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第4章 国主編
第153話 キエフの戦い ~モンゴルの第2次ルーシ侵攻~
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モンゴル帝国のルーシ南部に対する第2次ルーシ侵攻が始まった。
ルーシ南部の有力諸侯であるチェルニゴフ公ミハイルがリトアニア人に対する遠征のためにガーリチへ出征している最中、モンゴル軍は、チェルニゴフ公国南西のペレヤースラウ公国のペレヤースラウを陥落させ、モンゴル軍により虐殺、強姦、略奪、破壊の限りを尽くされた。
モンゴル軍は力押しのイメージがあるが、徹底した諜報活動を行うことも、その強さの秘密であった。
モンゴル軍はあらかじめ情報を得て、明らかにチェルニゴフ公ミハイルがペレヤースラウ公国を援助できない隙を狙ったのである。
その後、モンゴル軍は、チェルニゴフ公国領とステップとの境界線に出現し、チェルニゴフ公国領へも侵入するに至る。
首都チェルニゴフは包囲されたが、チェルニゴフの封鎖を解くべく対陣したのはミハイルの従兄弟のノヴゴロド・セヴェルスキー公ムスチスラフであった。
このようにモンゴルに服従した者を最前線に送り込むこともモンゴル軍の常套手段であり、その強さの一端でもあった。
チェルニゴフは包囲戦の末に陥落し、チェルニゴフ公国とその分領公国の、少なくない数の公が殺害された。
チェルニゴフの町はやはりモンゴル軍により虐殺、強姦、略奪、破壊の限りを尽くされた。
チェルニゴフ公ミハイルはチェルニゴフを脱し、ハンガリー王国へと至り、ハンガリー王ベーラⅣ世からの援軍派遣を画策するが実を結ぶことはなかった。彼は数年後にモンゴル軍に殺されることになる。
これによりルーシの有力国家が2つ滅ぼされた。
◆
ロートリンゲン公フリードリヒは、今回もアークバンパイアであるローラの眷属の一人、ラウラ・ロルツィングに対し、戦況の視察を命じていた。
普通に徒歩での旅は無理なので、いつもどおり魔女のイゾベル・ゴーディが箒に乗せて飛んでいく。
ラウラは言った。
「今回の戦いも情報戦を制した方が有利ということを示していますね。モンゴル軍は力押しのイメージがありますが、諜報活動の方もバカにはできません」
「まったくそのとおりだな。あたいたちも責任重大ってことだな」
「しかし、ラウラもあれだけ悲惨な虐殺を見せられても平気になったんじゃないのか?」
「さすがに、もう何度も見ていますから慣れてきました。人としてどうかとは思いますが…」
◆
ハールィチ・ヴォルィーニ公のダヌィーロ・ロマーノヴィチは長年にわたり、ルーシ南部の覇権を巡り、チェルニゴフ公ミハイルとライバル関係にあった。
ダヌィーロは、チェルニゴフの陥落に乗じ、キエフ大公位にあったロスチスラフを追い払うと、キエフへ入城し、キエフ大公位の地位を奪った。
その後、モンゴル軍はキエフの対岸のドニエプル川左岸に至ると、キエフに降伏を迫った。
しかし、ダヌィーロはキエフには留まらず、軍事司令官のドミトルに防衛を任せ、自らは本拠地であるガーリチへ籠った。
モンゴル軍はキエフを包囲し、キエフの明け渡しを求めた。
キエフ軍を引率するドミトルとキエフの市民が降伏を却下して防衛に備えた。
モンゴル軍は、諜報活動により弱点と判明していたポーランド門に32の投石機を集中させ、これを攻撃・破壊すると、一斉に市内へ乱入した。
キエフの市民は懸命に攻撃を防いだが、多勢に敵わずして什一聖堂へ撤退し、教会を最後の砦とした。
モンゴル軍は、再び投石機を取り寄せて聖堂を破壊すると、これに乱入した。
ラウラとイゾベルが上空から観察していると、兵を叱咤激励しながら獅子奮迅の活躍をしている男がいる。男の行くところ血の花が咲き乱れている。
