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第十四章 ヘタレフェスティバル!
第三話 レンタル衣装
しおりを挟む「……義兄上、僕って綺麗ですか?」
「どう答えりゃいいんだよ……」
朝食を終え、次は学園の方へと歩き出した俺たちなのだが、ジークは肉屋の親父に言われた『綺麗な兄ちゃん』という単語に戸惑っている。
普通なら誉め言葉と受け取って良いんだろうが……。
「ジークにーはきれいだよ!」
「かわいいよね!」
「「ピッピ! キレイ!」」
「……ありがとうミコトちゃんエマちゃん。それにヤマトとムサシも」
駄鳥は昨日の『男女』発言で怒られたからなのか、ジークのご機嫌を取ろうとしているようだが逆効果だ。こういう空気の読めないところが絶滅寸前にまで追いやられた原因なんだな。
「お兄ちゃん、アンナちゃんのやってるお店に行ってみようよ」
「ここから一番近いですよ兄さま」
「アンナ? 服飾部の模擬店か。服を売ってるんだっけ?」
「服も売ってるけど、レンタル衣装をやってるんだよ」
「そういえば制服のコンペで色々試作した服が大量にあるから貸出をするかもとか言ってたな」
「そーそー」
元々学園では貧困家庭の子も多いので、地味なシャツとズボンを配布していたのだが、王都から留学で来ている貴族の子弟がそれを着るのを拒否して華美な服を着るようになってしまったというのが原因なので、貴族が着ても違和感のない程度の格式を維持しつつも、派手になり過ぎずかつ安いデザインをという無茶な要求をしたのだ。
結果、俺の居た世界の制服に近いデザインでおおむね決定したのだが、試作した服が大量に余ったのでその扱いを服飾部顧問のクリスと服飾部部長のアンナに提案されたのだ。
「まあついでだし覗いてみるか」
「うん!」
何故かテンションが下がっているジークをなんとかしようとミコトとエマがまとわりついて色々話題を振っている。
ジークも気を使わせないように明るく振る舞っているが、うちの子はそのあたりには敏感なのだ。
「そうだ、男物の服があれば借りるかな? 俺普段着で出て来ちゃったし」
「良いんじゃない? 男の人の服も結構あるみたいだよ」
「義兄上! 僕も借りたいです!」
「お、おう」
ひらひらした服を着ていたから女に間違われるんじゃないか? とでも思ったのか、ジークも服を借りたいと言い出した。
だが王族が着ることのできるレベルの服は無いぞ多分。
まあこの収穫祭の間とかならいいのか。一応お忍びっていう体だし。
急に元気になったジークにミコトとエマも安心したようで、ジークを挟んでつないだ手を大きく振りながら歩いていく。
あとはヤマトとムサシが黙ってれば問題なさそうだ。
「いらっしゃいませトーマお兄さんたち」
服飾部の模擬店に到着すると、ちょうど店の前で呼び込みをしていたアンナに挨拶をされる。
そのアンナは貴族のような服で着飾っており、少し恥ずかしそうにしていた。
「アンナ、すまんが男物の貸し衣装はあるか?」
「お兄ちゃん! その前にアンナちゃんに言うことがあるでしょ!」
「そうですよ兄さま!」
「……アンナとても似合ってるぞ。自分で作ったのかそれ」
「えへへ! ありがとうトーマお兄さん。これはクリスお姉さんにデザインしてもらって自分で縫ったんだよ」
「流石服飾部部長ってところだな」
「で、男物だっけ? トーマお兄さんとそちらのお兄さんの分?」
「そうか、ジークとは初対面だっけか」
アンナは普段、寮母の母親と一緒に職員棟で暮らしてるからな。たまにうちで飯を食ったり泊まったりしてるけど。
「随分とかっこいいお兄さんだね。トーマお兄さんのお友達?」
「!」
かっこいいお兄さんと言われたジークの瞳に輝きが戻る。単純だなこいつも。
とはいえ、ジークをかっこいいと言ったのはアンナが初めてかもしれん。
城の女官は華麗とか耽美とか言ってたし、町では可愛いとか綺麗とかだったし。
「アンナと言います。よろしくお願いしますね、えーと……」
「ジークです! ジークフリート・・エーデルシュタインです! よろしくお願いしますねアンナさん!」
「……エーデルシュタイン?」
ギギギとゆっくりと首をこちらに向けるアンナ。
「王太子だぞ。ちわっこの弟だな」
「そっか、シャルお姉さんって王女だったね。忘れてたよ……。それにしても王子様がうちのお店で服を借りに来るなんて……」
「かっこいい服を用意してやってくれ。お忍びだから格式とか関係ないし。ついでに俺のもな」
「わかったよトーマお兄さん。少し待っててね」
アンナはそういうとドレスの裾を少し上げて奥へと消えていく。
店の中を見ると大量の服がディスプレイされており、まるで王都の高級服仕立店のようだ。
実際の高級店はオーダーメイドのみで吊るし売りなんかはしてないだろうけど。
「つーかこれを制服にしようと良く思ったな」
「兄さま、これは貸し衣装用に仕立て直したものだそうですよ」
「そりゃそうか」
胸元が大きく開いたドレスとか流石に俺が許可しないしな。
「トーマお兄さん! 王子様お待たせしました!」
「アンナ、お忍びだしジークでいいぞ」
「そうですよアンナさん。お気になさらずジークと呼んでください」
「じゃあお言葉に甘えて、ジークお兄さんと。ジークお兄さんも私のことはアンナと呼んでくださいね」
「うん。わかったよアンナ」
そしてアンナが持ってきた服を見ると、二着の真っ黒な詰襟だった。
「学ランかー」
「かっこいいデザインだよね?」
「まあ元々軍服として広まったらしいしな」
「義兄上! 僕は気に入りましたよ! なによりひらひらしていないところが最高だと思います!」
ちょっとジークが壊れだしてきているので、これで妥協しちゃうか。
ふたり揃って学ランってなんか違和感あるな。俺の通っていた高校はブレザーにネクタイだったし、学園の男子用の制服としてもブレザータイプのデザインで決定済みだ。
だから余って貸し衣装に回されたのかね?
「じゃあさっさと着替えちゃうか」
「はい義兄上!」
アンナに試着室に案内され、早速着替えることにする。
これでジークが安心して収穫祭を楽しめるようになればいいんだけどな。学ランだけど。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
本作は小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
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