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馬車が止まり、扉があくとそこにいたのは宰相本人だった。
「お待ちしておりました。ローレンス王弟殿下、エリザベス王弟妃殿下」
「その名前は捨てた。ラリーでいい」
「いえ、ここではそういう訳にはいきません。ここにいる者たちはすべて厳重な機密保持契約を交わしている者たちですから、お気になさらないよう」
宰相の言葉に反論をしながら、城の奥の王族の居住地区へと足を踏み入れた。
ローレンス自体、ここに来たのはいつの事だろうかと考えるほど、今の生活が何よりも大切だと感じているのを歩きながら考えた。
子供の頃に兄と一緒に走り回った廊下も庭も当時の面影を残し、心の奥底にある記憶は少し感傷に浸っているようだ。
そして国王の居室へと着き、扉の前で警護にあたる近衛騎士がローレンスの顔を見て少し目を見張ったようだったが、次の瞬間には冷静に敬礼をした。
そして宰相が声をかけ、その部屋の扉が開けられた。
ベッドに横たわるアンドーレ国王は、命の危機は脱しているのはわかるが、まだ弱々しい姿だ。
「兄上……、お身体の具合はいかがですか?」
「ローレンスか…もうほとんど治っておる。だが、気力というものはなかなか回復せぬものだ」
「エリザベス。そなたも変わらぬのう。昔のまま美しい」
「陛下、ご冗談を言えるほどお元気で安心しました」
「その子らは、お前たちの子か?とても似ておるのぉ」
「ええ、アレックスとレリアナです」
二人は国王の側に寄り手を握った。アレックスもレリアナも無意識のうちに魔法を使っているようだ。ただ父の兄を助けたいという一心で。
それに気が付いたリサは、そっとその手に自分の手を重ねて、同じように祈りを込め補助をした。すると、国王の顔色が少しずつ赤みを帯び始める。
「これ…は…、一体どういうことだ?」
「この子たちの願いが通じたのでしょう。アレックスは回復を、レリアナは護りを。陛下を思って……血縁だからでしょうか。通常よりも効いたようですね」
自分の体の調子が良いと気が付いて、二人の子の顔を見た。
「ありがとう。アレックスもレリアナも優しい子だな。そんな優しい子には贈り物をしなければいけないな」
「本当?アナ、お人形さんがいい」
国王とその側近たちは、素直に望みを言う幼子にその口元に笑みを浮かべた。
宰相に目配せをし、子供たちを別室へと連れて行こうとする姿を目で追いながら、ローレンスは子供たちに先に言って待っているように言って聞かせ、宰相と一緒に部屋を出るよう伝えた。
子供たちが部屋を出てから、国王は色々と考えていたことを話し始めた。
「子供たちは王家の色を継いだのか。それであればお前たち、ここへ戻っては来ぬか?今まで通りの生活を捨てろとは言わん。儂が退位したのち、ジークを助けてやってほしい」
その言葉に深間を隠すことなくローレンスはジークに対する嫌悪を露わにした。未だに八年前の事を根に持っているようでリサは思わず笑ってしまう。
「ジークをですか?私は、あいつのせいでリサと会えなくなったのですよ。その時間を返してほしいくらいなのに、なぜ今更あいつの為に私の時間を奪うのですか?それに、兄上は元気になられたではないですか。まだ退位は早いでしょうに」
「わかっておる。だが今回の黒幕のこともある。今のうちからジークの周りをしっかりと固めておかねば国が揺らぎかねん」
国王とローレンスは年齢が離れていることもあり弟からすると、兄というよりも父のような存在でもあった。
それほど大切な存在でもある兄の子なのだから、本来なら手を貸すのは道理なのかもしれない。だがリサの一件からどうしても嫌悪感に似た感情がローレンスの胸の奥から湧き出てくるのだ。
「兄上が私の我儘を今まで聞き入れてくださり、この八年近くを自由に過ごさせていただいたことは本当に心から感謝しております。ですが何とおっしゃられようと、戻ってくるつもりはありません。私は今の、リサと子供たちと一緒に慎ましく生活しているのが性に合っている。腹の探り合いをするような世界は子供たちに見せたくない。それに、ジークは私が死んだと思っているのでしょうから、このまま姿を現さない方がいいでしょう」
「ローレンス……何を言ってもダメか」
「はい。兄上には悪いと思いますが、元気になられたのですからこれからジークを鍛え直すのがよろしいかと」
国王が溜息を吐いて、次の言葉を言おうと口を開けた時、部屋の外が騒がしくなりそれと同時に扉がバンと開いた。
