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第8話 第三王子 3
しおりを挟む三度目の目覚めは、最終学年が始まる前の日だった。
最初と二度目……そして、三度目の今日までの記憶。
覚えているそれは、何かが少しずつ違っていた。
前二回とは違う彼女の言葉。
違う視線。
違う動き。
私に近づきながら、私に怯え、私を見つめながら、目が合うと私から視線を反らす。
私の気持ちを窺いながら、少しも心を許さない。
いつも笑っているのに一度たりとも、私が好きだった笑顔を見せない。
何かにすがるように、確かめるように、偽物の笑顔を貼り付ける。
私は必死に彼女の手を握ろうとした。
決して離れないために、失わないために……。
なのに、あの女が現れると、私の意思とは関係なく私の行動は前と同じように進んで行った。
否定しようとしても、逃げようとしても、駄目だった。
一度目と同じ行動を、私はするのだ。
結果、彼女は死に、また目覚める。
四度目は、最終学年が始まる日だった。
前以上に私は頑張った。
自由にならない体を必死で自分の意思で動かそうとした。
彼女のために……私のために。
だが、結果は同じだった。
女が現れれば、私は何もできなかった。
ただ流されるままに、同じ道をたどった。
そうして私は何度も失敗し、何度も目覚めた。
彼女は何度も、何十度もありとあらゆる方法で私の側にいようとしてくれていた。
それがどんなに嬉しくて、どんなに悔しいか。
なのに、私に出来る事は何も無いのだ。
私が目覚める日は、二度目の目覚めから一回ごとに一日ずつ遅くなっていった。
やがて女との噂が蔓延している状態の時に目覚めるようになった。
目覚めた私は何の武器も持たないまま、彼女が退けられるのを見ているしかない。
私は、頑張る彼女に聞きたかった。
君は、覚えているのか、と。
けれども、聞けなかった。
私が思うように動けないのもあったが、彼女の答えが、怖かった。
彼女が覚えていても、覚えていなくても、私は彼女を救えない。
だから、私はまた、彼女を失うのだ。
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