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第14話 父親 1
しおりを挟む私には、愛すべき妻と、息子、そして娘がいる。
結婚してすぐ息子に恵まれ、それから三年後に娘が生まれた。
子の誕生は嬉しかった。だが、なぜ娘だったのかと思ったのも確かだ。
もしこれが一年前か、数年先ならそう思わなかっただろう。
第三王子が生まれた、その同じ年に女として生まれてしまった事で、娘が将来苦労すると感じたからだ。
第三王子の母親は後ろ盾の無くなった正妃だった。
友人でもあるこの国の王は、そんな正妃を本当に愛していた。
世論に負けて、二人の側室……第二妃と第三妃を娶ったが、それはある意味契約結婚だった。
二人の側妃は正妃より先に男児を一人ずつ産んでいるが、最初から王位継承権を放棄する手筈になっていた。
王妃が産んだ第三王子を次代の王とするべく、王はこの国の高位貴族の娘を王子の妻にすることを考えていた。
そうして一番先に白羽の矢が立ったのが、私の家だった。
王妃の懐妊から半年、私の妻が妊娠した。
二人の側妃同様、妻もまた正妃を信頼する一人だった。
すぐに妊娠は王に知られることになる。
生まれる前から、もし娘が生まれたら是非第三王子の嫁にと打診してきた。
娘が生まれたら考える。
そう答えたが、娘が生まれてすぐにまた婚約が打診された。
私は子供たちが、苦労無く幸せであって欲しいと願っている。
生まれた時から王妃への道が、嫁に行く事が決まっているなど、考えられなかった。
それも、まだどんな成長をするのか分からないような者へなど。
私は、断ることにした。
何度も、何度も……私は断った。
だがあまりのしつこさに根負けし、条件をつけて了承した。
ある程度の年齢になるまで、婚約は仮のものとすること。
それまでは二人を会わせず、会わせてからも暫くは相性を見て、二人が望めば本婚約とすること。
そして、その婚約はどちらかが望めば、いつでも解消できることと。
不敬とも思われそうな条件を、王と正妃はすぐに飲んだ。
そうして、娘は未来の王妃としての道を歩み始めた。
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