【完結】小公爵様、死亡フラグが立っています。

曽根原ツタ

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一章

〈9〉私は決して怪しい者ではございません(3)

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 しかし。結果からいえば、ロベリアは予定していたことを何一つ守ることができなかった。ナターシャを庇い令嬢たちの前に立ちはだかった刹那。彼女の潤んだ瞳と、強く握られたのか赤く充血した細い手首を見て、自制心が効かなくなった。プチン……と堪忍袋の緒が切れる音がした。

「あなたたち。一体何をしているの?  ……ナターシャがこんなに怯えているじゃない」
「……ロベリア様……っ!?  どうしてここに……?」
「遅くなってごめんなさいね。怖かったでしょう。――もう大丈夫、私がいるわ」

 彼女にそっと微笑みかけると、ナターシャは安堵に再び瞳を濡らした。

「あんたこそ何よ。まさか、その子のこと庇うつもり?  その子があんまり自分の立場を分かってないみたいだから、あたしたちが教えてあげてたのよ。あんたは引っ込んでなさい!」
「教えてあげていたですって……?  馬鹿を言わないで。あなたたちがしていたのはただの嫌がらせじゃない」
「な……!?  なんて生意気なの……!」

 女子生徒たちはみるみる顔色を変える。その内のリーダー格と思われる、紫色のウェーブがかかった髪の令嬢が言う。

「あなた、わたくしを誰だと思って?  わたくしは、フローリア・リーズ。リーズ伯爵家が娘ですわ。そのような物言いは無礼ではなくて?  今すぐ欠礼を詫びてくださいまし!」

 リーズ家と言えば、ドウェイン王国の辺境伯で、家柄は上流である。フローリアの言葉に、周りの令嬢たちはくすくすと笑いながら賛同した。ロベリアは嘆息する。

(公爵家の令嬢の顔くらい、覚えておきなさいよ。……というより、私があまりにも影が薄かったのかしら……)

 ロベリアは懐から、アヴリーヌ公爵家の家紋が刺繍されたハンカチーフを取りだした。アヴリーヌ公爵家を示す百合と盾の紋章に、令嬢たちは青ざめてたじろいだ。いくら伯爵家の娘とはいえど、王家とも縁深い公爵家とはあまりにも格差がある。

「欠礼を詫びろ、ですって?  ……態度を改めるのはあなた方の方よ。……フローリア嬢と愉快なお仲間たちは、上流ごっこが大好きなのね。でもね、地位を鼻にかけて、誰かを貶める行為は貴族の礼儀に反しているわ」

 ロベリアはもう一度、フローリアを睨みつけた。

「私の大切なお友達を傷つけたら、私が許さないから!  次はないと思いなさい」
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