ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
183 / 317
第九章 変わりゆくヘタレの世界

第一話 新しい日常

しおりを挟む

「パパ!」


 五歳になってすっかり女の子らしくなったミコトが俺の胸に飛び込んでくる。
 お出かけ用の服を着て興奮を隠せないようだ。


「おっと、ミコトは元気だなー」


 凄い勢いで飛び込んでくるミコトをキャッチして抱き上げる。


「うん! きょうはまどーゆーえんちだからね!」

「ミコトは魔導遊園地がお気に入りだな」

「たのしいもん!」

「そか」


 抱っこしていると着替えを済ませてエリナとエマが手をつないでリビングに入ってくる。それを見たミコトが「あ! えまちゃん!」と、もぞもぞと俺の腕から抜け出ようとする。


「ミコト、危ないから降りるときはちゃんと言いなさい」

「はい!」


 素晴らしい返事に満足した俺はゆっくりとミコトを降ろす。ミコトは早く早くと急かすようにパタパタ足をばたつかせながら、着地した瞬間にぽててーとエマに駆け寄ると同時に抱き着く。


「みこねー!」

「えまちゃん!」


 ぎゅっとお互いにハグし合う幼女ふたり。お前らさっきまでずっと一緒だっただろ……。


「お兄ちゃん、アランはやっぱり先に行くって」

「ミコトとエマがすぐいちゃいちゃするから時間がかかるんだよな」

「本当に仲が良いよねー」

「遅刻したら武器屋、いや専属刀鍛冶師の親父がうるさそうだからな」


 様々な職業を体験学習をさせる授業を学園で取り入れた際に、一号が刀を打ちたいと言い出したのでこの春から専属刀鍛冶師の親父のもとに就職が決まったのだ。
 採用試験期間を経ての就職なので適性があったんだろうが、よくあんな偏屈そうな親父の下で働けるな一号は。怒鳴られたりして無いか心配だぞ。


「アランなら大丈夫だよお兄ちゃん!」

「しかしなーあの親父だぞ?」

「お兄ちゃんの心配性はずっと治らないよねー」

「あの親父以外の就職先ならなんの心配も無いんだが」


 一号の心配をしているとクレアがリビングに入ってくる。
 身長もエリナを追い抜いたし、身長以外も色々追い抜いてる我が家の成長有望株だ。
 その内クリスみたいに育ちそうで恐ろしい。まだ十四歳だぞクレアは。
 エマの授乳期間もとっくに終わって、カップのサイズが元通りになってしまったエリナをちらっとみるが、相変わらずアホみたいにニコニコしてて可愛い。身長もほとんど伸びなかったから、もう二十歳だというのに出会ったころとほぼ変わらないままだ。


「兄さま、お弁当の準備が終わりましたよ」

「一号は先に出ちゃったぞ」

「アランにはもうお弁当を渡しましたから大丈夫ですよ」

「じゃあ魔導遊園地に行くか。ミコト、エマ、イチャついてないでさっさと車に乗るぞ」

「「はい!」」

「返事だけは良いんだよなー」

「いこ! えまちゃん!」

「うん! みこねー!」


 二人で手をつないで玄関に向かうミコトとエマ。ほんとラブラブだなこいつら。
 来年からミコトは学園に通うことになるんだけど大丈夫かな? 離れるのを滅茶苦茶嫌がりそうだな。


「うーん、特例でエマも入学させちゃうか」

「お兄ちゃん何言ってんの?」

「兄さまがまた変なことを……」


 ラブラブな二人を追いかけるように玄関へと移動中、俺の漏らしたつぶやきに帰ってくる嫁二人の言葉が辛辣過ぎだ。


「来年ミコトが学校に行くようになったらあの二人どうなるんだと思ったらな」

「あーそうだね、離れたがらないだろうねー」

「大丈夫だと思いますけどね」

「俺は二人してギャン泣きすると思うぞ」


 ミリィも学園設立時の生徒が少なかった時とはいえ五歳で入学したからな。
 エマは来年四歳になるから無理やりねじ込むのは可能だろうが露骨に特別扱いするのもな。
 などと考えながら、玄関を出てすぐの駐車場に置かれた魔導駆動車に乗り込む。もうエンブレムも何も外したからハイAでも何でもないのだ。


「パパ! きょうはえまちゃんがまえだよ!」

「わかったわかった」


 ミコトとエマのうち、どちらが助手席に乗るかは二人でやり取りして決めているのか、毎回指定されている。
 チャイルドシートのサイズがミコトとエマで違うので、毎回付け替えなければいけないのがめんどくさいので一週間単位とかで決めてほしいんだが、どうせ帰りはミコトが前に来るんだろうなと思いつつ、チャイルドシートの設置をする。


「ぱぱ! だっこ!」

「はいはい」


 大好きな助手席に乗れると待ちきれない様子のエマを抱っこしてシートに乗せてやる。
 後部座席では、ミコトがエリナとクレアの間に設置されたチャイルドシートに座らされていた。


「じゃあ行くぞー」

「「「はーい!」」」

「返事だけは完璧なんだよなうちは」


 魔導駆動車で南にある最近完成したばかりの魔導遊園地へ向かう。
 魔導駆動車はまだ一部貴族が馬車の代わりに用いてる程度だが、魔導駆動バスは昨年から領内の巡行運行を開始し、領民の足となっている。
 そのため、魔導駆動車の領内での運行ルールが定められたり、走行可能な箇所などの細かな法令が作られたのだ。
 なので今は護衛騎士の随伴も無く、普通に魔導駆動車のみで移動している。ミニスカメイドさんは見えないところで様子をうかがっているだろうけどな。


「ぱぱ! あれ!」

「まーた魔導士協会本部ビルが増改築してるな……」


 やたらと巨大化した魔導士協会本部ビルはもはや収拾がつかない状況だ。
 以前ゴーレムの研究とか言い出して魔導士協会本部ビルを人型に変形させようとしたときは、新たに制定した建造物規制法を盾に超高額な制裁金を取るぞと脅して断念させたんだが、また法令の隙をついてやらかしてるなあれは。


「パパ! ミコトあのおうちにいきたい!」

「あそこは危険だから駄目」

「えー!」

「これから行く魔導遊園地の方が楽しいぞ。ミコトは行かなくてもいいのか?」

「そうだった!」


 チョロいのは我が家の伝統なのか、すっかり魔導士協会本部ビルへの興味を失ったミコトに安心して車を走らせる。
 また今日も騒がしくも楽しい一日が始まる。
 そう思うと自然とアクセルを踏む足が軽くなるのだった。
 それでも法定速度を超えないのは俺がヘタレだからではなく道路交通法で定められているからだぞ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...