【完結】魂の片割れを喪った少年

夜船 紡

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本編

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俺はカイン。父は村の門番をやっていて、母は家で洗濯や家事、後内職をしている、ごくごく普通の平民家族だ。

父と母はつがいだという。
番とは神様に祝福された魂の片割れ同士らしい。
それがわかるのは、結婚する際に教会で強い光がさすんだって。
神様からのお祝いだって言われ出るんだって。
それもあってか、父も母もとても仲がいい。
番がわかるのは、結婚だけではないらしい。
俺の種族・・・人間はわからないけれど、獣人や、魔人とか別の生き物の混じり気のある種族は自分の番に気付くことが出来るんだって。

俺も、いつか、母さんや父さんみたいに夫婦になれるのかな?


ある日、空き家だった隣に獣人の一家が引っ越してきた。
ふわふわっとした耳、もふもふっとした尻尾をもった女の子。
可愛らしい子だった。
その子が俺を見て、そして駆け寄ってこう言った。

「見つけた、私の番・・・」

俺はビックリして、

「なんだよ!知らないよっ、お前なんか!!」

彼女を拒絶して突き飛ばした。

「あ・・・」

彼女は後ろにコケて、そして哀しそうな目をこちらに向けた。
その目に耐えきれなくて俺は逃げ出してしまった。



彼女の名前はマリーヌ。
犬の獣人。手先は器用でいつもニコニコ笑ってる。
俺を見ると、哀しげな顔をして寄ってくる。
俺が拒絶すると凄く凄く傷ついた顔をする。
俺が知ってる彼女。



ある日、祭りがあった。
みんな綺麗に着飾って、踊り合う。

「カイン・・・」

マリーヌが俺に声をかける。

「一緒に、踊ってくれませんか?」
「嫌だよ、お前なんかとなんで踊らないとダメなんだっ」

彼女を拒否すると他の女の子が寄ってきて一緒に踊ろうと誘ってきた。
泣きそうなマリーヌを見たくなくて、俺はその誘いに乗る。
マリーヌにも、他の男が寄っていく。
でも、彼女はその誘いには乗らなかった。
内心ホッとしている。
でも、素直になれなかった。


ある日、俺は森に行った。
冬に備えての薪やキノコなどを取りに来ていた。
たくさんとった夕方、俺は町に戻る。
次の日、ドンドンっと大きくドアを叩く音がした。

開けると真っ青な顔したマリーヌのお母さんが言う。

「マリーヌ、マリーヌを知らない?!」

昨日俺が森に行った後それを追いかけてマリーヌも森に入ったらしい。
なのに、一晩たっても帰ってこない。
カインなら、何か知ってるんじゃないかって。

「知らないよ、俺」

心臓がバクバクした。
知らない。でも、探しに行こう。
俺は森に入って、昨日の道を辿った。

大人達も一緒だ。
大声でマリーヌを呼ぶ。
少し狭い道に、マリーヌの靴が落ちていた。
滑ったのかな?
ドジだな。
俺は、道の下に降りた。


アカイ・・・
アカイ・・・
アカイ・・・
アカイ・・・

下は、真っ赤に染まった土だった。
その中心にはマリーヌがいた。
目を見開いて、じっと動かない。

俺が堪らずに叫ぶと大人達が降りてきた。


マリーヌは死んでいた。
道からコケた、その下で岩に頭をぶつけて。
俺は全く気がつかなかった。

心のどこかで、ポッカリと穴が開いた気がした。


マリーヌのお母さんが俺を責める。
マリーヌのお父さんが俺を罵る。
母さんは泣きながら謝ってる。
父さんは俺を殴った。

俺は・・・
俺は殴られた筈なのに、痛くなかった。
マリーヌ・・・
可愛い女の子。
冷たくあたる俺をずっと追いかけていた女の子。
ふわふわっとした耳はいつも俺の言葉を聞こうとしてた。
もこもことした尻尾は俺の所に来るとピンっと立って緊張が伝わった。
でも、最初に俺を見つけた瞬間はあの尻尾はふりふりと横に揺れていたんだ。
一目会った時に本当は好きだった。
素直になれなかった。

俺の番はもう喪った。
俺は神殿の神父となった。
俺みたいに素直になれない番に俺の後悔を伝えるために。




今でも夢を見るんだ。

彼女のあの空虚な瞳が

ーーーナゼ?

ーーー番ヲ求メタダケナノニ・・・

そう、言っているようで。


ああ、どうか、俺の犯した罪が他の番に伝わりますよう。

俺以外の人がこんな思いをしませんよう。

俺は今日も神に、彼女に、マリーヌに祈りを捧げる。
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