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婚前旅行編
俺様御曹司の執着愛 1
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「わかった。じゃあ、トイレだけはついてこないで。それならいいよ」
「常々疑問に思っているのだが、なぜおまえは用を足すところを見せたがらないんだ?」
「当たり前でしょ! ふつうは恋人同士でもそんなところを見たいなんてことにならないよ。瑛司がどうかしてるよ」
「世間一般の常識は関係ない。俺たちふたりの問題だ。愛するおまえのどんな姿でも目に収めたいと思うのは当然だろう」
瑛司が私を愛してくれているゆえなのはとてもよくわかるし、嬉しいのだけれど、たとえ婚約者であっても見せられない恥ずかしい姿が私にはある。それを俺様の瑛司相手に言葉で説得するのは難しそうだ。というより、一生かかっても説得できる気がしない。
果てしなくループしそうな議論を打ち切るべく、私はひとまず了承した。
「わかったから。とりあえずトイレのときは、ドア越しに小指をくっつけていればいいよね?」
「いいだろう」
瑛司は不満そうに眉をひそめたけれど、寛大に許可してもらえた。
けれど、無事に済まないことは私の経験則上、承知している。
繋がれた手が、ぎゅっと握りしめられるのを、私は頬を引き攣らせながら受け止めた。
◆◆◆◆◆
水上ヴィラへ入室すると、キングサイズのベッドや窓からのラグーンを目を輝かせて眺めていた瑞希に、ひと声かけた。
「では早速、水着に着替えよう。ヴィラからすぐに海へ入れるぞ。華麗な熱帯魚たちがおまえを待っている」
俺は口端を引き上げながら瑞希に着替えを促す。
譲歩されたと思っているらしいが、甘いな。
俺の執着愛を見くびるなよ。
二十一年もの間、密かに愛し続けて、ようやく花嫁にすることができた女を小指の先だけ触れて満足できると思っているのか。本音を言えば骨までしゃぶりたいくらいだ。
はっきり言って飛行機は苦行だった。
機内でキスしようとしたら、「キャビンアテンダントさんが見てるでしょ」などという、わけのわからない理由で拒絶。
プライベートジェット機なので、スタッフはすべて大島家が契約している航空会社の社員だ。雇っているスタッフが見ているから、どうしたというのだ。見せつけてやればいいだろうに。
あまり強く迫ると旅行中に機嫌を損ねられては困るので、そこは引いておいてやったが。
いついかなるときでも愛する女には触れていたい。
手を繫いでキスをして、裸になって抱き合いたい。当然だろう。愛しているのだから。
人目があるところでは仕方ないのでキスまでに留めるが、それでも瑞希は困った顔をする。そんなところも可愛いが。
ようやくふたりきりになれたのだから、早速ベッドで抱きたい。
しかし到着するなりそんなことをすれば、せっかく海外旅行に来たのにと文句を言われることは必至だろう。どうにか前座のイベントをこなして、本題に持っていきたいところだ。
案の定、瑞希は訝しげな目線を向けてきた。
俺の提案に悪い企みでもあるのかと疑っているのだな。
そのとおりだ。
近頃、鋭くなってきたじゃないか。
繋いでいた手を、ふいに解放してやる。突然のことに瑞希は目を瞬かせた。
だが足を絡めているので、肌は触れている。
俺はその状態のまま、スタッフが運び入れていた瑞希のスーツケースを開けて水着を探った。
「ちょっと待って! それ私のスーツケース!」
「そんなことはわかっている。あの水着はどこだ?」
横から瑞希が手を出してきて、俺の腕を押しやろうとした。スーツケースを前にして足を絡めながら、揉み合いになる。おまえの服を俺が管理して何かおかしいのか?
