ヘタレ転移者 ~孤児院を救うために冒険者をしていたら何故か領地経営をすることになったので、嫁たちとスローライフを送るためにも頑張ります~

茶山大地

文字の大きさ
206 / 317
第九章 変わりゆくヘタレの世界

第二十四話 エカテリーナ・メディシス

しおりを挟む
 第二十四話 エカテリーナ・メディシス



「姉さん! 姉さん‼」

「おいおい、マリアの嬢ちゃん。おぬしの妹か? さっきから呼んでおるぞい」

「はへ?」


 爺さんにセグAを説明していたマリアが、爺さんに言われてやっと自分を呼ぶ人物の存在に気づく。


「もう! 姉さん!」

「あれ? エカテリーナ? なんでここに?」

「昨日の夜、姉さんが行使する魔素を感じたのよ」

「昨日の夜……? ああ! セグAを起動したわ!」

「それで探しに来たら、先ほどまた姉さんの魔素を感じたのでここに来たの」

「エカテリーナの魔素探知能力は国で一番だしね」

「エルフ国からこんなすぐそばであんなに大量の魔素を行使したら誰でもわかるわよ……」

「そっか、北門ならともかく南門はエルフ国に近いからね。ここは遮蔽物も無いし」

「で? 姉さん研究の方はどうなの? 『十年でなんとかモノにします』と言って人の良い王様から研究資金ふんだくっておいて、何の成果もあげてませんじゃ流石に罰せられると思うわよ?」

「まだ五年あるし! それに良いパトロンを見つけたから!」

「かなりの額の研究資金を要求しておいてパトロン? 魔素の技術は流出しても普人には関係ないだろうけど、関連技術でエルフ国が不利な契約になるようなのは問題あると思うわよ?」

「その辺はホラ! 美味しいところは渡さないとか色々工夫できるし!」


 マリアとは違って、美しい長髪を持ち控えめな胸をしているエカテリーナと呼ばれたマリアの妹とマリアがいきなり言い争いを始める。
 というかパトロンって俺の事か? あとパトロンと関連技術の開発を手伝ってくれる予定の爺さんの前で不穏な発言はやめろ。
 この場にクリスとアイリーンがいてくれて助かった。
 マリアの妹から色々確認しておかないと、うかつに魔素研究に手を付けられん。


「クリス、アイリーン」

「「はっ」」


 エカテリーナに対して警戒していたクリスが、マリアの妹だとわかったため警戒を解きつつ、マリアと口論中のエカテリーナに声をかける。


「まったく姉さんは! 五年間なんの連絡も無ければ研究報告も皆無だなんて!」

「あの、エカテリーナ殿でよろしいでしょうか?」

「はい? あ! 申し訳ありません! 私、マリアの妹のエカテリーナ・メディシスと申します! 姉がお世話になっております!」

「わたくしファルケンブルク伯領主夫人、クリスティアーネ・クズリューと申します」

「りょ……領主夫人様……」

「はい。以後お見知りおきを」

「姉さん! 大物やないか!」

「せやろ⁉」


 あれ? 妹の方はまともだと思っていたけど、姉と一緒なのかな?


「今日の出の勢いのファルケンブルクをパトロンって姉さん大手柄やわ!」

「仮だけどすでに採用試験もパスしたんやで!」

「ファルケンブルクは数年以内にはラインブルク王国を滅ぼして乗っ取るって噂やしな!」

「せやせや!」

「待て待て! なんかとんでもない噂が出回っててドン引きしたわ! なんだ乗っ取りって!」

「あ、エカテリーナ、紹介するわ。何を隠そうこの方が、いずれファルケンブルク王になられるファルケンブルク伯領主トーマ・クズリュー閣下や」

「これは国王陛下! このような格好で大変失礼を致しました! 私エカテリーナ・メディシスと申します。以後お見知りおきくださいませ」

「国王陛下って呼ぶな! 不敬だわ! あとラインブルク王国を乗っ取る予定もないし理由もない!」

「しかしすでに亜人国家連合を属国化させた上に、魔導戦力も拡充してあとは決起するだけだとエルフ国ではもっぱらの噂ですが……」

「エルフ国も変なのが多いのかな? 亜人国家連合は属国じゃなくて友好国だし、ラインブルク王国とも関係は良好だ」

「エルフ国の国民は基本引きこもりだらけですからね……。個人商会で細々と生活必需品などを交易してるくらいで、外界の情勢などは主にそこからしか入ってきませんから」

「交易?」

「はい。交易」

「どこと?」

「一番近いファルケンブルク領ですね」

「えっ?」

「えっ?」


 エルフ国と交易してた? うちが?
 そんな報告受けてないんだが。


「クリス?」

「いえ、わたくしも初めて聞きました」

「アイリーンは?」

「私も初耳です……」

「交易と言っても一ヶ月に馬車数台程度の取引量しか無いですしね」

「小口だからわからなかったってことか?」

「あり得ますね……チェックの厳しい魔石や魔導具ならともかく、食料や鉱石程度なら特に輸出入の規制も無いですし」


 クリスが少し考えながらそう発言をする。


「亜人国家連合の特産品以外には関税もかけてないからな。魔物の肉や素材に関しては冒険者登録無しでも普通に引き取ってもらえるし」

「閣下、一刻も早くエルフ国へ有効使節団を派遣しなければなりませんね。マリア殿の件もありますし」

「もうバレたしな」

「エルフ国が支援してる技術研究に我が領が参画しても良いのかという大問題が」

「担当のマリアがパトロン発言してたしな」

「センセ! それは言葉のアヤっちゅーもんや!」

「うちの金を使って開発した技術なのに、不味いところしか貰えないんだろ?」

「いや、その……」

「国王陛下」

「国王陛下はやめろ妹」

「では閣下、私のことはエカテリーナとお呼びください。それと研究開発に関してはエルフ国国王と交渉してみてはいかがでしょうか?」

「もうそうするしかないよな。まさかマリアが研究資金ふんだくって逃げてたとか知らなかったし」

「ううう……」

「エルフ国の国王はお人好しですから簡単に騙せると思いますよ?」

「自分の国の王への扱いが酷い」

「姉さんに簡単にお金出しちゃうくらいですからね」

「エルフ王国に全く伝手が無い状態だから、マリアとエカテリーナに協力してもらっていいか?」

「それはもちろんです。姉もここで採用されなければ研究を続ける目途も無く、研究資金を持ち逃げしてるような状況でしたからね」

「任せてくださいセンセ!」

「いまいち不安だが、ほかに伝手が無いから我慢するか……」

「そんなセンセ!」

「クリス、アイリーン。そういうことだから使節団の調整を頼む。できるだけ早い日程でな」

「「かしこまりました」」


 エルフ国か。とりあえず俺たちと敵対しそうな感じではないし上手くいくと良いけど。
 マリアの件もそうだけど、元々南部大森林で伐採しまくってる状況の説明もしなきゃいけないところだったしな。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...