ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
176 / 317
第八章 ヘタレパパ

第五十八話 安心のフルオプション

しおりを挟む


「兄さま随分ロイドさんと話し込んでましたね」

「魔導士協会の連中が魔導駆動車に無駄な機能をてんこ盛りにしてたんだよ。魔力消費を減らせば積載量や移動距離も増えるし、何より量産に向くだろ」

「……なるほどですね」


 やたら多いボタンや多機能な魔導炊飯器を見たばかりのクレアは、苦笑しながら俺と爺さんの前に昼飯のBLTサンドとポタージュスープを並べる。


「とはいってもトーマよ。試作段階でとりあえずコスト度外視で革新的技術をてんこ盛りにするっていうのは宇宙世紀じゃ当たり前と異世界本で見たぞ」

「試作機が高性能なのはあのシリーズだけだからな。欠点の洗い出しが終わったあとに再設計されて量産された方が普通は高性能だから」

「じゃが魔導ハイAはここから機能を省いたほうが手っ取り早いじゃろ?」

「普通は試作する前に設計段階でやるんだよ。とりあえず作ってみよう的なノリで作るお前らの方がおかしいの。というかその名前で呼ぶのやめて」

「トーマはほんと細かいのう」


 憮然としながらもクレアの作ったBLTサンドをぱくつく爺さん。「うむっ! 美味いぞクレアの嬢ちゃん!」「てへへ、ありがとうございますロイドさん」とやり取りしてる。
 昼飯はいつも学校給食を分けて貰っているのだが、今日は爺さんが来て人数が増えたのでクレア手作りの飯になったのだ。
 客の分まで給食を出しちゃうと会計処理が複雑になるという理由でアイリーンが宿泊する日の昼食もこのスタイルだ。というかなんだかんだ理由をつけてクレアが昼飯を作りたいだけなのはわかってるので黙ってるけどな。


「爺さんそれで何人前だ」

「四人前ってところかのう」


 ……給食を分けて貰ってたらお代わり分が足りなかったな。
 クレアが昼飯を作りたいんじゃなくてこうなることがわかってたからなのかも。
 アイリーンは俺と同じくらいしか食べないからな。


「お兄ちゃん! 私もそのまどうはいえーを見たい!」


 エマに授乳してたのか、エマを抱いてリビングに戻ってきたエリナが魔導駆動車に乗りたいと言い出してくる。


「そうだな、せっかくだし少し試運転するか。区画整備の工事状況も見たいし。あとその名前はやめてねエリナ。魔導駆動車だぞ。魔導駆動車」

「わかった! まどーくどうしゃね!」


 素直でアホ可愛い俺の嫁が今は一番の癒しだな。


「爺さんいいだろ?」

「もちろん。望むところじゃ!」

「兄さま私とミコトちゃんも良いですか⁉」

「ああ、良いぞ。あまり面白くないかもしれないがな」

「わー!」


 クレアの年相応の喜びの声に満足感を覚えつつ、メイドさんを呼び騎兵十騎を魔導駆動車の周囲を守らせる為に集まるように伝える。


「勝手に兵を動かしたけど平気かな? クリスかアイリーンに先に話を通しておくべきだったか」

「トーマお前領主じゃろ……」

「一応な……」

「お兄ちゃん……」

「兄さま……」


 なんとなく沈んだ空気の中食事を続ける。
 ミコトが終始俺に話しかけた層にこちらをうかがっているが、ミコトは賢いのでアイリーンや爺さんと話していると、仕事中だと理解して遠慮するのだ。かしこ可愛い。


「ミコトー。飯食い終わったか?」

「あい!」

「じゃあ他の人が食べ終わるまでパパと遊ぼう!」

「ぱぱおしごとないの?」

「みんなが食べ終わるまではミコトと遊んでいいんだぞ」

「あい!」


 ぽててとクレアの横から俺の膝の上に乗ってくるミコト。
 わしゃわしゃとミコトの柔らかく艶やかな黒髪を撫でまわすと「きゃっきゃ」と大はしゃぎだ。


「チャイルドシート作らないとな」

「あるぞい」

「予想は付くけど一応聞いておく。何故だ爺さん」

「メーカーオプション品に乗っておったからの。ルーフキャリアとか一通りあるぞい」

「ほんと無駄だな。チャイルドシートに関しては助かったけど」

「な、役に立ったじゃろ?」

「それにどれだけ予算かけたんだよ」

「アイリーンの嬢ちゃんからは金貨十枚しか貰っとらん」

「一千万円相当って流石に少なくないか……。量産された後なら三、四台は買える価格だけど新規開発の試作品だろ?」

「元々魔導コンバインの改良はやってたしの。アイリーンの嬢ちゃんからはガワだけ作ればいいじゃないかと。あとは魔導エンジンの高効率化なんかじゃの」

「言われたとおりにガワだけ作っておけばよかったのに」

「ま、半分以上趣味じゃし面白がってつけた機能だからの。トーマは気にしないでよいぞ」

「当たり前だ、勝手にそちらでつけた機能に金を出せるか」

「採用されれば儂らのパテント料が乗ったんじゃがの」

「知らん知らん」


 俺の膝の上で終始ご機嫌なミコトをあやしながら相変わらずな魔導士協会の連中にあきれ返る。
 とはいえ魔導駆動車があれば移動は大分楽になるんだよな。エマやミコトを連れて遠出ができるようにもなるし。

しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...