
お父さんが少しだけ寂しそうな顔をする。
「お父さん?」
「お前ら、付き合うこと認めてやるから。絶対離れるんじゃねぇぞ。何があっても、大切な人の手を離すな」
そう、話すお父さんの目は少しだけ潤んでいて。
あたしたちの繋いでいる手にもすこし、力が増した。
「絶対、この手だけはなにがあっても離しません。ありがとうございます」
航くんがお父さんに向かって頭をさげる。
絶対に、ずっと離さない。
なにがあっても、絶対に一緒にいるんだとあたしの心に誓った。
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