イゾベルが聞いた。
「誰だ。あれは? あれだけ戦えるって暗黒騎士団なみだぞ」
「あれは軍事司令官のドミトルですね」
「そうか。さすが軍事司令官ともなると違うんだな…」
結局、ドミトルは部下の兵を人質にとられ、観念してモンゴル軍の捕虜となった。
モンゴル軍は聖ソフィア聖堂をはじめキエフの教会と貴族の屋敷を略奪した。
合戦後、5万人だったキエフの人口は2千人まで減少した。
キエフの陥落によりルーシは事実上亡国となった。
◆
キエフ陥落の後、捕虜となったドミトルは、モンゴル軍の総司令官バトゥの前に引き立てられた。
ドミトルは忠告した。
「この地には長く留らないことだな。もし進軍をためらうならば、モンゴル軍はこの地で組織だった抵抗を受けることになるだろう」
バトゥは思った。
聞くところによると、南ルーシの地は長年にわたり抗争が繰り広げられてきた地だ。モンゴル軍を撃退するためならば、手を組むことをためらわないだろう。
──なかなか的確な助言ではないか…
結局、ドミトルはバトゥに防衛戦での勇敢さを賞賛され、命を助けられた。
◆
これによりモンゴル軍はルーシ諸国をほぼ掌握した。
この先にあるのはヨーロッパだ。
ジュチウルスの総司令官バトゥは考えるのだ。
ジュチウルスは、モンゴルの本拠地から最も遠い地を任されているが、これは取りも直さず、モンゴル中央への影響力も行使し難い地にあるということを意味している。
モンゴル帝国の大ハーンは、クリルタイによって決められるが、実際には候補者のそれぞれの実力がものを言う世界である。
その意味でバトゥやその子孫が大ハーンになることは、地政学的にまず不可能であることは明らかだ。
──ならば、我々は自分の好きなようにさせてもらおう。
バトゥは、モンゴル帝国のためというよりは、ジュチウルスの利益を追求するため、「地果て海尽きるところ」まで征服を続けることを決意した。
そして、いよいよモンゴル軍は、ハールィチ・ヴォルィーニの地で二手に分かれ、ポーランドとハンガリーとへと侵攻していくことになるのだった。
ルーシ南部の有力諸侯であるチェルニゴフ公ミハイルがリトアニア人に対する遠征のためにガーリチへ出征している最中、モンゴル軍は、チェルニゴフ公国南西のペレヤースラウ公国のペレヤースラウを陥落させ、モンゴル軍により虐殺、強姦、略奪、破壊の限りを尽くされた。
モンゴル軍は力押しのイメージがあるが、徹底した諜報活動を行うことも、その強さの秘密であった。
モンゴル軍はあらかじめ情報を得て、明らかにチェルニゴフ公ミハイルがペレヤースラウ公国を援助できない隙を狙ったのである。
その後、モンゴル軍は、チェルニゴフ公国領とステップとの境界線に出現し、チェルニゴフ公国領へも侵入するに至る。
首都チェルニゴフは包囲されたが、チェルニゴフの封鎖を解くべく対陣したのはミハイルの従兄弟のノヴゴロド・セヴェルスキー公ムスチスラフであった。
このようにモンゴルに服従した者を最前線に送り込むこともモンゴル軍の常套手段であり、その強さの一端でもあった。
チェルニゴフは包囲戦の末に陥落し、チェルニゴフ公国とその分領公国の、少なくない数の公が殺害された。
チェルニゴフの町はやはりモンゴル軍により虐殺、強姦、略奪、破壊の限りを尽くされた。
チェルニゴフ公ミハイルはチェルニゴフを脱し、ハンガリー王国へと至り、ハンガリー王ベーラⅣ世からの援軍派遣を画策するが実を結ぶことはなかった。彼は数年後にモンゴル軍に殺されることになる。
これによりルーシの有力国家が2つ滅ぼされた。
◆
ロートリンゲン公フリードリヒは、今回もアークバンパイアであるローラの眷属の一人、ラウラ・ロルツィングに対し、戦況の視察を命じていた。
普通に徒歩での旅は無理なので、いつもどおり魔女のイゾベル・ゴーディが箒に乗せて飛んでいく。
ラウラは言った。
