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第十章 ヘタレ異文化交流
第二十八話 タピオカミルクティーとポンデドーナツ
しおりを挟む「兄さま、どうですか?」
「お、良いんじゃないか? 女子受けしそうだな」
俺と一緒に厨房にいるクレアが、スライム材で作られたカップにカラフルに着色されたタピオカを入れたレモネードを俺に見せる。
透明なカップにカラフルなタピオカが映えている。これは流行りそうだな。
スライムを持ち帰り、焼き上げる温度や時間で様々な形状に変化する特性があると工芸品を作っていたエルフから聞き、有効活用できないか試行錯誤した結果、俺の世界でのプラスチックのように使えることが判明し、早速カップを試作したのだ。
あとは即席麺とスープ、かやくを入れたカップ麺の容器や、持ち帰り弁当の容器など、他には高価なガラス製品の代替にもできるように研究中だ。
なにしろ魔素の濃いエルフ王国の結界内の水のある所ではあっという間に増えるので、材料は豊富、加工も容易なので大量生産に向くからな。
マリアとエカテリーナの実家であるメディシス商会が、キャッサバやスライムの取り扱いを担当することになり、エルフ族も繁殖力の強い雑草を収穫するだけで楽して稼げると進んで働くようになった。
どんだけ面倒くさがりなんだエルフ族。
「ミルクティーに入れるタピオカは黒糖の黒のタピオカ一色で良いんですか?」
「前にいた世界じゃそれがスタンダードだったしな。滅茶苦茶流行ってたんだぞ。今も大人気だと思うぞ。タピるとかって言葉も生まれてたし」
「へー、これが」
「最初見た時は薬草臭そうな感じだったんだけどな」
「あまり美味しそうに見えないですね。レモンスカッシュのカラフルタピオカの方が可愛いと思いますよ兄さま」
「俺もそう思うがな、実際には何が流行るかはわからんし。レモネードみたいな透明系清涼飲料水と一緒に売ってみよう」
「そうですね。味は美味しいですし」
ファルケンブルクで流通するキャッサバ粉の価格は、今はまだ小麦粉より少し高い程度だが、先日から始まったエルフ族の大規模栽培によってあっという間に下がるだろう。
それまでは、ゆっくりキャッサバ粉を使った食べ物の周知を兼ねて、朝と昼の食品販売と、商業区画や魔導遊園地などの官営商店で販売することになった。
自動ちねりマシンを開発したので、タピオカ粉からタピオカ粒にするのは簡単になったのだが、キャッサバをそのまま粉にしたキャッサバ粉と比較して、キャッサバに含まれるでんぷん質のみを抽出して粉末状にしたタピオカ粉では、作業工程が増すため、キャッサバ粉に比べて少し高くなる。
自動チネリマシンも使用しているので、タピオカ入りドリンクは普通のソフトドリンクに比べて少し高値になってしまうのだ。
それでも見た目も良いし、タピオカの食感も良く、空腹も少し満たせるので問題ないとのクレアの判断だ。
「あとはキャッサバを使ったドーナツを一緒に売れば軽食やおやつとして受けるんじゃないかな」
「ポンデケージョを繋げてリング状にしたやつですね」
「リング状じゃなくてドーナツ状な。リングじゃなくドーナツだぞ」
「? よくわかりませんがわかりました兄さま」
「あまり種類を増やしてもだし、ポンデドーナツ一本に絞ってもいいかもな」
とりあえず店で販売するドリンクの選定は終わったので、おやつ用のポンデドーナツをクレアと作る。
ちょっとお高めのタピオカ粉を入れたこのドーナツは、もちもちした食感が楽しいとミコトやエマの大好物なのだ。
「麺類に入れても美味しいのですけど、価格が上がってしまいますからね」
「特に即席麵は、味を落とすことなく徹底的にコスト下げるためにクレアが頑張ったからなあ」
「各ご家庭に安価な麺が提供できるようになりますし、いざというときの備蓄にも向いてますしね」
「カップ麺もすぐに販売を開始するし、即席麺用の粉スープとかやくの入ったボトルもスライム材で安く提供できるようになるし、一気にラーメンブームが始まるかもな」
