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九月が目前に迫った八月の最終週。
手配を急いだ甲斐もあって、私は樹貴さんの実家に引っ越してきた。
当日は樹貴さんではなく、友梨さんが手伝いに顔を出してくれて、友梨さんの子どもたちと遊び半分、楽しみながら掃除したり片付けを済ませる。
「本当に助かりました」
「良いのよ。これからも顔合わせるんだから、そんなに気を遣わないで」
そして友梨さんは、当然ながら私が樹貴さんとお付き合いしてることをまだ知らない。
樹貴さんに相談したものの、彼の口から友梨さんに伝えると言ってはいたけど、この様子だと友梨さんの耳には届いてないだろう。
「兄が本当に、たまに寝泊まりすると思うけど、ごめんね」
「いえ。大丈夫です」
「今日は様子を見に顔を出すって言ってたんだけど、連絡がないのよね」
「お仕事がお忙しいんじゃないでしょうか」
「それにしたって、香澄ちゃんに失礼じゃない。本当にごめんなさいね、ろくでもない兄で」
「いえいえ、とんでもないです。そもそもお住まいは別ですし、私のためにわざわざ来ていただくのも悪いですから」
「そんなの気にしなくて良いわよ。兄の都合で半分同居みたいになっちゃうなんてね。本当にごめんね」
「それを言うなら私の方が勝手な都合で置いてもらうので、謝ったりしないでください」
友梨さんと頭を下げ合っていると、かくれんぼをしていたはずの友梨さんの子どもたちが、お腹が空いたと歌いながら部屋にやって来た。
引っ越しの荷受けが十三時だったので、勝手に昼食は済ませているものだと思い込んでいたけど、もしかしなくてもまだ食べていないらしい。
「ごめんなさい。私、全然気が回らなくて。あの、出前とかピザで良ければ、今日のお礼を兼ねてご馳走させてください」
私が友梨さんに頭を下げると、耳ざとくピザという単語に反応した友梨さんの子どもたちが騒ぎ始める。
「ダメよ香澄ちゃん、そんな気は遣わないでって言ったばっかりなのに」
「いえ、お子さんたちにもお手伝いしてもらって捗りましたから。是非そうさせてください」
なんとか友梨さんを説得すると、子どもたちのリクエストでピザを頼むことになり、住所を設定し直してみんなで選んだメニューを注文する。
到着するまでの間、子どもたちが持ってきた携帯ゲーム機でゲームをしながら、友梨さんとも菜穂ちゃんの話をして過ごすことにした。
そうしてパーティーみたいに賑やかにビザを食べ終えると、子どもたちが騒ぎ疲れて昼寝をしている間に友梨さんと二人でコーヒーを飲む。
「香澄ちゃんは彼氏は居ないの?」
突然の何気ない質問にコーヒーを噴き出しそうになって、私が咽せて咳き込むと、友梨さんは驚きながら聞いちゃだめだったのかと、絞ったばかりの布巾を差し出した。
「ごめん。お友だちが結婚でルームシェア解消したって言ってたし、香澄ちゃんにもそういう人が居るのかなって。聞かない方が良かった? この話題」
「い、いえ。大丈夫です。咳が出そうになったのにコーヒー呑み込んだから咽せただけなので」
「そう? それなら良いんだけど」
友梨さんも菜穂ちゃんも、私くらいの歳で結婚したからか、結婚願望はないのかと、自然と恋人がいる前提で話が進んでいく。
「一緒に住むくらい仲の良かった子の結婚でしょ。香澄ちゃんも意識するようにならないの? 私は菜穂子に触発されたところがあったわね」
「どうなんでしょうね。結婚したいほど好きだったり、好かれたりって、私にはまだ分からなくて」
「なに、そんな不誠実な相手と付き合ってるの」
「いえいえ、違います。単に自分に自信がないというか。私なんかで良いのかなって」
「随分謙虚なのね」
「卑屈なだけですよ」
実際、樹貴さんが私の恋人だなんて今でも信じられない。