「今回の戦いも情報戦を制した方が有利ということを示していますね。モンゴル軍は力押しのイメージがありますが、諜報活動の方もバカにはできません」
「まったくそのとおりだな。あたいたちも責任重大ってことだな」
「しかし、ラウラもあれだけ悲惨な虐殺を見せられても平気になったんじゃないのか?」
「さすがに、もう何度も見ていますから慣れてきました。人としてどうかとは思いますが…」
◆
ハールィチ・ヴォルィーニ公のダヌィーロ・ロマーノヴィチは長年にわたり、ルーシ南部の覇権を巡り、チェルニゴフ公ミハイルとライバル関係にあった。
ダヌィーロは、チェルニゴフの陥落に乗じ、キエフ大公位にあったロスチスラフを追い払うと、キエフへ入城し、キエフ大公位の地位を奪った。
その後、モンゴル軍はキエフの対岸のドニエプル川左岸に至ると、キエフに降伏を迫った。
しかし、ダヌィーロはキエフには留まらず、軍事司令官のドミトルに防衛を任せ、自らは本拠地であるガーリチへ籠った。
モンゴル軍はキエフを包囲し、キエフの明け渡しを求めた。
キエフ軍を引率するドミトルとキエフの市民が降伏を却下して防衛に備えた。
モンゴル軍は、諜報活動により弱点と判明していたポーランド門に32の投石機を集中させ、これを攻撃・破壊すると、一斉に市内へ乱入した。
キエフの市民は懸命に攻撃を防いだが、多勢に敵わずして什一聖堂へ撤退し、教会を最後の砦とした。
モンゴル軍は、再び投石機を取り寄せて聖堂を破壊すると、これに乱入した。
ラウラとイゾベルが上空から観察していると、兵を叱咤激励しながら獅子奮迅の活躍をしている男がいる。男の行くところ血の花が咲き乱れている。
イゾベルが聞いた。
「誰だ。あれは? あれだけ戦えるって暗黒騎士団なみだぞ」
「あれは軍事司令官のドミトルですね」
「そうか。さすが軍事司令官ともなると違うんだな…」
結局、ドミトルは部下の兵を人質にとられ、観念してモンゴル軍の捕虜となった。
モンゴル軍は聖ソフィア聖堂をはじめキエフの教会と貴族の屋敷を略奪した。
合戦後、5万人だったキエフの人口は2千人まで減少した。
キエフの陥落によりルーシは事実上亡国となった。
◆
キエフ陥落の後、捕虜となったドミトルは、モンゴル軍の総司令官バトゥの前に引き立てられた。
ドミトルは忠告した。
「この地には長く留らないことだな。もし進軍をためらうならば、モンゴル軍はこの地で組織だった抵抗を受けることになるだろう」
バトゥは思った。
聞くところによると、南ルーシの地は長年にわたり抗争が繰り広げられてきた地だ。モンゴル軍を撃退するためならば、手を組むことをためらわないだろう。
──なかなか的確な助言ではないか…
結局、ドミトルはバトゥに防衛戦での勇敢さを賞賛され、命を助けられた。
◆
これによりモンゴル軍はルーシ諸国をほぼ掌握した。
この先にあるのはヨーロッパだ。
ジュチウルスの総司令官バトゥは考えるのだ。
ジュチウルスは、モンゴルの本拠地から最も遠い地を任されているが、これは取りも直さず、モンゴル中央への影響力も行使し難い地にあるということを意味している。
モンゴル帝国の大ハーンは、クリルタイによって決められるが、実際には候補者のそれぞれの実力がものを言う世界である。
その意味でバトゥやその子孫が大ハーンになることは、地政学的にまず不可能であることは明らかだ。
──ならば、我々は自分の好きなようにさせてもらおう。
バトゥは、モンゴル帝国のためというよりは、ジュチウルスの利益を追求するため、「地果て海尽きるところ」まで征服を続けることを決意した。
そして、いよいよモンゴル軍は、ハールィチ・ヴォルィーニの地で二手に分かれ、ポーランドとハンガリーとへと侵攻していくことになるのだった。
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