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第九章 変わりゆくヘタレの世界
第十六話 駄目ルフ
しおりを挟む闇金のおっさんが無事連行されたあと、再び市場に向かって歩いていく。
「あのさあマリア」
「センセなんでしょ?」
「お前他には借金してないよな?」
「……」
「おい……」
「いやあのセンセ! どうしても技術研究には資金が必要で! というか一昨日の野球の試合でファルケンブルク兵士チームが勝ってたら完済出来たんです!」
「お前借金してギャンブルしてたのか」
「ちゃいます! ファルケンブルク兵士チームを応援してただけです! 勝ったら掛け金が五倍になるおまけ付きで!」
「こいつも駄目な感じか」
「センセ! 見捨てないで! 公費で研究させてください!」
「本音はそこか駄目ルフ」
「だめるふ?」
「お前のことだぞ。研究自体はさせてやるけど、プライベートで自由に出歩きはさせないし賭け事は禁止な」
「えー」
「おいそこの緑髪の女!」
「またかよ……」
結局買い物が終わるまでに五回ほど闇金の取り立てと遭遇したのだった。こいつ、全額一昨日の野球の試合に賭けてやがった、アホすぎる。
闇金業者ホイホイとしてこのまま町の中を一周するかな?
というかどんだけ借りたんだこいつ。
「センセ! ほんまおおきに! 無一文なのは変わらないけど借金は全部無くなりました! 多分!」
「借りた業者の数すらわからないとかお前本当にアホだろ」
「でもでも! 怪しい人たちからしか借りてませんから! 善良な個人商店でツケたり無銭飲食したりしてませんから!」
「当たり前だ、そんなことしてたらお前も逮捕するところだったわ」
「でもこれで綺麗な体に!」
「返済したわけじゃないからな。罰則だけで済むような業者がいたら元本だけでも返さなきゃならない可能性があるんだからな」
「えー」
「ガキか」
「私は百四十歳ですからね、センセたちより年上だと思いますよ?」
「百四十歳って……。やはりエルフは長寿なんだなあ」
百四十歳であの金銭感覚かよ、知能が追い付いてないぞ駄目ルフ。見た目は胸が育ってる以外は十四歳にしか見えないけどな。
実年齢は見た目の十倍って考えればわかりやすいか。いや見た目だけじゃなく知能もそんなもんかもな。
「エルフ族というか、魔素や魔力と相性が良いと長寿になるのはこの世界では当たり前ですよ旦那様」
さっきまで自分の侍女と打ち合わせをしながら歩いていたクリスがとんでもないことを言い出してきた。
「え? じゃあラインブルク王国でも有数の使い手のクリスも千歳くらいまで生きるのか?」
「いえ、平均寿命が千歳というのはエルフ族のみですね。わたくしたちの場合はどれだけ魔力が高くてもせいぜい百五十歳というところでしょうか? 過去には二百歳を超えたという人物もいたようですが……」
「じゃあ爺さんは何歳なんだ? 聞いたこと無かったけど」
「百十歳ですね、十年前に百歳祝いのパーティーをした記憶がございますから」
「爺さんは見た目が六十歳とか若く見えたけど百歳越えなのかよ。俺も寿命伸びるのかな?」
「そうですわね、わたくしもそうですが、旦那様もまだ魔力総量が伸びてますので、この調子なら二百歳まで生きられるかもしれませんわね」
「ここにきて衝撃の事実を知ったわ」
「ですので子作りはクレアちゃんのあとでも構いませんわ旦那様」
「だから遠慮してたのかお前は……」
クレアに子どもが生まれるまではってずっと言ってたんだよなクリスとシルの二人は。
随分と気を使ってるけど、年齢のこともあるしって考えてたらこういうカラクリだったのか。
それにしても魔力を抱えてるほど寿命が長くなるというのは衝撃だな。
ガキんちょども全員が魔力持ちだからどうしようかと思ってたけど、こうなったら魔力を増加させる研究なんかもしたほうが良いんだろうか?
「センセ! センセ! 私お腹が空きました! 一文無しなので一昨日から何も食べてないんですよ!」
家に向かっててくてくと歩いているとマリアがお腹を押さえながら空腹を訴えてくる。
一昨日って食事代も全て賭けてたのか、想像以上に駄目だなこいつ。
「ギャンブルしたからだろ……。まあもうすぐうちに到着するし、すぐ飯を作ってやるから」
「うー、食事できるまで時間かかりますか?」
「じゃあ少しお菓子を出してやるからそれ食って待ってろ」
「わかりました!」
家に着いたらマジックボックスに収納してあるラスクでも出してやるか。
最近ラスクのストック貯めるのサボリ気味だったから晩飯ついでに作っちゃおう、休日にラスクが無いとミリィがうるさいからな。
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