197 / 317
第九章 変わりゆくヘタレの世界
第十五話 追われる身
しおりを挟む「じゃあ仮採用ということで面接は終わりだ」
「ありがとうございます! 頑張ります!」
「魔素の研究費に関してはできるだけ優遇するつもりだが……。爺さん、魔導士協会からも出資しないか? 共同研究に参画させてやるから」
「ぐぬぬ……。また儂らから搾り取る気かトーマよ!」
公式の場ではあるが、面接が終了したので爺さんは砕けた口調になる。
というかそんなに搾り取ってるのかアイリーンは。たしかにクレア印の調理魔導具の特許料は結構な金額だったが。
ちらりとアイリーンを見ると、にやりと口角をあげていた。怖い。
「今回は俺が聞いただけでも難しそうだし費用も掛かりそうだからな。魔導士協会に対して優遇案をアイリーンと検討しておくから手伝ってくれよ爺さん」
「……どちらにしても魔素を取り込んで蓄積する技術というのは魅力じゃしの。わかったぞい」
「じゃあ解散! マリアはどうするか……」
「旦那様、仮採用の間はうちで過ごしていただきましょう」
たしかにクレアとクリスがいれば防衛面では安心だし、シルもエリナもいるしな。
ガキんちょもいるから巻き込まれないか不安だけど、アイリーンを見ると何か側近に指示を飛ばしてるから厳重な警戒態勢を敷きそうだし問題ないだろ。
「わかった。じゃあ今日はマリアの歓迎会をするか。クリス、マリア、市場で食材を買ってから帰るぞ」
「かしこまりましたわ旦那様」
「お世話になります!」
クリスとマリアを伴って城を出る。
馬車には乗らないで市場までてくてくと歩いていく。
「そういやマリアは好きな食べ物とかあるのか? エルフって何を食べるんだ? 野菜とか?」
「へ? エルフが野菜好きって初めて言われました」
「旦那様、エルフはむしろ動物性たんぱくを好んで食べる狩猟民族ですよ。そもそも農耕をほとんどしませんので」
「え? そうなのか。自然と共生してるイメージだった」
「旦那様の世界の書籍でもエルフは弓使いのイメージではないですか」
「そういやそうだな、狩猟してるよな。畑を耕すエルフってイメージできないし」
「それにこちらの世界のエルフは耳は尖ってませんし」
「え? マジで?」
「耳が尖るってどういう構造なんですか? 私は普通だと思いますが」
マリアが髪をかき上げると、隠れていた耳が見える。たしかに尖ってない。俺たちと同じ形だ。
「ただしマリア殿は、随分とこちらに伝わるエルフ族とはかなりイメージが違いますが……」
「それは自覚ありますね。私以外のエルフ族は髪を短くしませんし、体形も貧相ですから」
「貧相?」
「旦那様、エルフ族の女性は細身なのです」
「なるほど」
細身なのにEカップはありそうなマリアの胸をチラ見する。
ふむ、マリアは例外なのか。なら細身、貧乳という俺のイメージは前の世界と変わらないな。
「あの……旦那様?」
「すまんすまん、なんというか認識の違いというか確認というか……」
「あっ! おいそこの姉ちゃん!」
ジト目で俺を睨むクリスに釈明をしていると、明らかに一般人じゃない風体のおっさんがこちらに声をかけてくる。
「あっ! あの時の……」
「防御結界」
クリスが俺とマリアの前に立ち防御結界を展開すると同時に、俺もマジックボックスから愛刀の一期一振を取り出す。
しまったな、シルも一緒に連れてくればよかった。あいつにはそのまま騎士団の連中と警備のローテーションについての打ち合わせを任せてしまったのでここにはいないのだ。
ぶっちゃけシルがいなくてもその辺の打ち合わせとかは問題ないしな。
「おう姉ちゃん! 随分と探したぜえ!」
「まておっさん、この娘とどういう関係だ」
ちと怖いがクリスもいるし相手は武装もしてないおっさんだ。何とかなるだろうと、一期一振を見せながらおっさんに問いかける。
以前シルとの対決の時のようにクリスは俺たちにぴったりと合わせた防御結界を展開していた。
マリアはそんな結界に気づいてないようで、ただ顔見知りなのかおっさんの顔を見て気まずそうな表情をしている。
「おいおい、武器をちらつかせるな。こっちはアンタじゃなく、こっちの嬢ちゃんに話があるんだからよ」
「だから要件を言えっての」
「ちっ……そこの嬢ちゃんに金を貸してるんだよ。銀貨十枚」
「えっ! 私が借りたのは銀貨五枚じゃないですか!」
「おいおい、契約書をちゃんと確認したのか? 複利で今はもう銀貨十枚になってるんだよ」
「そんな!」
「おい待ておっさん。それって闇金融だろ」
「うるせーぞアンタ。こっちはそういう契約で身分証も無いそこの姉ちゃんに金を貸したんだ、リスクも抱えてるんだから高利なのは当たり前だろ」
「普通に違法だからなそれ」
「うるせー関係ないやつは黙ってろ! それともお前が銀貨十枚を代わりに払うか?」
「メイドさーん」
「はっ、お側に」
困ったときはメイドさんに任せよう。
「このおっさんを拘束。んで組織のメンバーとか事務所の場所をゲロさせちゃって」
「「「はっ」」」
「えっえっ?」
いつの間にか三人いたメイドさんにあっという間に制圧されて縛り上げられるおっさん。
「おいおい、待てよ! 俺が何をしたって言うんだ! っていうかそもそも誰なんだお前は!」
「お前は貸金業規制法違反だ。というか貸金業は官営でしか認めてないから。あと俺はここの領主な」
「なっ!」
「はいはい、メイドさんよろしくね」
「「「はっ」」」
縛られたおっさんがメイドさんに連行されていく。
貸金業自体は元々身分証で収入が把握できてたから官営でやってたんだけど、身分証の無い連中相手に金を貸してるのもいるんだなあ。
身分証を比較的取得しやすいようにしつつ、こういう業者は潰していかないと。
「クリス」
「申し訳ありません旦那様。すぐに闇金業者の撲滅と、身分証を発行しやすくするための法案を作成致します」
「あれ……? 私もうお金返さなくていいんですか?」
「んー、まあ返す相手も組織も無くなるからなあ」
「ありがとうございます! センセ!」
「いやいや、先生ってなんだ。それにもしあいつの組織がまともな業者だったら、貸金業務はできなくなってもほかの業種で生き残るかもしれないし、お前への負債が完全に消えたわけじゃないぞ。利息もまともな利息で計算されて請求起こされるかもしれないし」
「いやいや! あないな高利悪徳業者がまともなわけあらしまへん! こらうちの丸儲けいうやつや!」
「なんで急に方言出てるのお前……。京都弁かこれ」
「おおきに! おおきになセンセ!」
キラッキラした目で俺を見ながら京都弁? でお礼を繰り返すマリアを見て、なぜ俺の周りにはまともな奴が少ないんだろうとため息をつくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる