王子、侍女となって妃を選ぶ

夏笆(なつは)

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報告 アリス・ハッカー

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「まったく、情けない」 

「あの場に居たら、母上だってこうなります!」 

「わたくしは、もっと凄い修羅場を見て来たわよ」 

 アリスの部屋を辞した後、母王妃に渡されていた魔道具で連絡を取り、母王妃が指定した場所でシリルが待っていると、母王妃の腹心である侍女長が迎えに来た。 

 そうして彼女の手引きで母王妃の元へ辿り着いたシリルは今、母王妃から辛辣な言葉を浴びせられている。 

「そうは言ってもですね。侍女をシガレットケースで殴るわ、鞭打つわ。僕は、他人が殴られたり、打たれたりしているのを見ているだけだって痛いと感じるくらいなのに、終には自分がですよ!?分かりますか!?この恐怖!」 

「痛みは感じなかったでしょうが」 

「あ、はい。それは、感謝しております。それに、傷も。それらしく見えるようにしていただけで、本当には傷ついていないなんて。母上、凄いですね」 

 母王妃は、優れた魔力の持ち主であると有名であるが、それほど興味も無かったシリルは、のほほんと言ってカップに口を付けた。 

「何を呑気な。貴方は、間違いなくその血を引いているのですけれどね」 

 はあ、とため息を吐いて王妃は、己のひとり息子であるシリルを見る。 

「血を引いているからといって、誰もが母上のようになれる訳ではありませんよ」 

 僕には無理です、と言うシリルに王妃は厳しい目を向けた。 

「貴方の魔力量が豊富なことは分かっています。それを使いこなせないのは、貴方が努力しなかった結果です。貴方ほど魔力が無くとも努力して、一角ひとかどの魔導士になる者だって少なくないのです。それなのに、才能を無駄にして。本当に。どこで育て方を間違えたのかしら」 

「母上、それほど落ち込むことはありません。ご自分を責めなくとも」 

 後悔に、頬に手を寄せ考え込む王妃に、シリルは物知り顔で提案するも、それが王妃の感情に火を点けてしまう。 

「誰のせいですか、誰の。大体、ハッカー伯爵令嬢の本質を見て、何か思うところは無かったの?」 

 母王妃の言葉に、シリルは大きく身を乗り出した。 

「あります。アリスに僕は騙されていました。僕が贈った宝飾のことも貶していて。あれは、早急に回収しなければなりません」 

「え?そこなの?まあ、それも大事といえば大事だけれど。そこから、貴方自身の行いを正そうとか、そういうことには?」 

「いえ、そこまでは。第一、僕は使用人に暴力を振るったりしませんし」 

 だから、自分にそこまで非があるとは思えない、ときっぱり言い切るシリルに、もうひとつ大きなため息を吐いて、王妃は気持ちを切り替えるように首を緩く振った。 

「まあ、いいでしょう。あとふたり。きちんと、どのように騙されていたのか確認してくるのですよ」 

 母王妃の言葉に、シリルは益々膝を乗り出した。 

「また、防御と虚視の魔法をかけてくれますか?」 

「貴方というひとは・・・本当にびびりねえ」 

 呆れたように言う母王妃に、シリルは驚きの目を向ける。 

「びびり・・・。母上も、そのような俗な言葉を使うのですね」 

「思わず出てしまうほど、貴方が情けないのよ」 

「情けなかろうと、安全第一は肝心要です」 

 またも大きなため息を吐く母王妃に、シリルは胸を張って言い切った。 

 


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