学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林

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西条 誠

第五話

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「待って下さい!」

僕が少し大きめの声でそう言ったら城賀本くんと城賀本くんのお母さんと受付の山崎さんが同時に僕を見た

「誰よ!貴方は部外者でしょ!こっちの話に口を挟まないでちょうだい!」
「確かにその話に直接関わってはいません。けど、病院でここまで騒がれたら西蓮寺家の者として見過ごす訳にはいきません!それにもう一つ言わせてもらいますがこの医療法人西蓮寺会は御社の融資を受けていません!」

僕がそう言い終わると辺りがしーんとした

「なんなのよ貴方!子供だからって調子に乗ってるんじゃないわよ!大体ね、私は城賀本家の人間なのよ。融資を受けていようがいまいが関係ないわ。こんな病院なんて直ぐに潰してやれるんですからね!」
「そんなこと出来る訳───っ!」

そう言おうと思った矢先、ある見知った声が僕の言葉をさえぎった

「恭介、もう止めなさい。あとはパパがなんとかするから」

受付の横にある六つのエレベーターの一つから父さんが降りてきた

「理事長!?」
「えっ、理事長?」
「理事長が自分のこと『パパ』って言った?」
「じゃああの子、本当に西蓮寺理事長のご子息なんじゃ……」

山崎さんを初めとする職員の囁きが聞こえた。

「お初にお目にかかります、城賀本夫人。私は医療法人西蓮寺会理事長を務めている西蓮寺和彦です」
「城賀本銀行頭取、城賀本幸樹こうきの妻の城賀本由佳里ゆかりよ」
「ご子息の樹くんの早めのご診察をご所望だと聞きましたが、彼はそこまで重症ではございません。ですので順番を前後させることは病院として認める事が出来ません」
「なんなのよ!この病院は!?ふざけてるんじゃ──」

「お母さん!もう辞めて下さい!ゴホッゴホッ!」

少し微熱があるはずの樹くんが大声を出した
それで城賀本夫人も少しは冷静になったのか樹くんの方に行ったみたい

「恭介、お前の行動は上に立つ者として凄く立派だ。だけどこんな危険なことこれからもうしちゃダメだぞ?これからはちゃんとパパを呼ぶんだ。いいね?」
「うん、そうする」

ちょっと過保護だけどやっぱりうちの父さんはすっごくいい人だなぁって思える

「樹ちゃん、大丈夫?苦しいの?」
「お母さん、もういいから帰りましょう?これ以上迷惑はかけられないですし」
「……そうね、他の病院にしましょう。こんな病院二度と来るもんですか」

そう言うと城賀本夫人は樹くんの手を握って早足に病院を出ていった

「またのご来院を心よりお待ちしております」

父さんはすごく嫌味っぽく城賀本夫人に言った。城賀本夫人は悔しそうにしながら病院から去って行った。その隣ではずっと申し訳なさそうにしていた樹くんがペコっとお辞儀をしているのが見えた。僕は軽く手を振った
そして僕は病院に来た本来の目的を思い出した

「そうだ!忘れてた!父さんにお弁当届けに来たんだ!」
「なんだと!?恭介がわざわざ届けに来てくれたのか?これは早くSNSに投稿せねば!」
「いやいや、いいよそんなことしなくて!」
「これは理事長室に帰ったらスマホで写真を撮らねばならんな!あっ、プロの写真家を呼んだ方が綺麗に撮れる、か?」

僕はちょっと暴走気味の父さんを隣にスーツ姿でタブレットを持っている理事長付秘書の安藤さんに任せて帰路に着いた
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