「瑛司が買ってくれたピンクのビキニのこと? あれね、ちょっと大胆すぎるから、今回はいつも着てるほうの水着にするね」
「あの一切の色気と露出のないウェットスーツのような水着のことか? しかも色は黒だったな」
「日焼けしたくないから、あれでいいの! ……あれ? ない……ここに入れたと思ったのに……」
瑞希は首を捻りながら、水着を入れた袋の中を探っている。そこには俺が贈ったピンク色のビキニしかない。
当然だ。出立直前に、ウェットスーツもどきの水着は抜いておいたからな。
そうなると選択肢はふたつのみ。
ビキニを着るか、裸で泳ぐか。
俺は裸でも一向に構わない。俺しか見ないのだから何も問題はない。
悪い男の笑みを刻みながら、まだ水着を捜している瑞希に問いかける。
「どうやら忘れてきたようだな。いっそ裸で泳ぐか? 太陽のもとで裸身を晒すおまえの姿は、きっと女神よりも美しいだろうな」
「女神とか、私がそんな美人のわけないじゃない。……ビキニ着るね……」
瑞希は唇を尖らせながら上目遣いをして、ビキニを手にした。
拗ねた顔も可愛いな。
「常々疑問に思っているのだが、なぜおまえは用を足すところを見せたがらないんだ?」
「当たり前でしょ! ふつうは恋人同士でもそんなところを見たいなんてことにならないよ。瑛司がどうかしてるよ」
「世間一般の常識は関係ない。俺たちふたりの問題だ。愛するおまえのどんな姿でも目に収めたいと思うのは当然だろう」
瑛司が私を愛してくれているゆえなのはとてもよくわかるし、嬉しいのだけれど、たとえ婚約者であっても見せられない恥ずかしい姿が私にはある。それを俺様の瑛司相手に言葉で説得するのは難しそうだ。というより、一生かかっても説得できる気がしない。
果てしなくループしそうな議論を打ち切るべく、私はひとまず了承した。
「わかったから。とりあえずトイレのときは、ドア越しに小指をくっつけていればいいよね?」
「いいだろう」
瑛司は不満そうに眉をひそめたけれど、寛大に許可してもらえた。
けれど、無事に済まないことは私の経験則上、承知している。
繋がれた手が、ぎゅっと握りしめられるのを、私は頬を引き攣らせながら受け止めた。
◆◆◆◆◆
水上ヴィラへ入室すると、キングサイズのベッドや窓からのラグーンを目を輝かせて眺めていた瑞希に、ひと声かけた。
「では早速、水着に着替えよう。ヴィラからすぐに海へ入れるぞ。華麗な熱帯魚たちがおまえを待っている」
俺は口端を引き上げながら瑞希に着替えを促す。
譲歩されたと思っているらしいが、甘いな。
俺の執着愛を見くびるなよ。
二十一年もの間、密かに愛し続けて、ようやく花嫁にすることができた女を小指の先だけ触れて満足できると思っているのか。本音を言えば骨までしゃぶりたいくらいだ。
はっきり言って飛行機は苦行だった。
機内でキスしようとしたら、「キャビンアテンダントさんが見てるでしょ」などという、わけのわからない理由で拒絶。
プライベートジェット機なので、スタッフはすべて大島家が契約している航空会社の社員だ。雇っているスタッフが見ているから、どうしたというのだ。見せつけてやればいいだろうに。
あまり強く迫ると旅行中に機嫌を損ねられては困るので、そこは引いておいてやったが。
いついかなるときでも愛する女には触れていたい。
手を繫いでキスをして、裸になって抱き合いたい。当然だろう。愛しているのだから。
人目があるところでは仕方ないのでキスまでに留めるが、それでも瑞希は困った顔をする。そんなところも可愛いが。
ようやくふたりきりになれたのだから、早速ベッドで抱きたい。
しかし到着するなりそんなことをすれば、せっかく海外旅行に来たのにと文句を言われることは必至だろう。どうにか前座のイベントをこなして、本題に持っていきたいところだ。
案の定、瑞希は訝しげな目線を向けてきた。
俺の提案に悪い企みでもあるのかと疑っているのだな。
そのとおりだ。
近頃、鋭くなってきたじゃないか。
繋いでいた手を、ふいに解放してやる。突然のことに瑞希は目を瞬かせた。
だが足を絡めているので、肌は触れている。
俺はその状態のまま、スタッフが運び入れていた瑞希のスーツケースを開けて水着を探った。
「ちょっと待って! それ私のスーツケース!」
「そんなことはわかっている。あの水着はどこだ?」
横から瑞希が手を出してきて、俺の腕を押しやろうとした。スーツケースを前にして足を絡めながら、揉み合いになる。おまえの服を俺が管理して何かおかしいのか?
「瑛司が買ってくれたピンクのビキニのこと? あれね、ちょっと大胆すぎるから、今回はいつも着てるほうの水着にするね」
「あの一切の色気と露出のないウェットスーツのような水着のことか? しかも色は黒だったな」
「日焼けしたくないから、あれでいいの! ……あれ? ない……ここに入れたと思ったのに……」
瑞希は首を捻りながら、水着を入れた袋の中を探っている。そこには俺が贈ったピンク色のビキニしかない。
当然だ。出立直前に、ウェットスーツもどきの水着は抜いておいたからな。
そうなると選択肢はふたつのみ。
ビキニを着るか、裸で泳ぐか。
俺は裸でも一向に構わない。俺しか見ないのだから何も問題はない。
悪い男の笑みを刻みながら、まだ水着を捜している瑞希に問いかける。
「どうやら忘れてきたようだな。いっそ裸で泳ぐか? 太陽のもとで裸身を晒すおまえの姿は、きっと女神よりも美しいだろうな」
「女神とか、私がそんな美人のわけないじゃない。……ビキニ着るね……」
瑞希は唇を尖らせながら上目遣いをして、ビキニを手にした。
拗ねた顔も可愛いな。
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