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(旦那様は確か、教会の壁画を依頼されるほど画家として活躍されているというけれど……)
これはリルバーから聞いた話だ。個展を開いてみないかという打診もあったが、それは呪いの事情があるから断っているらしい。だから、アドニスに才能がない訳ではないと思うが、どうしたら自信を持ってくれるだろうか。
才能がないと決めつけてしまったら、これから伸びていく可能性さえ潰してしまう。こういうときに子どもに知恵を与えて励ますのは大人の役割だ。
「才能のあるなしを決めるのではなく、自分の可能性を信じてみてはいかがでしょうか」
「可能性?」
「諦めずに努力していれば、誰でも必ずどこかで拾い上げてもらえるものです。何事も可能性を信じて、きっとどこかで報われるだろうと思っておくスタンスが大事なんだと私は思いますよ。私も可能性を信じて公爵家に来て……大正解でした」
引きこもりの好色家、冷酷無慈悲と噂される公爵だが、実際は良い人かもしれない。行って確かめて、もし駄目だったら違う道を考えよう。そんな勇気を持って踏み込んだ。
「素敵なことが起こると信じていたから……アドニス様にも出会えました」
アドニスは何も言わずにこちらを見ている。そこまで伝えて、スフィミアははっとした。
「ごめんなさい。ポジティブを押し売りするつもりはないんです。ただ、アドニス様を励ましたくて」
慌てているスフィミアに、アドニスが大人びた表情で言った。
「ううん。凄く素敵な考え方だと思う。僕は好きだな。忘れないように、心に留めておくよ」
◇◇◇
夜になると、リルバーが部屋にハネスからの手紙を届けてくれた。温かい飲み物と一緒に。
「旦那様からお預かりしました。今日も一日お疲れ様でした」
「リルバー様も」
手紙を預かり、机の前の椅子に腰を下ろす。封を切って便箋を取り出した。
『今日もありがとう。あなたはなぜ動物の丸焼きの絵しか描かない? この前は羊で、その前は豚だった。毎度無惨な姿にされて可哀想だ。たまには野を駆ける動物を描いてあげてほしい。
それから、前向きになれる言葉をありがとう。私もきっと呪いを克服できるのだと信じようと思う。いつかあなたに会えるのを願っているよ』
手紙を読み終えたスフィミアは、ふっと目を細めた。アドニスに伝えた言葉が、アドニスを通してちゃんとハネスに届いているのだと嬉しくなった。
(こちらこそ、ありがとうございます)
結婚相手の幼少期の姿しか知らないなんて、不思議な状態だ。いつ本人に会えるかも分からないし、普通なら逃げ出したくなってしまうかもしれない。
でも、屋敷の人たちは優しいし、ご飯はいつも美味しい。それにアドニスが可愛い。穏やかな日々が目の前にあるだけでスフィミアには充分だった。
ハネスは一体、どんな人なのだろう。頬杖を着きながら想像してみる。
(アドニス様をそのまま大人にした感じ……?)
返事を書くための便箋に、大人ハネスのイメージを描いてみる。
「いつか、お会いできたらいいなぁ」
口をついてそんな言葉が出ていた。
イラストを添えて返事をしたためた。後日、ハネスからは『伝説の魔人か何かだろうか?』とのコメントがあった。スフィミアはあまり絵が上手くない。いつかハネスに教えてもらいたいと思った。
これはリルバーから聞いた話だ。個展を開いてみないかという打診もあったが、それは呪いの事情があるから断っているらしい。だから、アドニスに才能がない訳ではないと思うが、どうしたら自信を持ってくれるだろうか。
才能がないと決めつけてしまったら、これから伸びていく可能性さえ潰してしまう。こういうときに子どもに知恵を与えて励ますのは大人の役割だ。
「才能のあるなしを決めるのではなく、自分の可能性を信じてみてはいかがでしょうか」
「可能性?」
「諦めずに努力していれば、誰でも必ずどこかで拾い上げてもらえるものです。何事も可能性を信じて、きっとどこかで報われるだろうと思っておくスタンスが大事なんだと私は思いますよ。私も可能性を信じて公爵家に来て……大正解でした」
引きこもりの好色家、冷酷無慈悲と噂される公爵だが、実際は良い人かもしれない。行って確かめて、もし駄目だったら違う道を考えよう。そんな勇気を持って踏み込んだ。
「素敵なことが起こると信じていたから……アドニス様にも出会えました」
アドニスは何も言わずにこちらを見ている。そこまで伝えて、スフィミアははっとした。
「ごめんなさい。ポジティブを押し売りするつもりはないんです。ただ、アドニス様を励ましたくて」
慌てているスフィミアに、アドニスが大人びた表情で言った。
「ううん。凄く素敵な考え方だと思う。僕は好きだな。忘れないように、心に留めておくよ」
◇◇◇
夜になると、リルバーが部屋にハネスからの手紙を届けてくれた。温かい飲み物と一緒に。
「旦那様からお預かりしました。今日も一日お疲れ様でした」
「リルバー様も」
手紙を預かり、机の前の椅子に腰を下ろす。封を切って便箋を取り出した。
『今日もありがとう。あなたはなぜ動物の丸焼きの絵しか描かない? この前は羊で、その前は豚だった。毎度無惨な姿にされて可哀想だ。たまには野を駆ける動物を描いてあげてほしい。
それから、前向きになれる言葉をありがとう。私もきっと呪いを克服できるのだと信じようと思う。いつかあなたに会えるのを願っているよ』
手紙を読み終えたスフィミアは、ふっと目を細めた。アドニスに伝えた言葉が、アドニスを通してちゃんとハネスに届いているのだと嬉しくなった。
(こちらこそ、ありがとうございます)
結婚相手の幼少期の姿しか知らないなんて、不思議な状態だ。いつ本人に会えるかも分からないし、普通なら逃げ出したくなってしまうかもしれない。
でも、屋敷の人たちは優しいし、ご飯はいつも美味しい。それにアドニスが可愛い。穏やかな日々が目の前にあるだけでスフィミアには充分だった。
ハネスは一体、どんな人なのだろう。頬杖を着きながら想像してみる。
(アドニス様をそのまま大人にした感じ……?)
返事を書くための便箋に、大人ハネスのイメージを描いてみる。
「いつか、お会いできたらいいなぁ」
口をついてそんな言葉が出ていた。
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