「小麦粉以外にお米、麺類とずいぶん食生活が豊かになりましたね」
「麺はパスタだけだったしな」
「パスタで作った焼きそば風も美味しかったですけど、やはり中華麺で作った焼きそばは美味しいですしね」
「キャベツとの相性はやっぱ中華麺なんだよな」
「試作したカップ焼きそばも美味しかったですよ。お湯をああやって捨てるアイデアは凄いと思います!」
「しっかり蓋を押さえて湯切りしないと、蓋が開いて中身が出ちゃうという悲惨なことにもなるからな。蓋にしっかり注意書きをしておかないと」
「でも兄さま、蓋に印刷をしたらコストがかかってしまいますよ?」
「書いておかないとクレームが凄いかもしれないしなー。カップ麺も容器に印刷しないと中身がわからなくなるし」
タピオカドリンク用の薄く、透明な容器とは違い、カップ麺などの熱を持つ食べ物の容器にはスライム材を発砲させて形成した、発泡スチロールのような素材を使っている。
発泡する際に透明度が無くなり、真っ白になってしまっているので、中身の確認ができないのだ。
プラスチックとは違って、スライム材で作られた容器は地面に埋めれば土に還るし、肥料の代わりにもなる。
スライムは元々肥料として使われたこともあったが、高効率の肥料が開発されて以降、あまり肥料に使われることは無くなったが、食事で使ったスライム材の容器を、洗わずにそのまま家庭菜園をしている場所に埋めれば、残飯と一緒に肥料にもなる。
油が多いと植物に良くないので、その場合は一度燃やしてから、燃えカスを埋めれば問題なしだ。
環境に優しいな。スライム材。
「兄さま、ポンデドーナツが揚がりましたよ」
「じゃあはちみつグレーズとチョコをかけてリビングに持っていくか」
「はい兄さま」
完成したポンデドーナツと、タピオカドリンクを、エリナとミコト、エマが待つリビングに持っていく。
「「わー!」」
マジックボックスではなく、トレーにドーナツとドリンクを乗せてリビングに入ると、おやつに反応したふたりから歓声が上がる。
「お兄ちゃん、クレアお疲れ様!」
「姉さまもふたりの相手お疲れ様です」
「エリナ、おやつにしよう」
「うん!」
テーブルにトレーを置くと、ミコトがいつも通りお姉ちゃんモードを発動する。
「エマちゃん! なに色がいい?」
「うーんとね、うーんとね。みこねーといっしょのがいい!」
「じゃあこれね!」
同じものが良いというエマの返事に嬉しそうなミコトが、薄ピンク色に着色したピーチタピオカドリンクをふたつ取り、ひとつをエマの前に置く。
「ありがとーみこねー!」
「はい! ドーナツだよ!」
「ありがとー! えへへ!」
タピオカドリンクと、はちみつグレーズとチョコの二種類のポンデドーナツを見てエマもご機嫌になる。
「さあ食べていいぞ」
「「「いただきまーす!」」」
「パパおいしー!」
「おいしー!」
「お兄ちゃん美味しいよ! 見た目もすごく可愛い!」
ポンデドーナツとタピオカドリンクは三姉妹に大好評だ。
これならファルケンブルクで流行るかもしれないな。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
茶山大地です。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
これにて十章は終了です。
次回更新より第十一章が始まります。
十一章はやや短めとなりますが、多数のヒロインが登場する水着回となります。
同時連載しております小説家になろう版では、十一章の水着イラストをはじめ100枚超の挿絵が掲載されてます。
是非小説家になろう版の挿絵だけでもご覧いただければと思います。
その際、小説家になろう版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
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