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第11話 ふたりの白蛇様
しおりを挟む「⋯⋯!!!」
硬直して動けない黒尾を無理やり引っ張り、白月はこの場から逃走しようとした。
しかし。
「――っ、しまった、結界が⋯⋯!」
帰り道はどす黒い霧に覆われ、まるで壁に閉じ込められたように、ふたりはその先へ進めなかった。
「愚かな白蓮から受け継いだ強き妖力の賜物だ。お前に破壊できまい」
長い尾が地を打ち、口が裂けるように開くと、牙の間から蛇の舌が覗く。
「黒尾鷹矢⋯⋯お前が黒尾鷹寿の孫というのはすぐに気付いたよ」
白崎――いや、白陽は低く、どこまでも響く声で嘲笑った。
「う゛⋯⋯っ、がはっ、なんだ⋯⋯?」
黒尾は膝をついた。
白陽に睨まれた瞬間、突如押し寄せる頭痛と吐き気、鼻からは血が滴りはじめた。
その様子を見下ろし、白陽は嘲るように言葉を続ける。
「白蛇族を狩り、辱め、祟りだと恐れたくせに、こうして興味本位で我らの土地に足を踏み入れる。いい加減己の愚かさを知れ!」
白陽の瞳は怒りと憎悪に燃えていた。
「それでいて『ホラー』や『心霊』だと? 果てには承認欲求にまみれた動画配信者まで押し寄せて……我らを侮辱にするのも大概にしろ⋯⋯!」
彼の声に合わせるように、地面が震え、木々が軋む音を立てる。
「お前たち人間は醜い。どこまでも傲慢で」
黒尾は意識が遠のきそうになるのを必死に堪える。彼の中では、頭が割れそうなほどの呪詛が絶えず反響していた。
「苦しいだろう。"白蛇の呪い"だ。こうして苦しめながら、何匹もの人間を気狂いにしてやった」
白陽の尾が地を叩き、紫色の結界がさらに強く輝く。結界の呪いはますます黒尾を苦しめ、彼は完全に地面に倒れ込んだ。
「やめろ!」
叫びと共に、白月が黒尾の前に立ちはだかった。彼の体が青白く光を帯びると、全身が白い鱗に覆われ、長い尾を持つ巨大な大蛇の姿へと変わっていく。
「鷹矢は悪い人間じゃない! この結界を解け!」
白月の声は低く、燃える怒りが滲んでいた。彼の尾が白陽を牽制するように揺れ、鋭い牙を剥き出しにする。
「お前人間に毒されているな。愚かな白蓮のように」
白陽が侮蔑を露わに睨みつけると、白月は低く唸り声を上げた。
「鷹矢は⋯⋯僕にとって唯一無二の存在だ。どれほど愚かでも、僕は彼を守る!」
白陽が高笑いした。
「馬鹿げている! お前はこの哀れな人間のために命を投げ出すのか!」
白陽は吠え、尾を振り上げて白月に襲いかかる。
大蛇同士の尾がぶつかり合い、激しい音を立てる。木々が薙ぎ倒され、地面が裂ける。その衝撃に、黒尾はさらに身を縮めざるを得なかった。
白月は鋭い牙で白陽の鱗を噛み、尾で絡みつこうとする。一方、白陽もまた鋭い爪と牙で白月を狙う。二匹の大蛇がぶつかり合い、祠の周囲は一瞬にして戦場と化した。
その最中、黒尾は必死に意識を保ち、なんとか声を振り絞る。
「やめろ⋯⋯やめてくれ⋯⋯!」
白月はその声に振り返り、一瞬気を取られた。その隙を逃さず、白陽の尾が白月を弾き飛ばした。
「愚かな雑魚め……この人間を始末したらお前も後を追わせてやる」
白陽の牙が黒尾に向かって迫る。
「やめろ……!」
白月が再び立ち上がり、全身を震わせて飛びかかる。己より一回りも大きな相手に、彼は果敢にも飛びかかった。
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