296 / 317
第十三章 ヘタレ教育制度改革
第十七話 調理部
しおりを挟む「あ、兄さま」
「クレア、忙しいところすまんな。少し見学させてくれ」
「クレア!」
「ママ!」
「くれあまま!」
エリナたちがクレアにがばっと抱き着くが、一時間も別れてないだろお前ら。
ちなみにヤマトとムサシは、ミコトとエマの服の胸元に備え付けられた専用ポケットの中に入り首だけを出している状態だ。
調理部の部室に鳥なんか入れられるわけがないだろうという俺の意見に、昨日クレアがふたりの服に急遽ポケットをつけたのだ。
「ヤマトとムサシはそこから出たらダメですよ?」
「「(コクコク)」」
クレアに注意を促されたヤマトとムサシはうんうんと頷いて返事をする。完全に言葉を理解してるじゃねーかこいつら。
鳴くのも禁止されている徹底ぶりだ。
そこまでの対策をしても給食室とか食品加工工場にはヤマトとムサシは入れてもらえない。
調理部限定の特別の配慮なのだ。
もちろん調理部も部内で消費する食べ物を作る日のみという条件もあったりするのだが。
「調理部は収穫祭の時の出店を何種類も出すから顧問のクレアも大変だろ」
「いえ、副顧問の先生もいらっしゃいますし、部長さんや課長さんもしっかりしてますから」
「課長って……。部活動の部長はあくまでも部活動の長であって、会社組織の部署とかとは違うんだぞ」
「いえ、色々ありまして、調理部の中に課が出来たんですよね……」
「意味わからんぞ」
「あ、ミリねーだ!」
「みりねー!」
ミコトとエマが、調理部の片隅でミリィを発見し、ほこりを立てないようにそろそろとミリィのもとに向かっていく。
銀色の髪を最近伸ばしはじめたミリィはエプロンドレスを着け、ボウルに入れたお菓子の生地か何かをかき混ぜている最中だった。
「ミコトちゃんエマちゃんだー。おにーさんもエリナおねーさんもー」
「ミリねー!」
「みりねーなにをつくってるの?」
「んー? ラスクだよー」
またラスクかよ……。
「兄さま、ミリィが調理部ラスク課の課長なんです……」
「アホだろ」
調理部ラスク課って……。わざわざ調理部に入部してラスクしか作らんのか。
「なんでも究極のラスクを目指すとか」
「おにーさんのラスクの味にはまだまだだけどねー」
「いやいや、ハードル低すぎだって。っていうかラスクを作ってるんだろ? 今何をかき混ぜてるんだ?」
「ラスクにディップするカスタードクリームだよー」
「なるほど、ラスクオンリーでもフレーバーとかディップとか色々あるんだな」
「なのでミリィだけラスク課で独立宣言したんですよ兄さま」
「相変わらず訳が分からんなミリィは」
ミリィはミコトとエマを見て軽く微笑むと「ミコトちゃんとエマちゃんもやってみる?」と、先ほどから目を輝かせているふたりに声をかける。
「「うん!」」
ミコトとエマの返事に大きくうなづいたミリィは、調理台の隅に置かれた、カスタードの入ったボウルとは別のボウルを取り出す。
「じゃーこねこねしてみようかー」
「「わー!」」
ボウルをひっくり返すと、発酵が終わったと思われるパン生地を取り出して、平たく伸ばし、ガス抜きを始める。
「じゃーこれねー」
ミリィが握りこぶし大のサイズでパン生地をちぎり、ミコトとエマに渡す。
「「わーやわらかい!」」
「好きな形にしていいからねー」
「じゃあわたしはヤマトをつくるよ!」
「えまはむさし!」
ポケットの中のヤマトとムサシは名前を呼ばれてもピクリとも体を動かさない。
追い出されるのが相当嫌なんだなこいつら。
ミリィは慣れた手つきで、伸ばした生地を細長く畳み、クルクルとロールパン状にしていく。
それをいくつか作ったあと、食パン用の型の内側にハケで油を塗り、ロールパン状にした生地をどんどん入れていく。
生地を入れた四つの型をオーブンに入れる。
「なあ、ラスクを食パンから作ってるのか?」
「そうだよー」
「ラスク課の食パンはサンドイッチを作るのに人気なんですよ兄さま」
「しかも耳だけ使うのかよ」
「できた!」
「えまも!」
ミリィのアホさ加減に呆れていると、ふんすふんすとパン生地をこね回していたミコトとエマが声を上げる。
「って! 完成度半端ねえ!」
「ヤマトにそっくりだねエマちゃんのパン!」
「みこねーのもやまとそっくり!」
瓜二つと言っていいほどのリアルな小鳥(パン生地製)が、ミコトとエマの手のひらに収まっていた。
ヤマトとムサシに小麦粉ぶっかけたわけじゃないんだよな。ちゃんとポケットにいるし。
そういやこの前の夏休みに行ったリゾートビーチで作ってた砂の城のクオリティも半端なかったな。
「これ焼いたらボロボロになるだろ」
「「えー! じゃーやかない!」」
「じゃあどうすんだよ」
「「うーん。うーん」」
「ミコトちゃんエマちゃん、ちょっと固くなっちうけど、魔導オーブンで一気に焼いちゃえばそのままの形でパンになるよー」
「「おー!」」
ミコトとエマから大事そうにパン生地を受け取ったミリィは、皿に乗せて魔導オーブンとやらに入れる。
「はい完成ー」
「「わー!」」
「早いな」
「魔導オーブンだからねー。調理時間は早いけど微調整が効かないからメニューが限定されちゃうんだよねー」
「初期の頃の試作品か」
「だねー。はいミコトちゃんエマちゃん」
「「ありがとーみりねー!」」
「うんうん。上手にできたねー」
「「えへへ!」」
嬉しそうに焼きあがったヤマトとムサシ型のパンを抱え、「あとでいっしょにたべようねヤマト!」「むさしもね!」と、ポケットの中のモデルに話しかける。
「「ピッピ」」
「あーないちゃだめー」
「だめだよむさし」
最後の最後でとうとう鳴いてしまったヤマトとムサシだが、煽ったのはミコトとエマだし頑張ったから許してやるか。
まあ羽毛が飛び散るわけでもないし、鳴くくらいなら問題なかったんだけど。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
よろしければそちらでも応援いただけますと励みになります。
また、小説家になろう版は、序盤から新規に挿絵を大量に追加したうえで、一話当たりの文字数調整、加筆修正、縦読み対応の改稿版となります。
ファンアート、一部重複もありますが、総数で200枚近い挿絵を掲載し、九章以降ではほぼ毎話挿絵を掲載しております。
是非挿絵だけでもご覧くださいませ。
特に十一章の水着回と十三章の制服回は必見です!絵師様の渾身のヒロインたちの水着絵と制服絵を是非ご覧ください!
その際に、小説家になろう版やカクヨム版ヘタレ転移者の方でもブクマ、評価の方を頂けましたら幸いです。
0
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる