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咄嗟に私が愛用してるパンダのスリッパを出すと、彼は可笑しそうに肩を揺らして、笑うのを我慢するように口元を手で覆った。
「俺が、これを履くの?」
「ごめんなさいぃ」
「靴下履いてるし、そっちが気にしないなら、スリッパはなくていいよ」
「本当にすみません」
謝って下げた頭をポンポンと撫でられると、むず痒いような感覚に襲われて顔が羞恥で赤くなる。
でもちょっと、パンダのスリッパを履いた彼を見てみたかったような。
そんなことを少しだけ考えながらリビングに移動すると、ソファーに座ってもらってお茶を用意する。
「そういえば、今日はお仕事お休みなんですか」
「このところ少し立て込んでたから、休んだんだよね」
「そんな貴重な休日にすみません」
「君が謝ることじゃないでしょ」
ただの美容師さんなら、確かにそこまで気は遣わないけど、友梨さんから大手サロンの経営者なのだと聞かされた手前、すごく忙しいのではないかと勘繰ってしまう。
それに昨夜も、別に保有してるらしい自宅マンションに帰らずに実家で寝泊まりしていたことを考えると、家に帰るのすら大変だったから、あちらに居たのかも知れない。
「冷たいのがいいかと思って、ウーロン茶にしましたけど、コーヒーが良ければすぐに淹れますよ」
「ありがとう。そんなに気を遣わなくていいのに」
「いいえ。あ、お腹減ってますよね。何か作りましょうか。簡単なものしか出来ませんけど」
そう言ってその場を離れようとすると、強引に腕を引かれて気が付くと彼の膝の上に座らされてしまった。
「あ、の」
「一旦落ち着こう。やっと二人っきりになれたんだし」
「いや、でも」
「抱っこされるの嫌だった?」
「別にそういう訳では」
「ならギュッとさせて」
香水の匂いとか、僅かな息遣いと耳に掛かる吐息の温かさとか、抱き締める腕の優しさとか、そして彼が私を抱きしめる姿が電源の落とされたテレビの画面に映っている。
身を硬くする私をあやすように、背中をスッと撫でると、彼の手が私の顎を捉えて振り返らされてキスされる。
逃れようもなく五感を一気に刺激されて、ドキドキと早鐘を打つ心臓がうるさくて、蕩けそうに甘いキスなのに集中できない。
「落ち着いたかな」
「逆効果です」
「じゃあ寝室に行く?」
「そういう意味じゃありません」
きっと真っ赤になってるだろう顔で彼を睨むと、私とは対照的に妖艶な笑みを浮かべた彼の指が、可愛いねと赤く染まった頬を撫でる。
どうしたって身体がゾクゾクして、しがみつくように彼の服を掴むと、優しい腕の中に閉じ込められた。
「本当に可愛いな。とても君が、俺を置き去りにした女の子だとは思えない」
「いや、ですからあれは」
咄嗟に顔を上げると、引っ掛かったと笑う彼にまたキスされてしまう。
彼がどこまで本気でこんなことをしてるのか分からないけど、私は彼が思う以上にきっと彼に惹かれているし、それが怖くてあの朝ベッドから逃げ出した。
だってあのまま別れてしまえば、きっと二度と会うことなんてないはずだったんだから。
「とろんとした顔してる」
「それは」
「俺のこと好き? それともキスと身体だけかな」
「なんてこと言うんですか」
「違う? なら俺のこと好きなの」
「それは、その」
咄嗟に肯定できずに口籠もると、彼は少しムッとした表情で私を膝から下ろした。
再び気まずい空気が流れると、彼は無言のまま汗をかいたグラスを手に取ってウーロン茶を飲み干す。
グラスの中でカランと氷が揺れる音がして、それが部屋の中を支配する静寂を少しだけ和らげると、ごくりとお茶を飲み下すように彼の喉が上下した。
「俺が、これを履くの?」
「ごめんなさいぃ」
「靴下履いてるし、そっちが気にしないなら、スリッパはなくていいよ」
「本当にすみません」
謝って下げた頭をポンポンと撫でられると、むず痒いような感覚に襲われて顔が羞恥で赤くなる。
でもちょっと、パンダのスリッパを履いた彼を見てみたかったような。
そんなことを少しだけ考えながらリビングに移動すると、ソファーに座ってもらってお茶を用意する。
「そういえば、今日はお仕事お休みなんですか」
「このところ少し立て込んでたから、休んだんだよね」
「そんな貴重な休日にすみません」
「君が謝ることじゃないでしょ」
ただの美容師さんなら、確かにそこまで気は遣わないけど、友梨さんから大手サロンの経営者なのだと聞かされた手前、すごく忙しいのではないかと勘繰ってしまう。
それに昨夜も、別に保有してるらしい自宅マンションに帰らずに実家で寝泊まりしていたことを考えると、家に帰るのすら大変だったから、あちらに居たのかも知れない。
「冷たいのがいいかと思って、ウーロン茶にしましたけど、コーヒーが良ければすぐに淹れますよ」
「ありがとう。そんなに気を遣わなくていいのに」
「いいえ。あ、お腹減ってますよね。何か作りましょうか。簡単なものしか出来ませんけど」
そう言ってその場を離れようとすると、強引に腕を引かれて気が付くと彼の膝の上に座らされてしまった。
「あ、の」
「一旦落ち着こう。やっと二人っきりになれたんだし」
「いや、でも」
「抱っこされるの嫌だった?」
「別にそういう訳では」
「ならギュッとさせて」
香水の匂いとか、僅かな息遣いと耳に掛かる吐息の温かさとか、抱き締める腕の優しさとか、そして彼が私を抱きしめる姿が電源の落とされたテレビの画面に映っている。
身を硬くする私をあやすように、背中をスッと撫でると、彼の手が私の顎を捉えて振り返らされてキスされる。
逃れようもなく五感を一気に刺激されて、ドキドキと早鐘を打つ心臓がうるさくて、蕩けそうに甘いキスなのに集中できない。
「落ち着いたかな」
「逆効果です」
「じゃあ寝室に行く?」
「そういう意味じゃありません」
きっと真っ赤になってるだろう顔で彼を睨むと、私とは対照的に妖艶な笑みを浮かべた彼の指が、可愛いねと赤く染まった頬を撫でる。
どうしたって身体がゾクゾクして、しがみつくように彼の服を掴むと、優しい腕の中に閉じ込められた。
「本当に可愛いな。とても君が、俺を置き去りにした女の子だとは思えない」
「いや、ですからあれは」
咄嗟に顔を上げると、引っ掛かったと笑う彼にまたキスされてしまう。
彼がどこまで本気でこんなことをしてるのか分からないけど、私は彼が思う以上にきっと彼に惹かれているし、それが怖くてあの朝ベッドから逃げ出した。
だってあのまま別れてしまえば、きっと二度と会うことなんてないはずだったんだから。
「とろんとした顔してる」
「それは」
「俺のこと好き? それともキスと身体だけかな」
「なんてこと言うんですか」
「違う? なら俺のこと好きなの」
「それは、その」
咄嗟に肯定できずに口籠もると、彼は少しムッとした表情で私を膝から下ろした。
再び気まずい空気が流れると、彼は無言のまま汗をかいたグラスを手に取ってウーロン茶を飲み干す。
グラスの中でカランと氷が揺れる音がして、それが部屋の中を支配する静寂を少しだけ和らげると、ごくりとお茶を飲み下すように彼の喉が上下した。
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