学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林

文字の大きさ
4 / 44
西条 誠

第三話

しおりを挟む
父さんの書斎を出てから二階の奥の方にある僕の部屋に向かった

「ここが僕の部屋だよ。ちょっと散らかってるけど我慢してね」

そう言ってから僕は自室の扉を開けた
僕の部屋は本棚とか勉強机とかキングサイズベッドとかしかないから比較的落ち着いた感じの雰囲気の部屋だと思うんだ

「綺麗な部屋だな。それに庭がよく見える」
「そうでしょ。母さんのガーデニングはプロの領域だからね。屋敷の周りの庭は全部母さんのオリジナルガーデンだよ」
「お前の母親は良い人だな」

誠のその言葉はどこか寂しげで悲しそうだった
だけどそんな様子をしていたのはほんの一瞬だった

「恭介の話も色々聞かせてくれ」
「うん!」

僕はこれまでどんな学校で過ごしてきたとか友達と何して遊んだとか好きな食べ物の事とかをいっぱい話した
誠も同じように中学生時代の事や西条自動車株式会社の仕事の手伝いもしている事とかを教えてくれた
そんな楽しい時間を過ごしているとあっという間に夕方になっていた

「もう夕方かぁ……」
「そうだな。今日はもう帰るとするか」
「そっかぁ。もっと話していたかったなぁ。」
「これから学校でもよろしくな。それとサッカーボールを当てたのは本当にすまなかったな」
「まだ気にしてたの?僕だって男だしボールが当たったくらいで怪我なんてしないよ。それに誠が一人でサッカーボールで遊んでくれていたお陰で僕たちが出会ったんだしさ」
「人を一人でサッカーボールと戯れるボッチみたいに言うな」

誠は軽く僕の頭を小突いた

「えへへ、ごめんって」
「じゃ、そろそろ帰るわ」
「あっ、待って!杉本さん呼ぶから」

誠が制カバンを持って帰ろうとしているのを止めて、部屋の入口の横に付けられている内線電話を使って杉本さんの仕事用の携帯電話に掛ける

「杉本さん?誠がそろそろ帰るみたいだから車出して欲しいんだけど」
『かしこまりました。車をガーデン前に出しておきますのでそこまでお二人でお越しください』
「うん、よろしく」

そこで僕は内線電話をきって誠に向き直った

「杉本さん、車用意してくれるみたいだから家まで送るよ。家ってどっちの方向?」
「恭介の家とは真逆の方向だから学校の方向に戻る感じだな」
「そっか、じゃあ杉本さんに伝えとくね」
「助かる」

そして僕たちは部屋を出て一階に降りて玄関を出てようやくガーデン前の杉本さんが車を止めている場所に着いた

「では西条様の事は私にお任せ下さい」
「うん、頼んだよ。明日は月曜日で代休だから次は火曜日に会おうね!ばいばーい!」
「あぁ、またな」

誠は車の窓を開けて手を振ってくれた。俺も振り返した所で杉本さんが車を発車させた

「では、出発致しますね」

誠を乗せた車は西蓮寺家の自動開閉の大きな門を遠隔操作で開けて道路を左へと曲がって行った。僕は見送りを終えると反転して屋敷へと戻った


◆◇◆


その頃、再び庭に戻り新たに買っておいた花の種を丁寧に植えていた彩花は一人で考え事をしていた

「西条自動車株式会社の社長、西条隆弘たかひろの息子、西条誠ねぇ。例の噂が本当じゃなければいいんだけど。もし本当だったとしたら恭介には高校生活初めての友達と別れてもらうしかかいけど。これも社交の場に出ない恭介がいけないのよね。ま、少し恭介には酷な事だけどお灸を据えるという意味でもいいかもしれないわね。和彦さんにも少し相談しようかしら」

そう言って彩花は花の種を植え終わるとあと片付けまでを終わらして和彦がいる書斎へと向かったのだった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

セカンドライフ!

みなみ ゆうき
BL
主人公 光希《みつき》(高1)は恵まれた容姿で常に女の子に囲まれる生活を送っていた。 来るもの拒まず去るもの追わずというスタンスでリア充を満喫しているつもりだったのだが、 ある日、それまで自分で認識していた自分というものが全て崩れ去る出来事が。 全てに嫌気がさし、引きこもりになろうと考えた光希だったが、あえなく断念。 従兄弟が理事長を務める山奥の全寮制男子校で今までの自分を全て捨て、修行僧のような生活を送ることを決意する。 下半身ゆるめ、気紛れ、自己中、ちょっとナルシストな主人公が今までと全く違う自分になって地味で真面目なセカンドライフを送ろうと奮闘するが、色んな意味で目を付けられトラブルになっていく話。 2019/7/26 本編完結。 番外編も投入予定。 ムーンライトノベルズ様にも同時投稿。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...