開けたのはジークフリート王太子殿下その人だった。
「お待ちしておりました。ローレンス王弟殿下、エリザベス王弟妃殿下」
「その名前は捨てた。ラリーでいい」
「いえ、ここではそういう訳にはいきません。ここにいる者たちはすべて厳重な機密保持契約を交わしている者たちですから、お気になさらないよう」
宰相の言葉に反論をしながら、城の奥の王族の居住地区へと足を踏み入れた。
ローレンス自体、ここに来たのはいつの事だろうかと考えるほど、今の生活が何よりも大切だと感じているのを歩きながら考えた。
子供の頃に兄と一緒に走り回った廊下も庭も当時の面影を残し、心の奥底にある記憶は少し感傷に浸っているようだ。
そして国王の居室へと着き、扉の前で警護にあたる近衛騎士がローレンスの顔を見て少し目を見張ったようだったが、次の瞬間には冷静に敬礼をした。
そして宰相が声をかけ、その部屋の扉が開けられた。
ベッドに横たわるアンドーレ国王は、命の危機は脱しているのはわかるが、まだ弱々しい姿だ。
「兄上……、お身体の具合はいかがですか?」
「ローレンスか…もうほとんど治っておる。だが、気力というものはなかなか回復せぬものだ」
「エリザベス。そなたも変わらぬのう。昔のまま美しい」
「陛下、ご冗談を言えるほどお元気で安心しました」
「その子らは、お前たちの子か?とても似ておるのぉ」
「ええ、アレックスとレリアナです」
二人は国王の側に寄り手を握った。アレックスもレリアナも無意識のうちに魔法を使っているようだ。ただ父の兄を助けたいという一心で。
それに気が付いたリサは、そっとその手に自分の手を重ねて、同じように祈りを込め補助をした。すると、国王の顔色が少しずつ赤みを帯び始める。
「これ…は…、一体どういうことだ?」
「この子たちの願いが通じたのでしょう。アレックスは回復を、レリアナは護りを。陛下を思って……血縁だからでしょうか。通常よりも効いたようですね」
自分の体の調子が良いと気が付いて、二人の子の顔を見た。
「ありがとう。アレックスもレリアナも優しい子だな。そんな優しい子には贈り物をしなければいけないな」
「本当?アナ、お人形さんがいい」
国王とその側近たちは、素直に望みを言う幼子にその口元に笑みを浮かべた。
宰相に目配せをし、子供たちを別室へと連れて行こうとする姿を目で追いながら、ローレンスは子供たちに先に言って待っているように言って聞かせ、宰相と一緒に部屋を出るよう伝えた。
子供たちが部屋を出てから、国王は色々と考えていたことを話し始めた。
「子供たちは王家の色を継いだのか。それであればお前たち、ここへ戻っては来ぬか?今まで通りの生活を捨てろとは言わん。儂が退位したのち、ジークを助けてやってほしい」
その言葉に深間を隠すことなくローレンスはジークに対する嫌悪を露わにした。未だに八年前の事を根に持っているようでリサは思わず笑ってしまう。
「ジークをですか?私は、あいつのせいでリサと会えなくなったのですよ。その時間を返してほしいくらいなのに、なぜ今更あいつの為に私の時間を奪うのですか?それに、兄上は元気になられたではないですか。まだ退位は早いでしょうに」
「わかっておる。だが今回の黒幕のこともある。今のうちからジークの周りをしっかりと固めておかねば国が揺らぎかねん」
国王とローレンスは年齢が離れていることもあり弟からすると、兄というよりも父のような存在でもあった。
それほど大切な存在でもある兄の子なのだから、本来なら手を貸すのは道理なのかもしれない。だがリサの一件からどうしても嫌悪感に似た感情がローレンスの胸の奥から湧き出てくるのだ。
「兄上が私の我儘を今まで聞き入れてくださり、この八年近くを自由に過ごさせていただいたことは本当に心から感謝しております。ですが何とおっしゃられようと、戻ってくるつもりはありません。私は今の、リサと子供たちと一緒に慎ましく生活しているのが性に合っている。腹の探り合いをするような世界は子供たちに見せたくない。それに、ジークは私が死んだと思っているのでしょうから、このまま姿を現さない方がいいでしょう」
「ローレンス……何を言ってもダメか」
「はい。兄上には悪いと思いますが、元気になられたのですからこれからジークを鍛え直すのがよろしいかと」
国王が溜息を吐いて、次の言葉を言おうと口を開けた時、部屋の外が騒がしくなりそれと同時に扉がバンと開いた。
開けたのはジークフリート王太子殿下その人だった。
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