21 / 36
最期の連合艦隊
3-7
しおりを挟む
響たちが陣形を整えながら敵艦の後方へ回り込もうとしている中、笠戸艦上では“海上”にも拘わらず“陸戦”が繰り広げられていた。
敵駆逐艦は笠戸の右舷側に衝突し、そのまま直角になるまで進み続けていた。そのため、艦の前方に搭載されている2門の速射砲を笠戸へ撃ち込むことができたのだ。
一方の笠戸は3基の速射砲を積んでいるものの至近距離から砲撃を受け、また別の2隻からも至近弾を浴びていた。笠戸の右舷は一部が敵駆逐艦に食い込まれ、敵艦から離れることは叶わない。敵駆逐艦の基準排水量は笠戸の約2倍なのだから、当然、海防艦の方が脆弱だ。
ならばと決死隊を編成し、敵艦へ乗り込んだのが先ほどの陸戦だ。満足な量の小銃が無いのだから大多数の兵は包丁などの調理道具から船体の修理に使う木材、更には約20kgの速射砲用榴弾と、それはひどい装備だった。
ただし、その尊い命を代価に2門の速射砲を一時的に無効化することができた。
――艦上で玉砕した唯一の海防艦と後に評価されるのだろうか、それとも最期に敵艦へ上陸し一糸報いたと評されるのだろうか。
そう考えられるだけの余裕でさえ、彼らには与えられなかった。
「万歳いいいいいい!!!!!!!!!」
最期の突撃が行われ、ソ連海軍兵士と艦上で白兵戦が行われる。差し違えようと押さえつけ海へ飛び込む者も多く、重油が広がる海面に何人も両軍の兵士が浮き沈みしていた。
「魚雷の距離に気をつけろ!敵艦はかなり近いぞ」
響に搭載されている93式魚雷は俗に酸素魚雷と呼ばれるもので、その射程は最高で戦艦大和の46cm主砲よりも先へ届く。ただし、今回は極めて近い距離であり、酸素を節約することなく使うことで速度を大幅に上げる方針だ。
その速度は約52ノット(約100キロ)となる。響と同程度の規模の駆逐艦など一瞬で沈むことになるだろう。
これからの戦況で最高の状態は魚雷が2隻に命中し沈没することだ。だが、当然敵艦もこちらの存在に気づいており、警戒を怠ってはいない。
敵は駆逐艦2隻だ。一方こちらは駆逐艦1隻と海防艦2隻。数の上では勝っているものの、その内訳は極めて不利にある。
さらに、挺身隊は次に占守海峡へ向かい占守島の防衛を支援しなければならない。ここで笠戸を失ったことの意味は大きい。そして、今宇久奈を悩ますのが笠戸乗員の回収についてだ。
挺身隊と呼ばれるだけあって、決死の覚悟を皆持っているが、だからといって見捨てるわけにはいかない。だが回収に時間を裂くと本来の目的が達成できないのだ。この矛盾する問題が彼を悩ませていた。
敵駆逐艦は笠戸の右舷側に衝突し、そのまま直角になるまで進み続けていた。そのため、艦の前方に搭載されている2門の速射砲を笠戸へ撃ち込むことができたのだ。
一方の笠戸は3基の速射砲を積んでいるものの至近距離から砲撃を受け、また別の2隻からも至近弾を浴びていた。笠戸の右舷は一部が敵駆逐艦に食い込まれ、敵艦から離れることは叶わない。敵駆逐艦の基準排水量は笠戸の約2倍なのだから、当然、海防艦の方が脆弱だ。
ならばと決死隊を編成し、敵艦へ乗り込んだのが先ほどの陸戦だ。満足な量の小銃が無いのだから大多数の兵は包丁などの調理道具から船体の修理に使う木材、更には約20kgの速射砲用榴弾と、それはひどい装備だった。
ただし、その尊い命を代価に2門の速射砲を一時的に無効化することができた。
――艦上で玉砕した唯一の海防艦と後に評価されるのだろうか、それとも最期に敵艦へ上陸し一糸報いたと評されるのだろうか。
そう考えられるだけの余裕でさえ、彼らには与えられなかった。
「万歳いいいいいい!!!!!!!!!」
最期の突撃が行われ、ソ連海軍兵士と艦上で白兵戦が行われる。差し違えようと押さえつけ海へ飛び込む者も多く、重油が広がる海面に何人も両軍の兵士が浮き沈みしていた。
「魚雷の距離に気をつけろ!敵艦はかなり近いぞ」
響に搭載されている93式魚雷は俗に酸素魚雷と呼ばれるもので、その射程は最高で戦艦大和の46cm主砲よりも先へ届く。ただし、今回は極めて近い距離であり、酸素を節約することなく使うことで速度を大幅に上げる方針だ。
その速度は約52ノット(約100キロ)となる。響と同程度の規模の駆逐艦など一瞬で沈むことになるだろう。
これからの戦況で最高の状態は魚雷が2隻に命中し沈没することだ。だが、当然敵艦もこちらの存在に気づいており、警戒を怠ってはいない。
敵は駆逐艦2隻だ。一方こちらは駆逐艦1隻と海防艦2隻。数の上では勝っているものの、その内訳は極めて不利にある。
さらに、挺身隊は次に占守海峡へ向かい占守島の防衛を支援しなければならない。ここで笠戸を失ったことの意味は大きい。そして、今宇久奈を悩ますのが笠戸乗員の回収についてだ。
挺身隊と呼ばれるだけあって、決死の覚悟を皆持っているが、だからといって見捨てるわけにはいかない。だが回収に時間を裂くと本来の目的が達成できないのだ。この矛盾する問題が彼を悩ませていた。
0
あなたにおすすめの小説
久遠の海へ 再び陽が昇るとき
koto
歴史・時代
第2次世界大戦を敗戦という形で終えた日本。満州、朝鮮半島、樺太、千島列島、そして北部北海道を失った日本は、GHQによる民主化の下、急速に左派化していく。
朝鮮半島に火花が散る中、民主主義の下、大規模な労働運動が展開される日本。
GHQは日本の治安維持のため、日本政府と共に民主主義者への弾圧を始めたのだ。
俗に言う第1次極東危機。物語は平和主義・民主化を進めたGHQが、みずからそれを崩壊させる激動の時代、それに振り回された日本人の苦悩から始まる。
本書は前作「久遠の海へ 最期の戦線」の続編となっております。
前作をご覧いただけると、より一層理解度が進むと思われますので、ぜひご覧ください。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
【アラウコの叫び 】第1巻/16世紀の南米史
ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日07:20投稿】 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。
マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、
スペイン勢力内部での覇権争い、
そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。
※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、
フィクションも混在しています。
また動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。
HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。
公式HP:アラウコの叫び
youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス
insta:herohero_agency
tiktok:herohero_agency
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~
川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる
…はずだった。
まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか?
敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。
文治系藩主は頼りなし?
暴れん坊藩主がまさかの活躍?
参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。
更新は週5~6予定です。
※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち
半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。
最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。
本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。
第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。
どうぞ、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる