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第十二章 ヘタレ情操教育
第五話 命を奪うということ
しおりを挟む「ブラックバッファローを回収してくる」
「兄さま、そろそろお昼ですし、ブラックバッファローのお肉を使いませんか?」
「解体するのか……」
「はい。ミコトちゃんとエマちゃんにはショックなことかもしれませんが」
クレアは俺が懸念していたことに気づいたようで、ミコトとエマの前で解体しようと提案してきた。
そうだよな。害獣とは言え、幼児が動物を殺すというのは俺だけじゃなくクレアも気にしていたようだ。
生きていくために魔物狩りを始めた俺とエリナとでは状況が違うわけだし。
「解体シーンは嫌がったら見せないようにはするけど、牛肉って熟成させないと美味しくないからすぐには食えないだろ」
「熟成魔法があるので平気ですよ兄さま」
「そういや糖度計測魔法とかも使えたよなクレアは……。じゃああいつら連れてブラックバッファローの所へ行くか」
「はい」
ミコトとエマを連れて、首が切断されたブラックバッファローの元へ行く。
エリナの風縛魔法で吊り上げ、血抜きをした後に、俺がブラックバッファローの皮を剥ぎ、内臓を取り出してから四肢を切断し、枝肉にしていく。
ふたりは恐る恐る見つめていたが、クレアから動物から命を奪うこと、その命を無駄にしないためにこれからブラックバッファローを食べるのだという説明を聞きながら、目を逸らさずに俺の解体作業を見守っていた。
というか俺自身は今にも吐き出しそうなほど、グロくてキツい作業だったのだが、ミコトとエマが頑張って見ているのだから俺も吐くわけには行かないと歯を食いしばって作業を完了させた。
「頑張ったなミコト、エマ」
「「うん」」
「じゃあもうお昼ですし、早速食事にしましょうか」
魔導キャンピングカーまで戻ると、ハッチバックを開けてその下にテーブルやら椅子を並べていく。
各パネルが展開されてハリネズミのような武装車両になっているが気にしない。
解体したブラックバッファローは全てマジックボックスに収納したが、腰肉、いわゆるサーロインの部分だけを切り出して、テーブルの上に乗せたらクレアに合図をする。
「じゃあクレア頼む」
「はい兄さま。熟成」
クレアが肉の旨味を引き出す熟成魔法を唱えている間に、バーベキューの準備を始める。
マジックボックスからエリナが野菜を取り出し、カットしていき、俺はバーベキューグリルを取り出して炭を並べてから火魔法で着火。
久々に魔法を使った気がする。
「お兄ちゃん、野菜の準備できたよ!」
「兄さま、お肉の熟成も終わって、カットも終わりました」
「コンロの準備も出来たしどんどん乗せてくれ」
「「「はーい!」」」
クレアがカットして持ってきた肉は優に十キロはありそうだが、一応マジックボックス内にしまってあるウインナーなどもどんどん乗せていく。
「ミコトちゃん、エマちゃん、ステーキ肉をカットして余った部分で作ったハンバーグでハンバーガーを作るけど食べますか?」
「「うん!」」
流石クレア。食材を絶対に無駄にしない精神旺盛だ。
ふたりの返答に笑顔で応えたクレアは、巨大なハンバーグとバンズを網の上に置き、レタス、トマト、ピクルスなどを準備する。
軽く焙ったバンズに野菜を乗せ、焼きあがったハンバーグとチーズを野菜の上に置いて最後にバンズを乗せて完成だ。
「はい、ミコトちゃんエマちゃん、できましたよ」
「「わーい!」」
ミコトとエマが自分の顔以上の大きさのハンバーガーにかぶりつく。
というかクレア、これでかすぎじゃないか? 他にもまだ肉や野菜があるんだが。
「どうですか?」
「「おいしー!」」
クレアは二人の反応にニコっと微笑んだあと、少し真面目な顔になる。
「先ほどミコトちゃんとエマちゃんが命を奪った生き物ですからね。ちゃんと感謝の気持ちを持って頂いてくださいね」
「「はい!」」
クレアが俺の言いたいことを全部言ってくれた。親として面目無いな。
「ミコト、エマ。俺たち人間は生きていくために、生きる糧を得るために動物や植物を殺さなければならないんだ。今日はダッシュエミューもブラックバッファローも、放置しておいたら危険という俺たち人間の都合で狩ったけど、自分の快楽のために無駄な命を奪うというのはいけないことだからな」
「「うん……」」
「今はまだわからなくてもいいからな。でも生き物の命を奪うときはちゃんと覚悟と感謝の気持ちを忘れないようにな」
「「はいっ!」」
気を取り直してバーベキューを楽しむ。
娘ふたりはあっというまにハンバーガーを平らげ、焼き野菜やひとくち大にカットされたステーキなどを食べだす。
すげえ食うのな。その分魔力になってるからこそ幼児なのにもう中級魔法を使いこなせてるんだろうけど。
「おいしいねエマちゃん!」
「うん! みこねー!」
素直ないい子に育ってくれて嬉しいが、こういう命の授業は学校の方でもやらないとな。
今までは害獣ということもあったし、生活の為ということでそのあたりをすっかり忘れていた。
異世界だろうがこういう意識は大事だと思うし。
とは言え非常に危険な竜種なんかは見つけ次第狩らないと危険だし、日本とは違って少し実情が違うからな。
俺のいた世界の倫理観を押し付けるのも違うし、やはり難しい問題だぞこれは。
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本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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