手配を急いだ甲斐もあって、私は樹貴さんの実家に引っ越してきた。
当日は樹貴さんではなく、友梨さんが手伝いに顔を出してくれて、友梨さんの子どもたちと遊び半分、楽しみながら掃除したり片付けを済ませる。
「本当に助かりました」
「良いのよ。これからも顔合わせるんだから、そんなに気を遣わないで」
そして友梨さんは、当然ながら私が樹貴さんとお付き合いしてることをまだ知らない。
樹貴さんに相談したものの、彼の口から友梨さんに伝えると言ってはいたけど、この様子だと友梨さんの耳には届いてないだろう。
「兄が本当に、たまに寝泊まりすると思うけど、ごめんね」
「いえ。大丈夫です」
「今日は様子を見に顔を出すって言ってたんだけど、連絡がないのよね」
「お仕事がお忙しいんじゃないでしょうか」
「それにしたって、香澄ちゃんに失礼じゃない。本当にごめんなさいね、ろくでもない兄で」
「いえいえ、とんでもないです。そもそもお住まいは別ですし、私のためにわざわざ来ていただくのも悪いですから」
「そんなの気にしなくて良いわよ。兄の都合で半分同居みたいになっちゃうなんてね。本当にごめんね」
「それを言うなら私の方が勝手な都合で置いてもらうので、謝ったりしないでください」
友梨さんと頭を下げ合っていると、かくれんぼをしていたはずの友梨さんの子どもたちが、お腹が空いたと歌いながら部屋にやって来た。
引っ越しの荷受けが十三時だったので、勝手に昼食は済ませているものだと思い込んでいたけど、もしかしなくてもまだ食べていないらしい。
「ごめんなさい。私、全然気が回らなくて。あの、出前とかピザで良ければ、今日のお礼を兼ねてご馳走させてください」
私が友梨さんに頭を下げると、耳ざとくピザという単語に反応した友梨さんの子どもたちが騒ぎ始める。
「ダメよ香澄ちゃん、そんな気は遣わないでって言ったばっかりなのに」
「いえ、お子さんたちにもお手伝いしてもらって捗りましたから。是非そうさせてください」
なんとか友梨さんを説得すると、子どもたちのリクエストでピザを頼むことになり、住所を設定し直してみんなで選んだメニューを注文する。
到着するまでの間、子どもたちが持ってきた携帯ゲーム機でゲームをしながら、友梨さんとも菜穂ちゃんの話をして過ごすことにした。
そうしてパーティーみたいに賑やかにビザを食べ終えると、子どもたちが騒ぎ疲れて昼寝をしている間に友梨さんと二人でコーヒーを飲む。
「香澄ちゃんは彼氏は居ないの?」
突然の何気ない質問にコーヒーを噴き出しそうになって、私が咽せて咳き込むと、友梨さんは驚きながら聞いちゃだめだったのかと、絞ったばかりの布巾を差し出した。
「ごめん。お友だちが結婚でルームシェア解消したって言ってたし、香澄ちゃんにもそういう人が居るのかなって。聞かない方が良かった? この話題」
「い、いえ。大丈夫です。咳が出そうになったのにコーヒー呑み込んだから咽せただけなので」
「そう? それなら良いんだけど」
友梨さんも菜穂ちゃんも、私くらいの歳で結婚したからか、結婚願望はないのかと、自然と恋人がいる前提で話が進んでいく。
「一緒に住むくらい仲の良かった子の結婚でしょ。香澄ちゃんも意識するようにならないの? 私は菜穂子に触発されたところがあったわね」
「どうなんでしょうね。結婚したいほど好きだったり、好かれたりって、私にはまだ分からなくて」
「なに、そんな不誠実な相手と付き合ってるの」
「いえいえ、違います。単に自分に自信がないというか。私なんかで良いのかなって」
「随分謙虚なのね」
「卑屈なだけですよ」
実際、樹貴さんが私の恋人だなんて今でも信じられない。
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