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第八章 ヘタレパパ
第二十話 プロ野球チームを作ろう!
しおりを挟む「ショート!」
クリスが声を出しながら鋭くバットを振ると、二遊間に鋭い打球が飛ぶ。
「6-4-3!」
ショートのシルが打球を捕球してセカンドベースに入ったミリィに送球し、捕球したミリィはセカンドベースを踏むと即座にファーストへ送球する。
「ナイスゲッツー!」
クリスがやたら張り切って声を出しながらノックを続けていく。おかしいな……。
野球の授業が始まってまだ一ヶ月も経過してないのにすごく上手いぞこいつら。
「ライト―!」
しばらく内野を守る連中の動きに感心していると、クリスの声が響く。あ、ライトは俺か。
キィン! という金属バットと硬球の組み合わせの快音が響くと、白球が右中間に飛んでいく。
センター方向に走りながらなんとか打球に追いつきグラブで捕球することができた。
三塁にランナーがいる想定ではなかったので、バックホームではなくセカンドのミリィに返球する。
ちなみに魔法の使用は禁止されているので疾風は使えない。
ベンチで見学してるエリナとクレアが俺に向かってぶんぶん手を振っている。
声を出せないってことはエマかミコトが寝ているんだろう。
防御魔法で結界を作って内部は保温魔法で寒さとは無縁だろうからなあのベンチ周辺は。
更に防音の魔法も使ってるかもしれないので、こちらも手を振って応える。
クレアに抱かれたミコトは動かないから寝てるんだろう。あいつに見せるために外に出て来たのに……。
「ナイスライトー!」
クリスがあんなに声を張りまくるのは珍しいな。やたらと野球に詳しいし。
あと褒められてちょっとうれしい。
そういやなんで俺はライトを守ってるんだ? と思いながらも淡々とノックを受けていく。
離れた場所では職員らしき大人がバッティングピッチャーをやって、ガキんちょがバッティング練習をしていたり、キャッチボールをしたりしていた。
全校生徒がグラウンドにいるみたいだな。職員も総出で球拾いやらの裏方までやっている。
「ではそろそろお昼にしましょう! 今日は体育館に給食の用意がしてありますので、入り口で汚れを落としてから入館してくださいね!」
「「「はーい!」」」
クリスの合図でぞろぞろとガキんちょどもが体育館に向かう中、俺はエリナたちのもとへ向かう。
エマが寝ちゃってるなら家のリビングで飯かなと思いながら歩いていると、アイリーンがエリナと一緒にベンチに座っているのに気付いた。
「閣下、プライベートの時間に申し訳ありません」
「いや気にしないでいい。一緒に飯食いながら話すか」
「ありがとうございます」
「お兄ちゃんやきゅうも上手なんだね!」
「兄さまお上手でしたよ」
「ありがとな。軟式ではお遊び程度でやってた程度だったから、いきなり硬球でビビったけど何とかなるもんだ」
「お兄ちゃん、お昼ご飯はリビングの方に準備してくれるって」
「おう。じゃあ行くか」
アイリーンがすぐに報告しないってことはそこまで緊急じゃないってことか?
少し気にしつつも、クレアの洗浄魔法で汚れを落としてもらいリビングに入る。
リビングでは丁度職員が料理を並べてくれていたが、アイリーンの姿を見てすぐにひとり分を追加してくれた。
ついでに食事をしながら仕事の話をするなら給仕が必要だろうと、給仕までしてくれることに。
気の回る人材を採用してくれとクリスに言っておいたが、流石だな。
「で、アイリーン。緊急の要件か?」
「閣下の決裁を頂ければ本日の仕事が終わりなのです。明日は休暇ですのでついでに今日の午後から泊ってこいと言われまして……」
「おお、ちゃんと周りの奴もそういう気づかいができるようになってきたな」
「はい、予算補正も終わりましたし少し余裕も出てきました」
「良いことだ。アイリーンは働き過ぎだからな。んでその決裁する書類は?」
「こちらです」
アイリーンが差し出してきたその一枚の書類を見ると、野球チーム結成に関するものだった。
「騎士団と領兵で二チーム作るのか」
「はい。まずは二チームでリーグを発足したいと思います」
「実業団の社会人リーグみたいなもんだな。プロ野球選手が生まれるのはまだ先か」
「そうですね、まずは普及させないことには」
「ガキんちょどもが職業を選ぶころにはプロスポーツ選手が選択肢になるような土壌を作っておきたいが」
「そうですね。私も頑張ります」
「アイリーンはそんなに頑張らないでいいぞ……」
書類を見ながらサンドイッチを口に運んでいく。
野球の練習に伴う騎士や一般兵のローテーションの変更だとか、特別手当だとか、野球道具購入費用だとか並んでいるが、まあ問題ないだろう。
というか俺が見てもわからん。必要経費もそれほど多いわけじゃなかったし。
マジックボックスから取り出した決裁印をペタンと押してアイリーンに渡す。
「ありがとうございます」
「しかし練習場が学校のグラウンドとは」
「授業や放課後などで児童が使用している場合は除きますけどね」
「専用グラウンドはあったほうが良いよなあ」
「城から近い場所で野球ができるほど広い場所というのはなかなか難しいですね」
「ならいっそのことガキんちょどもが練習してる時は一緒に混ざってやるか」
「身体能力の差や技術レベルの差などありますが、騎士や兵が児童に野球を教えるというのは良いかもしれませんね」
「練習試合とかも組めるかもな。しかし例えるならプロと少年野球がやるようなもんか?」
「野球自体が新しいスポーツですから、閣下の世界のような差はそれほどないのではないでしょうか」
「まあやってみてだな。手探りになるのはしょうがないし。ま、アイリーンはこれで仕事は終わったんだからとりあえず昼飯を食え」
「はい」
スープも食べてみるが、味はクレアの作ったものに近いな。このレベルを給食で維持できるのは凄い。
一食当たりの材料費は孤児院で出してた頃よりかなり抑えてるはずなのに。
アンナの母親や職員の腕前に関心しながら、今日はどうやってアイリーンを寝かしつけるか考える。
どうせ読書しながら寝ますとか言ってアイリーンに用意した部屋に書類やらを持ち込もうとするんだろうな。
結局今日もクリスの魔法で強制的に寝かせることにりそうだ。
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