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しおりを挟む眉尻を下げて謝罪を口にすれば、スフィミアは首を横に振った。
「むしろ私がもっとしっかり見ておくべきだったんです。どうか謝らないでください。それに……」
彼女は無邪気に笑ってこう付け加えた。
「溺れている私を助けてくださった旦那様がすごく格好よかったです! こんな経験、滅多にできませんね」
「…………」
溺れているとき、さぞ怖い思いをしただろうに、彼女は前向きだった。いつも彼女はそうだ。子どもの相手ばかりで年頃の娘らしい楽しみも味わえていないのに、いつも笑っていて。
そういうところが、すごく好きだ。でも彼女が辛いときは彼女が寄りかかれるような存在でありたい。これからはきっと。
物思いに耽っていたら、彼女がこっちを見てくすくすと笑っていることに気づいた。
「何がおかしい?」
彼女はハネスの頭に手を伸ばして、髪に巻きついている長い植物を取った。
「水草が髪に絡まっているの、ずっと気になっていました。あと、肩にカエルさんが乗っていますよ」
「……!」
指摘されて肩に視線を落とすと、大きなカエルがゲコっと鳴いた。ハネスはスフィミアと顔を見合せて笑った。彼女はカエルの身体を摘み上げて、「よく肥えていて美味しそう」だと呟いた。彼女の食欲センサーは、食べられそうなものであれば見境ない。カエルも本能的に命の危機を感じたのか、摘まれたままじたばたと暴れている。
「さ、自然へお帰り。私の気が変わらないうちに」
「ゲロッ!?」
やっぱりちょっと食べるつもりだったようだ。スフィミアはカエルを湖にそっと逃がしてやり、小首を傾げて言った。
「呪いは……克服できた、ということでしょうか」
「分からない。だが、あなたの前でこうして本来の姿を見せられているということは、大きな進歩だ。俺が元の姿に戻る前……何を考えていたんだ?」
「…………!」
彼女は少しだけ照れたように答えた。
「私……アドニス様のことだけではなく、旦那様のことも……大好きなんだなって、考えていました。会えないままお別れするのは……嫌だと」
「そうか」
あの瞬間、彼女がハネスへの想いを自覚してくれたことで呪いを克服するための条件が満たされたのだと理解した。にこりと微笑みかけると、彼女はこちらをじっと観察する。
「旦那様は、笑うとアドニス様にそっくりですね」
「アドニスは昔の俺だからな。それから――ハネスと。名前で呼んでくれないか? 嫌ならいい」
スフィミアは少しだけ意外そうに目を見開いてからこくんと頷き、湖畔に咲くスイセンの花のような笑顔を浮かべた。
「もちろんです。――ハネス様」
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